アバター ファイヤー・アンド・アッシュのレビュー・感想・評価
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圧倒的スケールの映画体験🎬 世界最高峰の映像技術と、普遍的な家族の愛の物語
16年前、幼い息子を連れて1作目を観に行った。
まだ小学1年生だった息子は、映画が終わるまでチュロスを握りしめたまま、口をあけて固まっていた。それほどインパクトのあった、あの青い世界。
3年前の復活第2作、そして今回の第3作目。前2作の集大成だという今作が、実は私はいちばん好きかもしれない。
まずは、映像とテクノロジーの「到達点」としてのアバター。
推定4億ドルとも言われる製作費は伊達じゃなく、海・空・火のすべてのエレメントが、これでもかというほどの密度でスクリーンを満たしてくる。
どの一瞬を切り取っても絵になる「最高峰の画(え)」を、約3時間ひたすら浴び続ける体験は、それだけでチケット代以上の価値があるように思える。
ただ、今回いちばん刺さったのは、そこに宿った“物語”のほうだった。
幼い頃パンドラに取り残され、サリー家の養子として育てられた人間の少年・スパイダー。
自分の父親がクオリッチだと知りながら、ナヴィの家族とのあいだで揺れ続ける彼は、今作の「心臓部」と言っていい存在だ。
彼を「家族」として受け入れきれないネイティリ。
それでも家族だと信じて愛し続けようとするジェイクやキリ。
そして、そんな彼らの本当の一員になりたいと願うスパイダー。
この三者の揺れがあるからこそ、ラスト近くのある選択と沈黙が、後からじわじわと胸を締めつけてくる。
贅沢なVFXと3Dの裏側で、やっていることはとてもシンプルな「家族と愛の物語」なのだと、しみじみ感じた。
日本では、あの青い見た目に少し尻込みしてしまう人も多いのかもしれない。
正直、私自身も最初は「ちょっと怖い」と感じた一人だ。
でも、3時間を共に過ごすうちに、彼らはいつの間にか“どこか不器用で、どうしようもなく愛しい家族”の顔になっていくから不思議だ。
テクノロジーの粋を集めた映像体験と、普遍的な家族ドラマが、同じ器の中でちゃんと同居している。
そんな贅沢な一本に仕上がっている映画だと思う。
まだアバターを体験したことのない人こそ、ぜひ劇場の大きなスクリーンで。
可能なら3Dで、この青い家族の物語に飛び込んでほしい。
楽しみや興奮を超えた巡礼のようなもの
歳月の経過は恐ろしい。1作目の公開時、我々は映画の未来に触れたかのように沸いた。しかし今見渡すと世間の3D作品は風前の灯。製作費や技術面で最高峰でありつつも絶滅危惧種というのが本作の偽らざる立ち位置ではないか。地球上の「侵略の歴史」を色濃く織り込んだパンドラの物語は、人々の驚くべき忘却のスピードと無関心に晒されながら試練の時を迎えている。が、いざ前作の記憶を取り戻し感情がゆっくり空を舞い始めると、私は197分の終わりなき冒険を存分に堪能しはじめていた。絵に描いたような敵役がいる。既視感ある展開も続く。それでもなおドカン、ズバンと豪快にぶつかり合う破格のアクションは極めてキャメロンらしいし、畏怖すべき自然の力は胸を震わす。従来とやや別の表情を見せる一人のキャラの変位も魅力的。続編が楽しみというわけではないが、次回作も必ず観る。探索と闘争と進化の歴史を見届ける。それはもはや巡礼のようなものだ。
ポジティブなマンネリズムを極める覚悟か、巨船のごとく沈む運命か
2025年12月後半の今、日本のみならず世界の映画ファンが、いよいよ今年の真打登場とばかりに待ち望んでいたSF超大作シリーズ第3作「アバター ファイヤー・アンド・アッシュ」。ジェームズ・キャメロン監督が自ら開発に携わったパフォーマンスキャプチャー技術とCGで精緻に描画した美麗かつ濃密な映像世界は、確かに2作目、3作目で着実に進化しているものの、やはり2009年の「アバター」を初めて観た時の衝撃と感動には及ばない。第1作はそれほどまでに、従来のSF超大作とも3D映画とも次元の異なる、画期的で圧倒的な映像体験だった。
