劇場公開日 2018年10月13日

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「難しい事は時間をかけてゆっくりと「道」を紐解いていく自然に即した世界観が素晴らしいですね!」日日是好日 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5難しい事は時間をかけてゆっくりと「道」を紐解いていく自然に即した世界観が素晴らしいですね!

2018年10月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

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私は残念な事に森田典子氏の原作を未読の為、原作の素晴らしさや、面白さ、人気の秘密を知らない。
本作の物語は至ってシンプル。主人公の典子は大学時代に将来に対する展望が見出せずに、モンモンとしていた矢先に、両親の薦めで全く正反対のキャラの従妹の美智子と一緒に茶道を習い始める事になる。そのお稽古の日々を追いながら、学生から大人へと成長していく一人の女性の姿が描き出される物語。シンプルな物語だが、実に典子の成長する様が清々しく、心が洗われる作品だった。

私は、茶道も書道も習った経験は無く、武道の類も習った経験がゼロの為に、日本古来の伝統文化の神髄を全く何も知らないでこれまで過ごして来た事はとても残念だと、本作を観て思った。

映画の中心には、常に茶道のお稽古のシーンが描かれていて、四季折々の時の変化の流れの中で少しずつ大人へと成長していく、典子の姿を詠い挙げて行くのが実に晴れ晴れとして、映画を観ている私達にも、典子の気持ちの変化が自然と伝わって来る、素敵な作品だった。

茶道等の日本の伝統文化とは、一つ一つのお作法を重んじ、その一つ一つの手順を忠実になぞり、真似る事で日常の忙しさの中では決して観えてくる事の無い世界へと、自らを誘い、その様式美を追及する事で、自己の内感を深めていくと言う誠に深い世界感を持っている文化で有る事をお恥ずかしながら、この歳で本作を観る事で知りました。

この作品では、お軸の大切な意味も出て来ましたが、茶室でお茶を本来頂く時は床の間に飾るお花まで御亭主の心遣いが現れ、茶室全体の空間その物を、お客様に提供する訳ですから奥深い、おもてなしの心の総てが詰っている世界なんですね。
最近では時代劇が映画化される機会も激減し、日本人の護ってきた伝統美、様式美、そしてその中心に息付く、自然の流れと共に有る日本人の心、魂をみつめる「道」の世界の素晴らしさを描いた作品が少ない現在、こうした心のぶれない生き方を示してくれる本作に出会えた事は実に素晴らしく意義深い事だと思います。

戦後の日本、占領政策の中で一番に阻止された事が武道や書道、華道。これらの伝統文化は日本人の根幹で有る精神性の向上を育む大切な習い事である為に、「道」と名の付く伝統文化が余り一般的に普及されないように西洋式重視の文化へとシフトされた事は残念な側面でもある。
2020年オリンピック開催を目前に控えた私達の国、日本で、日本人の心を表現出来るような本作が制作された事は非常に嬉しい事だ。

映画本来の話から脱線しているが、どうかお許し頂きたい。
黒木華は最近公開作品で「散り椿」「億男」等沢山お目見得する機会の多い女優さんだけれども、
彼女の女優としての成長する姿が本作の典子と自然と重なり合い、そしてお茶の師範を演じた樹木希林も、本作で描かれる「一期一会」の心の総てを、武田先生を演じながら、俳優人生の力の総てを懇親の芝居でご披露して下さって逝った事に、心より感謝を申し上げたい。
私は子供時代「寺内貫太郎」のドラマを観て育った世代なので、立派な名脇役と言うより、もっと身近なお茶の間、お婆ちゃん俳優と言う気持ちが強いのだが、本作程彼女の遺作として相応しい作品は他にはないだろう。希林さんのご冥福を心よりお祈りすると共に、本作の更なるヒットをお祈りしたい!

ryuu topiann