「人生に燻った人は見てみるべき作品」ハッピー・デス・デイ しゃまーだるさんの映画レビュー(感想・評価)
人生に燻った人は見てみるべき作品
彼女と2人昼間からホテルに入った。
休憩時間は長いし、スマホで動画を見るって気分にもなれずテレビ内包のVODでなんとなく鑑賞した。
ジャケットとあらすじからパニックホラー系だろうし、飽きたら変えればいいと見始めた。
主人公は高慢で鼻持ちならない素行不良な女の子。周りの人間に冷たく周囲を下に見ている。
そんな彼女が誕生日の夜に殺される。
殺されなきゃいけないほど悪いことはしていないと思うけど殺される。死んだ彼女は目を覚まし、また同じ一日を繰り返す。自分を殺した犯人を見つけて新しい一日を手に入れる為に。
だいたいこんな筋で、そこに家族愛とか、ボーイフレンドとか、女同士の嫉妬なんかが入り混じってくるお話。
正直ありきたりな話だし、結局どういった仕組みで同じ日をループしてるのかも謎のままで、とりあえずハッピーエンドだったのが良かったねぇと彼女と笑った。
じゃあなんで星5つかと言うと、この映画を見終わった後自分の中に不思議な感慨が残ってることに気付いたから。
主人公の女の子は16回も転生を繰り返して、必死に同じ一日を生きるうちに次第に謙虚になるし、自分の行動の愚かさや、自分が他者に対してどれほど酷薄な人間だったかに気付き改善しようと努めていく。そして自分が当たり前に、雑に消費してきた毎日がどれほど貴重であったかに"明日を渇望する自分"を通して気付くのだ
この作品のテーマは映画の最後のカットでも登場する言葉 -今日は残りの人生最初の日-
毎日を必死に一生懸命に生きてる皆さんからしたら何を当たり前な、という言葉なんだろうと思う。でも、ろくに働きもせず、昼間からホテルに篭ったり、一日中ギャンブルに興じたり、わけのわからない時間に寝て大事な用事を飛ばしたりするのが日常のようになっている自分にはすごく暖かく希望のある言葉に思えた。
この世界に生きている限り平等に明日はやってくるし、そこで自分がどんな人間になるかは自分の行動次第。普通の事なんだけど2時間この映画を割と真剣に観た後に「今日は残りの人生最初の日」なんて言われて色々考えこんでしまった。
人は変われる。作品の中の彼女のように殺されるわけにはいかないけれど。
ニートや引きこもりのあなたは見てみるといいかもよ。燻りと、澱みの真っ只中の俺が言うんだから間違いない。一緒に明日に行こう。
人は変われる。ゆっくりでもね。