ストーリーの面についても、そもそも第1作からして独創的というより、過去の物語の借用を散りばめた集大成的な内容だった。この点については、他サイトのコンテンツで恐縮だが、「集大成にして新境地。ジェームズ・キャメロン『アバター』がインスパイアされた諸要素を探る」と題した拙記事で詳述したので、興味があれば検索して読んでもらえるとありがたいが、そこのまとめで「過去の出来事や物語、自作を含むSFカルチャー、そして多くの宗教的要素を織り交ぜて、まったくの未知の環境でありながらもどこか懐かしく親しみを覚える」と書いた。
そのように作られた第1作を受けて、第2作では主人公ジェイクの子供たちと新たな部族、第3作でもまた新たな部族といった具合に、世代的な広がりと部族の追加でパンドラの世界を拡充してきたものの、ストーリーの基本線は似た展開をたどる。新たな出会いがあり、互いを知り仲を深めるが反目もあり、しかしパンドラの生き物と資源を略奪し利用しようとする人間の侵略と破壊を前にして力を合わせ、「エイワ」の助けも借りて困難に立ち向かう。
当レビューの題にマンネリズムというワードを入れたが、日本語でマンネリと略されるこの言葉は、様式や手法を意味する英語の「manner」と語源が同じで、様式や手法を反復して用いる芸術表現を指す用語。今では否定的な意味合いで使われるのが一般的だが、もともとはそうではなかった。キャメロン監督はこの「アバター」シリーズにおいて、第1作で提示した大筋を“主題”と位置づけ、この主題を変奏(バリエーション)として続編で示しているのかもしれない。主題に変化や進化を加えつつも、ポジティブなマンネリズムを極めようとしているのではという気がする。
世界歴代興行収入ランキングで「アバター」は1位、前作「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」は3位。キャメロン監督はさらに第4作を2029年に、第5作を2031年にリリースする計画を明かしているが、この巨額の予算を要する超大作シリーズの長旅が最後まで驚きと歓喜をもって観客に支持され続けるかどうか。キャメロンが「アバター」の前に作った「タイタニック」の豪華客船の物語のように、旅の途中で思わぬ障害にぶち当たり、沈没してしまうようなことがなければよいのだが。
今年の締め映画
開戦までに2時間半は長すぎやて😌
マーベル批判とNetflix批判をする監督の最新作
キャメロンを悪く言いたい訳じゃないけどキャメロンが色々批判してるからまずその事についてまず書きますね✏️
砂の惑星がアカデミーで迫害されてSF映画を見下してるって発言とNetflix作品が劇場で1週間しかもやらないクセにアカデミーでノミネートされるのはありえないとか発言してニュースになってますね😡更に過去にオッペンハイマーも被爆描写が足りないと批判してますね🤬(アバ3はマーベル作品を批判するほど優れた脚本ではねえしNetflix作品だって良い内容の質の高い作品あるんすよね)
まあ劇場でほとんど作品を公開しないNetflix作品がアカデミーでノミネートってのが気に入らなくてSF映画が下に見られてるって文句は多少理解は出来ますけどね。
前振りが長くなりましたがアバ3は映像技術は凄いですが脚本が壊滅的で2と3が完コピくらいの内容で2と3合わせて6時間超える長さでストーリーが1センチくらいしか進まないのは草🌱
前作の感想でも書いたけど映像の凄さと内容の良さを混同してはダメだわマジで👹
あとアバ2が前回世界的に1位の興行成績だったのに日本だけ最高順位が2位で(すずめの戸締まりとスラムダンクにやられた)今回はズートピア2にやられて2位からの翌週が3位でまたまた1位を取れなかったんですが日本てかなり特殊なパターンで面白い現象起きますよね!
