劇場公開日 2018年10月13日

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「日本人で良かった」日日是好日 aMacleanさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5日本人で良かった

2018年11月15日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

樹木希林さんの遺作ということで、気になっていたが、ようやく観ることが出来た。希林さんのことは、別として、予想外に心穏やかにしてくれる作品だった。

美しい四季を切り取りながら、女性の人生の喜怒哀楽を、茶道の稽古を通して描いていく物語。茶道の先生は樹木希林。庭のある日本家屋にひとり暮らしている。
この日本家屋という小さな世界で、まるで世界が変わったように四季がうつろい、静かだが圧倒的な情景を映し出す。茶器の色や暖かさ、座敷の静けさの中で聞く風や雨の音が、ほんの些細な違いだが、次第にそれを見つけて、大きく感じられるようになり、さらに自分の心象に広げられるようになる。間抜けな例えだが、ジェダイの騎士がフォースに目覚めていくような物語がある。

こうした「機微」が主役で、黒木華が演じる主人公の人生は、この物語の脇役のように感じた。裏を返せば、それだけ自然と調和した演技だったのだろう。
映っているものは、京都の素晴らしい庭園や神社仏閣ではなく、古い日本の家の、たいしたことのない庭の草木や造作だが、何故か見事な紅葉や絶景と言われる風景などより、心に迫るものがあった。

画面の変化のテンポが素晴らしい。芸術的な「間」がこの映画には、あったと思う。カメラの移動、色彩の置きかた、それと演者の何気ない会話など、どれも溶け込むように綺麗に納まっていたと思う。

こうした心象も、古い家やそこでの暮らしを体験する事が少なくなり、薄れてきているのかもしれない。家で耳を澄ませて、ひとときのぼーっとした時間を取りたくなる良作だ。

AMaclean