「お気をつけて、いってらっしゃいませ」マスカレード・ホテル KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
お気をつけて、いってらっしゃいませ
木村拓哉、よく似合ってるな。
煌びやかなホテルのちょっとした裏側と潜入捜査のスリルを味わえる娯楽作。
フジテレビの連ドラ1クール分をぎゅっとまとめたようなつくりで、大味だけどそこが良い。
詰め詰めのコテコテのバタ臭いジャパニーズエンタメミステリ、大いに結構!
鈍臭い演出ものっぺりした映像も慣れれば良いじゃない。
犯人捜しと犯行の防ぎが本来の目的のストーリー。
次々と様子のおかしい客…ではなくお客様がやって来ては無茶苦茶言い、謎のホンワカ解決をしていくオムニバスのような流れ。
殺人操作とは一風変わった空気に最初は少し戸惑ったけど、それぞれの事情や真相は結構面白い。
部屋番号を知るための策が一枚上手。何を信じるか見極めなければいけないホテルマンも大変だな…。
怪しすぎるあからさまなミスリードの繰り返しは逆に疑えず、忘れた頃に判明する犯人には驚いた。
能勢さんが便利すぎる。有能で良い駒だなあ。
伏線と言うにはお粗末だけど大胆な仕掛けで、まんまと引っかかってしまった。
取って付けたようなストーカーの方向じゃなく良かった。前田敦子に勝地涼ぶつけるって誰得のキャスティングなの。
「お気をつけて、いってらっしゃいませ」ホテルを出たら無力、ただその先を祈るしかない。
雨に打たれて子供を失った彼女にはその祈りは届かなかったんだなと、なんだか切ない気持ちにもなる。
松たか子みたいなおばあさんだなと思ったら松たか子だった。相変わらずの怪演。
説明的すぎるセリフやカットも多かったけどその中でも一安心したのは、「どうしてこの部屋だとわかったんですか?」と聞かなかったこと。
誇りあるロゴマークは正確に。
「客ではなく、お客様です」「ルールはお客様が作る」そのスタンスに忠実な姿勢とプロ意識、オンとオフの切り替えが凄い山岸にひたすら感心する。
ゴネたもん勝ちにもなりえるそのサービスは正しいのかどうかわからないけど。
しかしホテルマンとはいえ理不尽すぎる言いざまは願い下げ。
人間としての尊厳は保ち解決へ向かう対応は認めてくれるところが良かった。
鋭い目つきにガサツな言動の新田刑事。
潜入捜査を続けるうちにお客様を見る目は真摯になり、案内やお辞儀する仕草は自然になってくる。
忙しない状況でもズレた椅子を反射的に戻す彼はやはり優秀なんだなと改めて思う。
ホテルを去る際の最後のわざとらしい一礼には目頭が熱くなった。
しかしあのエンディングは蛇足でしかない。
サービス過剰で胃もたれする。
新田の一礼でスパッと終わるだけで格好良かったのに。
その後のことはこちらで勝手に想像するなり原作読むなりして補完するから。
余白の楽しみを全部奪われてしまい嫌気がさす。
シリーズ化するとしても映画としてはあの布石はいらないでしょう。
まあお似合いの二人だからほんの少し嬉しかったけどもさ…。