色々文句ばかり言う厄介な監督の割にはこの内容かよって言いたくなるんすよ結局(映像技術は世界一なのは納得です)
キャメロンてめんどくさいやつだから自分もキャメロンくらいめんどくさい老害なのでアバ3の感想のみって訳にはいかなくなったので👺
映画館選びミスると痛い
とりあえず、シガニー・ウィーバーの変わらなさに拍手
推定予算4億ドル、世界興行収入はすでに8億ドルって、さすがっす、キャメロン…。IMDb レビュー7.4/10もまずまずの合格ラインということで。
カナダでも人気作品目白押しなんですが、映画館がだいぶ活気付いているのに一役買っている大型作品です。もちろんアカデミー賞狙いの時期でもあるんですがね。
もう、戦争モノとか、争い映画は好きじゃないんだから、好きじゃないなら観るなって話だと、人間は成長しないんで、何かしらの感想を…。
正直一作目の驚きとか感動はとっくに薄れて、アニメと実写の融合を見ているようなマンネリ感は拭えず…。
とりあえず今世界的に問題視されている移民問題に話を繋げてみますが、イーロンマスクさえ、移民を入れたら日本は壊れると言っていて、そりゃなんだかんだで日本語は難しいし、空気読まなきゃだし、暗黙のルールが山ほどあるし、イジメだの、鬱だの、日本人だって集団に馴染めなかったら病むのに、「便利」「安い」「清潔」なんて理由で安易に来られて住民になれるほど、そこまで懐広くないでしょう?日本…。
んで、今年学んだ社会学の先生に「移民問題について」のレポートを提出したんです。お陰様でA➕の成績でしたが、後日教授と直接話をした時「社会学の観点では『同化』はネガティブな意味で捉えるんです」と言われました。
日本に住むなら日本語を話せ、土葬だの、ハラールの強制だの、礼拝室だのはもっての他、電車の中で電話をするな、遅刻厳禁…日本人にとっての当たり前の価値観が、カナダに来てどんどん壊されました。もちろん今だにイライラすることもありますよ、そりゃ…。
ただ、戦争に負けたのに天皇制も維持され、言葉も奪われず、植民地にもならなかった史実は、やはり感謝すべきことだったんだなぁと、しみじみ思います。
たまには公用語が英語だったら、こんなにこっちで苦労しなくて済んだかなぁとは思いますが、もしあの時言葉を失っていたら、文化も価値観も欧米型になっていたかも知れません。
カナダはイギリスやフランスからの入植者達が原住民の言葉や土地を奪って建国された過去があり、カナダ人ですらそれを恥じている歴史があります。
アバターの世界は正直よくわからないけど、そこに戦いがある時点で、どちらかが正義になったり、敗者になったりするわけで、だからあんまり戦争映画が好きじゃないんだろうなと思います。
作品としては、そりゃ素晴らしいですけどね。
2の映像で1をやり直しました
お腹いっぱい?!
観に行っておく?
興行収入で歴代1位とか3位と謳っているアバターシリーズ
でも、観客動員数(日本内:洋画のみ)で見てみた
IMAX 3Dで見ると+1200円にもなる!
だから、より正確な順位を求めてAIに聞いた結果・・・
①タイタニック 約1,683万人
②ハリポタ賢者の石 約1,420万人
③E.T. 約1,069万人
④ジョーズ 約1,021万人
⑤ラスト サムライ 約995万人
⑥ハリポタ秘密の部屋 約950万人
⑦アバター 約936万人
★全世界の動員数では6位 約3億3,129万人
(ハリポタは本で読んでから観た人が多いと思うのに、2作品入っているのは凄い)
ラストサムライ以外は、個人的に納得のいく数だった
アバターの1作目は、自分の中でも新鮮で、奇抜で、美しかった
忘れ得ない作品で、きっと20年後にも映画史に残っているでしょう
今回のファイアー・・・も、美しさや特撮には太鼓判を押したい気持ち
3Dを感じるのはごく僅かなので+500円は勿体なかった
IMAX 3Dで観たら評価は変わるかも知れないけれどね
大好きで異次元の4DX対応映画館は、近くには存在しないので 涙
どちらも 映画の枠を超えてのエンターテインメントだから、
映画の講評に入れるのもどうかなとは思う
ストーリー的には斬新というわけでもなく、話のネタに観ておいたら?
という感じかな
面白いけど
話題作のアバターです
前作までも、映画館で見ています
簡易3Dシアターで見ました、偏光メガネのタイプです
映像はとても美しく、神秘的でした
が、ストーリーが何故かすっきりしない感じでした
人間と争う部分も、捕鯨のようなシーンも、別の部族との衝突も
どれも、必然性が無いと感じました
もう少し、星を守る必要性の物語がほしい感じでした
そして、ジェイクをどうしたいのかが、明確で無く
007と同じく、捕まっては脱出するの繰り返し
海兵隊員としてのしがらみとかも弱い感じでした
しかし、まあ、アバターシリーズですから
面白いです、が、3時間は長いかな、2時間過ぎ位にまとめても
同じ内容でできますよね、という感想でした
トイレは、途中で行かずに貯められました、よかったです
もう観たよ、それは。
年内の作品は年内までには観ると決めているので、少し遅れながらも観に行ってきた。
3Dは目が疲れるので通常で観たかったけど、いい時間がなくIMAX3Dで鑑賞。
さすがキャメロンとも言え、やっぱりキャメロンと言えるような本作だった。
好きな方は読まないで。自己責任で。
正直2と3の違いはなんですかと言いたくなるぐらい同じ。むしろ第一章と言っているが、今後もこれで行っていいのかと思えるような本作。
パワーアップが分からないほど同じ。
1作目と2作目は舞台と、カップルから家族へと変わっていったが、2作目と3作目の違いは何なんだ…
と思えるような構成。
スカイピープルもう流石にしつこい。
しっかり同じ展開に飽き飽きする。
ジェイクはいつになったら成長するの?
