「女版でホラー版」ハッピー・デス・デイ mos89さんの映画レビュー(感想・評価)
女版でホラー版
オマージュのままいくと思っていたが、あまりにそのままなので後半でカーターにGroundhog Dayをことを喋らせる。
考えてみると、同じ一日が何度も繰り返されるプロットは、2017年にようやくこのホラー映画で出てきたのが不思議なほど、汎用な使い途がありそうだ。
原本があまりにも傑作すぎるので、誰もが二足を踏んでいたのかもしれない。
続編ができるような話でもないし、ビルマーレイは再度フィルを演じられそうなほど元気で、それを考えれば、再映画化も早すぎる。
主題も役者も舞台設定もスクリプトも何もかも完璧すぎた。後発のクリエイターが触れなかったのも無理ないのかもしれない。
主役のツリーはJessica Rotheという女優で、絶叫しつつコミカルなバランスも備えている。プロット上、フィルと同様に、身勝手が強調される。男性関係の壊乱ぶりと自棄的なところは、母親を亡くし失望しているという設定が効いていた。
そのビッチぶりにかかわらず、ぜんぜん嫌味のない女優さんで、好感をもった。白人女性がオナラをする描写は、たぶんはじめて見たような気がする。
ただし、繰り返す一日の事象が、やや弱いと思う。
Groundhog Dayの場合、陽気な客に会い、朝食をとって、物乞いを見かけ、ぜんぜん思い出せない幼馴染みの保険屋に会い、ぬかるみの穴に足をとられる。そのひとつひとつが、翌日同じ目に遭ったときのフィルの反応を期待させるものだった。
ツリーも目覚めてから、同じ行程を繰り返すのだが、その事象に、もうひとつ魅力的なアイデアが欲しかったと思う。
ホラーに仕立てるために、新しい筋を盛り込んでいるものの、主人公が殺されることもあって、繰り返されるプロットに全く違和感がない。
観る者は、主人公が遭うプロット上のデジャブと、Groundhog Dayのデジャブ、二重のデジャブにさらされる、楽しい映画だった。