「牛の死体と地雷」ロープ 戦場の生命線 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
牛の死体と地雷
「これが戦争だ」。いや、戦争は和平条約によって停戦が結ばれたはず・・・なのに、現場は違っていたのだ。国連が中立を守るというのも理解できるが、だからこそ色んな法律が邪魔をして、何も出来ない状況に追いやられる矛盾が感じられる。
冒頭の井戸でのローアングル映像。緊迫感漂わせておいて、ロープが切れてからはジョークの連発が続き、どこで笑っていいのかもわからなくなる。とにかくロープを探すためにマンブルゥ(デル・トロ)とビー(ロビンス)のチーム。山道で牛の死体が置かれている状況ではどこかに地雷があるんだと力説するビーだったが、新人活動家ソフィー(メラニー・ティエリー)は冗談だと思って真剣に取っていない。いや映画を観ている者でさえティム・ロビンスのジョークだと思ったはずだ。「国家なき水と衛生管理団」の日常も多分にやりきれないほどの汚物や死体を見ているはずで、ジョークで気を紛らわすしかないのだと感じられる。
ショップでは主人に「売り物のロープに触るな」とか「首吊り用のロープだからダメだ」とか言われ、これもどこまでがジョークかわからないほど。大体、通訳のダミール(フェジャ・ストゥカン)にしてもちゃんと通訳してるのか心配になるほどジョークに満ちているのだ。
一人の少年ニコルと出会ったマンブルゥチームはロープのついでにサッカーボールも見つけなければならなくなり、彼の自宅へと向かう。そこでは犬が繋がれたロープもあったが、狂犬だからと説明を受けうまくいかない。さらにニコルの両親は安全なところにいると信じ込まされたいたが、庭先には首吊り死体が・・・。もう伏線がすべて繋がっていくブラックユーモア。
マンブルゥの元カノ・カティヤ(オルガ・キュリエンコ)がやってきて、彼の浮気度合なんて話はあまり笑えなかったのに、カティヤがみんなの前で野外おしっこする羽目になった。笑えない。彼女はこのためだけに配役されたのかとも思ってしまうくらいでした。
「これが戦争だ!」という言葉は強烈。明らかに捕虜を捕まえていた地元軍に対しても何もできないし、全ては国連軍の指示と法律を遵守しなければボランティアさえ出来ない状況なのだ。結局井戸の死体には触れないと言われ、ほったらかし。そんな終盤に次の仕事が入ってきた。難民キャンプのトイレが詰まってしまった・・・。これも戦争なんですね・・・
その終盤に流れてくる曲が「花はどこへ行った」。反戦歌の代表曲として知られるこの曲の歌詞がしみじみ伝わってくるのですが、クレジットを見るとマレーネ・デートリッヒが歌ってるバージョンだった。最後に、原題タイトルがバーンと出てきたとき、すんごい皮肉ったタイトルだったんだな~と、オチとともに評価が上がってしまった。