そして前作よりキリがシガニーすぎて顔が浮かぶ。
きっとこだわりにこだわっただろう映像は本当に美しく、よくこんな植物や生物、パンドラ、ナヴィの世界観を描けるなと感心する。
水や火のCGは本当に感動するぐらい。でももうそれも前作で観たんだ…と思った。
ナヴィ語もっと使えばいいのに、どんどん衰退していきほぼ英語だったのも残念。
ヴァランの強気なところやビジュアル好きだったのに、女になった途端見る目変わった。
そしてアッシュ族が中途半端なのもいただけない。エイワ潰しにこればいいのでは?と思ってしまった。憎む矛先が曲がりすぎなのでは。相手普通にとばっちりだよなと思った。毎度メトカイナ族が普通に可哀想。
そしてエンディングがマイリーだったことにびっくりした。
キャメロンへ。そろそろ違う画、展開が観たいです。
長い…
【67.9】アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ 映画レビュー
ジェームズ・キャメロンが再び、映画という表現形式の臨界点を押し広げた。2009年のアバターが視覚革命を興し、2022年のウェイ・オブ・ウォーターが流体表現の極致を示したとするならば、本作アバター:ファイヤー・アンド・アッシュは、映画全史におけるテクノロジーと物語の致命的な乖離を露呈させた、極めて議論を呼ぶ記念碑的作品と言える。これまでの作品がパンドラの美しさを讃える讃歌であったのに対し、本作は火と灰という破壊的なモチーフを通じ、人間とナヴィ、そして生命そのものの暗部を抉り出そうと試みている。しかし、その野心的な視覚的アプローチの裏側で、映画の核となる物語がかつてないほどの停滞を見せている事実は見過ごせない。
作品の完成度という点において、本作は映画全史という広大な文脈の中で捉えるならば、1920年代のフリッツ・ラングがメトロポリスで示した視覚的壮大さと叙事詩的停滞のジレンマを現代に蘇らせた作品である。キャメロンは今回、過剰なまでの視覚的快楽をあえて制御し、灰色の空と燃え盛る情念という重厚なトーンで統一することで、古典的な悲劇の構築を狙った。これはデジタル・シネマが到達した一つの頂点であり、映画史に刻まれるべき壮絶な美しさを湛えた成熟の三作目であることは疑いようがない。しかし、その圧倒的な外殻に反して、内部に流れる物語の血流はあまりに既視感に満ちており、映像の革新性に脚本が追いついていないという、現代メガピクチャーが抱える宿痾を体現してしまっている。リュミエール兄弟が列車を映し出し、メリエスが月への旅を夢見た時代から続く驚異の提示という映画の原罪が、本作では脚本の深化を拒む壁として立ちはだかっているのである。
監督・演出・編集において、キャメロンの手腕は映像の統率という面では円熟の域にあるが、ドラマツルギーにおいては明らかに精彩を欠いている。演出は新部族アッシュ・ピープルの攻撃性を皮膚感覚で伝えることに成功しているものの、編集のテンポは一部の叙情的なシーンを冗長にさせ、197分という上映時間の正当性を担保しきれていない。脚本・ストーリーの面では、今回新たに導入されたアッシュ・ピープルの女首領ヴァランの設定や、出産を通じた生命の輪の強調、そしてクライマックスに至る肉弾戦の応酬は、あまりに古典的、あるいは使い古されたハリウッドの文法に固執している。ジョン・フォードが築いたフロンティア神話や、黒澤明が確立した動的なアクションの構図をなぞるに留まり、21世紀の神話として新たな哲学を提示するには至っていない。映像・美術・衣装の面では、火山地帯の過酷な環境を反映した独自の意匠が凝らされており、文化人類学的な説得力が貫かれているが、それらが単なる見世物のための装飾に堕している感は否めない。音楽はサイモン・フラングレンが手掛け、ジェームズ・ホーナーの遺志を継承しつつ、重厚な音像で火の質感を表現した。主題歌であるマイリー・サイラスのDream as Oneは、彼女のハスキーな歌声が、絶望の灰の中から立ち上がる生命の希望を象徴し、エンドロールにおいて深い余韻を刻み込んでいる。
