「悪役のクオリッチ大佐と女族長、そしてスパイダー」アバター ファイヤー・アンド・アッシュ neonrgさんの映画レビュー(感想・評価)
悪役のクオリッチ大佐と女族長、そしてスパイダー
本作は『アバター』シリーズの第3作目ですが、単なる続編というよりも、シリーズの性格を一段変化させた作品だと感じました。
主人公ジェイクの物語というより、「敵と、その子ども、そして敵になりきれない存在」を軸に据えた倫理ドラマとして成立している点が、非常に印象的です。
1作目、2作目ともにIMAX 3Dで鑑賞していますが、とくに2009年公開の1作目は、IMAX 3Dとして初めて観た映画であり、フルCGによる圧倒的な立体感と没入感は、映画史的な体験として今でも強く記憶に残っています。
正直に言えば、あの最初の衝撃を超える体験を期待すること自体、すでに不可能に近いと思います。
そうした前提を踏まえて本作を観ると、映像表現の水準はすでに「驚き」を競う段階ではなく、「どこまで破綻なく更新できるか」というフェーズに入っていることが分かります。観客側もある程度構えている中で、それでも本作は非常に高い完成度を維持していました。
一方で気になった点として、フレームレートの違いによる映像の質感があります。
空中生物による追撃戦など一部のシーンでは、映画特有の24fpsではなく、高フレームレートが用いられているように感じられ、ややゲーム的、あるいはAI補正がかかったようなヌルヌルした印象を受けました。
ただ、この違和感は観ていくうちに次第に薄れ、最終的には演出として受け入れられる範囲に収まっていたと思います。
世界観については、従来通り白人社会から見たネイティブ的自然観やニューエイジ的神秘主義が色濃く反映されています。
とくにキリというキャラクターは、父を持たずに生まれ、自然神エイワと直接つながる存在として描かれており、キリスト教的な救世主像を明確に想起させます。キリスト圏の観客であれば、ほぼ誰もが気づく構造でしょう。
幻想的ではありますが、その幻想を神話として徹底的に磨き上げる手腕はさすがだと感じました。
しかし、本作で最も評価したいのは、ヴィランが非常にはっきりと立っていることです。
今回、最も印象に残ったキャラクターはスパイダーでした。
彼はナヴィでも人類でもなく、英雄でも悪でもない、どこにも完全には属さない存在です。その曖昧な立場が、そのまま物語の推進力になっています。
実の父であるクオリッチ大佐も、単なる侵略者や悪役ではなく、「父であることを捨てきれない敵」として描かれています。ジェイクと殺し合う関係にありながら、スパイダーの存在によって感情が揺さぶられる構図は非常に巧みでした。
さらに、アッシュ族の女族長という第三の敵役が加わることで、「善=ナヴィ、悪=人類」という単純な構図は完全に崩されます。
この三者が物語の軸として明確に立っているため、ストーリーは終始引き締まり、曖昧で輪郭のぼやけた悪役が登場する作品とは一線を画しています。
個人的に、面白い映画には必ず魅力的なヴィランがいると思っています。
スター・ウォーズにおけるダース・ベイダー、ガンダムにおけるシャアがそうであるように、敵が立つことで主人公側も際立ちます。本作はその原則を非常にうまく体現していました。
また、全編CGで描かれているにもかかわらず、情報過多による疲労感や眠気を一切感じなかった点も特筆すべきです。
キャラクターごとに動きや表情、感情のリズムが明確に区別されており、「誰が今なにを背負っているのか」が常に分かる作りになっています。名前を正確に覚えていなくても、関係性だけで人物を思い出せる点は、脚本と演出、キャラクターデザインの総合的な完成度の高さを示しています。
キリを演じているのがシガニー・ウィーバーだと知ったときは驚きましたが、年齢という制約を超え、演技の核だけを抽出できるCG表現だからこそ成立するキャスティングだと思います。むしろこの配役によって、キリという存在の「人間を超えた視線」が強く印象づけられていました。
『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』は、もはや映像技術の驚きを競う映画ではありません。
その代わりに、敵と味方、血縁と非血縁、善と悪の境界を揺さぶる倫理ドラマとして、シリーズを一段深い場所へ押し上げた作品だったと感じました。
鑑賞方法: IMAX 3D
評価: 88点
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