「粋な計らいにアップするも、全てに於いて前作よりダウン…」パシフィック・リム アップライジング 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
粋な計らいにアップするも、全てに於いて前作よりダウン…
2013年、世界を、映画ファンを、そして私を含め日本のロボットアニメや怪獣映画好きを熱狂的に大興奮させた一本の作品があった。
『パシフィック・リム』。
勿論その年特にお気に入りの一本に選び、また、昨今の日米怪獣映画ブーム再燃の火付け役にもなった。
その待望の続編!
本当は劇場で観たかったのだが、恐らく怪獣たちの仕業でまさかの地元の映画館で上映せず。レンタルを待っていた。
今回厳しい意見が多いようだが、さあ、その感想は…。
順々に語っていきたいと思う。
あの世界の存亡を懸けた怪獣たちとの闘いから10年後。
マコによって召集された次世代の若きパイロットたちの物語。
この設定は悪くない。前作だって設定や話そのものは非常にシンプルだった。
しかし、何故だろう。同じシンプルな設定なのに、前作ほど話が盛り上がらない。熱いものが込み上げて来ない。
前作は既に人類は窮地に立たされていて、そこから立ち向かうというのが熱かった。
今回は一時の平穏が破られ、再び窮地に立たされる。
似て非なるその違いだろうか。
再び現れた怪獣。
今回の怪獣たちの侵略は手の込んだものだが、危機も脅威も絶体絶命感も前作より遥かに欠けた。加えて、ラストも全体的にも物足りず、呆気無かった。
新たな主人公は、自らの命と引き換えに先の怪獣戦争で世界を救った司令官スタッカーを父に持ち、一度は追放された元イェーガーのパイロット、ジェイク。
鉄クズから小型イェーガーを造り出してしまう少女、アマーラ。
新たな登場人物たちがいまいち魅力薄。前作のスタッカーやローリーのような存在が欲しかった。
マコは再登場するも…。日本では話題になった真剣佑なんてただの背景。
ニュートンとハーマンの再登場は嬉しい。やはり、この2人が居ないと。
しかし今回、ニュートンにある異変が…。
中国産業が無人イェーガーの開発を進める中、謎のイェーガーが現れる。
この謎のイェーガーの正体は…?
何となく想像は出来た。『エヴァ』のあるエピソードを思い出した。
イェーガーとイェーガーの闘い。
重量級のロボット・バトルは迫力ある。
が、これじゃあまるであの映画だ。
『トランスフォーマー』が見たいんじゃない、『パシフィック・リム』が見たいんだ!
前作で特に何が好きだったかと言うとやはり怪獣で、本来“KAIJU”と表記すべきなのを敢えて“怪獣”と呼んでるくらい。
今回、怪獣の出現は話の展開もあってクライマックスのみ。と言う事は、イェーガーと怪獣のバトルもクライマックスまでナシ。
前作の最大の醍醐味が大きく失われ、落胆した要因。
それでもクライマックスには怪獣は出現し、イェーガーとバトルを繰り広げる。合体/巨大化した怪獣にはさすがに萌えた。
しかも、最終決戦の地は、日本・東京。
『ゴジラ』や『ウルトラマン』が好きで、東京での戦闘と破壊を描きたかったという今回の新監督、スティーヴン・S・ナイトの粋な計らいは嬉しい。
前作のバトル・シーンは夜や深海などで見づらかったが、今回は白昼がほとんどなのが有難い。個人的に昔から、デイ・シーンでのバトルの方が好きだ。
監督の日本カルチャーLOVEは充分感じた。
しかし、逃げ惑う人々、街の雰囲気…ここは本当に東京なんでしょうか…?
極め付けは、東京のド真ん中から見える日本のシンボルの山。怪獣の出現によって、日本の地形が変化でもしたのだろうか…?
ロボット、怪獣、東京、富士山…好きなものをたっぷり詰め込むのはいいけど、もうちょっと日本の事、お勉強しようね…。
全編通しての某国色。
敢えて何も言わないが、せっかく日本カルチャーへのオマージュに溢れた作品なのだから、これら全て日本でも良かったのでは…?
酷評するほどつまらなくはなかった。それなりには楽しめた点もあった。
が、ガッカリや落胆点は否めず。
何より、前作の面白さには遠く及ばない。
前作はもう何度も見たが、今回はそう何度も見返したいとは思わず。
更なる続編も作れそうだが、不発だったので、厳しいかも。
チラッと聞いた“モンスターバース”とのクロスオーバーも果たして…?
でもそれ以前に、監督にカムバックして、ギレルモ・デル・トロ~!