キャスティングと演技においても、本作は俳優の力によって脚本の空隙を埋めるという困難な作業を強いられている。
サム・ワーシントン:ジェイク・サリー役
本作においてジェイクは、守るべき家族と部族、そして自身の過去という三重の重圧に晒される父親としての苦悩を体現している。ワーシントンの演技は前二作と比較しても格段に深みを増しており、かつての戦士としての荒々しさと、リーダーとしての静かなる覚悟を、アバター越しでありながら驚くべき繊細さで表現している。特に、アッシュ・ピープルとの対峙において彼が見せる、絶望と怒りが混ざり合った表情は、モーション・キャプチャ技術が俳優の魂を完全に捉えられるようになったことの証明である。彼の低い声に宿る重厚な響きは、本作の持つ悲劇的なトーンを支える大きな柱となっている。元海兵隊員としての戦術的な動きと、パンドラの精神性に深く根ざしたナヴィとしての神聖な佇まいを同居させた彼のパフォーマンスは、使い古された父親の英雄譚という脚本の枠組みに、かろうじて人間味という血を通わせることに成功している。映画史における沈黙の英雄たちの系譜を継ぎつつ、デジタルという新たな仮面を被った彼の挑戦は、現代のデジタル・アクトの頂点として記憶されるべき深淵な表現に到達している。本作における彼の沈黙は、雄弁な台詞よりも多くのことを物語り、観客の魂を激しく揺さぶるのである。
ゾーイ・サルダナ:ネイティリ役
ネイティリを演じるサルダナは、本作において静かなる怒りと、母性ゆえの過酷な決断という難役を見事に演じきった。前作で失った息子への哀悼を抱えながら、新たな脅威に立ち向かう彼女の姿には、ある種の神々しささえ漂う。彼女の特有のしなやかな動きと、瞳に宿る野生の輝きは、CGキャラクターであることを忘れさせるほどに雄弁であり、観客の感情を激しく揺さぶる。脚本上、彼女の役割が定型的な嘆く母に終始しがちな点を、サルダナはその圧倒的な身体能力と眼差しによって、映画史に残る戦う聖母へと昇華させている。グリフィス時代のメロドラマ的な悲劇性から、現代の力強い女性像への過渡期にあるような複雑な表現を見事に完遂した。
シガニー・ウィーバー:キリ役
前作に続き、自らの出自に苦悩する少女キリを演じるウィーバーの演技は、もはや魔術的ですらある。実年齢と乖離したキャラクターを演じながらも、その仕草や視線の揺らぎには思春期特有の繊細さが完璧に宿っている。パンドラの生態系と深く繋がる神秘的な役どころにおいて、彼女の存在感は作品にスピリチュアルな深みを与え、物語の核心へと導く重要な役割を果たしている。彼女の演技がなければ、本作の物語は単なる環境テロリズムを巡る通俗劇に堕していただろう。エイリアンのエレン・リプリー以来、彼女が築き上げてきた超克する女性という映画史的アイコンは、この若きキリという役柄を通じ、霊的な次元へと昇華された感がある。
スティーヴン・ラング:マイルズ・クオリッチ大佐役
シリーズを通しての宿敵であるクオリッチを演じるラングは、本作で単なる悪役を超えた存在へと進化した。執念に突き動かされる破壊者としての側面と、息子スパイダーとの関係に揺れる人間的な弱さが交錯する演技は圧巻である。彼が体現する暴力のリアリティは、美しきパンドラの世界における最大の異物として、作品に凄みのある緊張感を持続させている。脚本における彼との決着が、過去二作と同様の肉体的な衝突に収束してしまう点は、映画全史における宿敵描写の定型を脱しておらず惜しまれるが、ラングの演技そのものは比類なき凄みを湛えている。
ケイト・ウィンスレット:ロナル役
メトカイナ族の精神的指導者としてクレジットの最後に名を連ねるウィンスレットは、短い登場シーンであっても圧倒的なカリスマ性を放つ。彼女の威厳に満ちた佇まいと、部族を守ろうとする揺るぎない意志は、本作の群像劇としての厚みを増している。特に、アッシュ・ピープルの襲撃に際して見せる彼女の戦士としての覚悟は、映画のクライマックスに向けた感情的な高揚を加速させる。タイタニック以来、キャメロンと共に映画史の転換点を歩んできた彼女の起用は、本作に過去の映画的記憶を呼び覚ます重層的な響きを与えているが、脚本が彼女のポテンシャルを十分に活かしきれていない点は否めない。
