「ゴーギャンが夢見た理想の敗北記。」ゴーギャン タヒチ、楽園への旅 バッハ。さんの映画レビュー(感想・評価)
ゴーギャンが夢見た理想の敗北記。
ゴーギャンという画家は株の仲介人で成功し、絵画の売買を始めたことで趣味として絵を描くようになり、画家の友人に褒められて(おだてられて?)中年になって画家を志した。当時5人の子供がいたというのだから相当リスキーな道を選んだというしかない。
本作は、そんなゴーギャンが赤貧と誰の尊敬も勝ち得ない現実に嫌気が差して南の島タヒチに逃亡する物語だ。いや、逃亡と言うと本人は怒るだろうが、タヒチを選んだのはたまたまフランス領だったからで、フランス語が通じるタヒチで「西洋化されていてつまらん!」と怒るのだから随分勝手な話である。
実際のゴーギャンはタヒチでの経験を糧にそれなりの成功も収めるのだが、本作は身勝手な理想が現実の壁の前に崩れ去っていく様を描いていて、そのまま西洋文明が辺境を征服していく時代背景とシンクロする。テレンス・マリックの『ニュー・ワールド』のような美しくも哀しい歴史絵巻だと思った。
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