本作は、第83回ゴールデングローブ賞において興行成績賞にノミネートされ、全米批評家評議会(NBR)によって2025年のベスト10に選出された。第98回アカデミー賞においても、視覚効果賞や美術賞、音響賞といった技術部門でのノミネートが有力視されている一方、脚本賞への言及が皆無である事実は、本作の真実を雄弁に物語っている。アバター:ファイヤー・アンド・アッシュは、映画が単なる娯楽ではなく、人類が共有すべき壮大な叙事詩であることを再定義しようとしたが、その物語が抱える既知の展開への安住が、真の傑作への脱皮を阻んでいる。ジェームズ・キャメロンという巨匠が、そのキャリアの集大成として挑んだこの作品は、観客の魂に消えない火を灯したが、その火を支える脚本という薪の乏しさを露呈したと言わざるを得ない。我々はこの映画を通じて、デジタルの極致と、物語の停滞を同時に目撃することになるのである。映画全史において、技術が物語を凌駕した瞬間として本作は永く記憶されるだろう。
作品[Avatar: Fire and Ash]
主演
評価対象: サム・ワーシントン
適用評価点: B8
助演
評価対象: ゾーイ・サルダナ、シガニー・ウィーバー、スティーヴン・ラング、ケイト・ウィンスレット
適用評価点: B8
脚本・ストーリー
評価対象: ジェームズ・キャメロン、リック・ジャッファ、アマンダ・シルヴァー
適用評価点: C5
撮影・映像
評価対象: ラッセル・カーペンター
適用評価点: S10
美術・衣装
評価対象: ディラン・コール、ベン・プロクター
適用評価点: S10
音楽
評価対象: サイモン・フラングレン(主題歌:マイリー・サイラス)
適用評価点: A9
編集(減点)
評価対象: スティーヴン・リフキン、デヴィッド・ブレナー、ジョン・バトフェルド、ジェームズ・キャメロン
適用評価点: -1
監督(最終評価)
評価対象: ジェームズ・キャメロン
総合スコア:[67.9]
もういいかもな
この映画の凄さは完全に分かったからそろそろアバターはいいんじゃないか。スパイダー殺すしかないっていう問題設定はかなり楽しめた。ここで殺したらだいぶ踏み込んだすごい映画になってた。そもそもの設定でここって地球だっけと考えてしまった。アバターを作る前にキャメロンについて押井守が「彼はもう実業家で映画を作ることに興奮しなくなって、何か科学技術に興味を持ってもう一度映画を作る可能性はある」と語っていてそのとおりになった。でも3D映画はキャメロンが大きく普及させても続く映画があまりない。これにキャメロンはかなり悲しんでいると思うがそこが気になる。ここ2年で3D映画なんてこれしか観てない。そこが悲しすぎる。家族は民主主義じゃねぇぞってセリフは良いと思うけど、嫌な人もいるだろうな。
痛快娯楽映画か!
スクリーンXにて鑑賞。左右に広がったスクリーンは、没入感を得られるほどの迫力は感じず。最後部だったので、もう少し前なら、もっと囲まれ感があってよかったかも。
人類の飽くなき欲望への痛烈な批判であり、これほど人間が「悪役」として登場する映画も珍しい。そしてそれを商業ベースにのせる、というのは本当に離れ業でジェームズ・キャメロンの素晴らしい業績。ただ、その分、わかりやすい痛快さが前面的に出て来たため、なんだか、スターウォーズの戦闘場面のようで、既知間を感じてしまう。 特殊効果など、もう何がどーなってんだか、よくわからんくらいよくできているので、ナーンも考えずに観るにはいいのかも、、にしては長すぎるけど、、。
全292件中、1~20件目を表示
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。









