「もうそろそろ、「海」から離れた方が良いのではないだろうか?」アバター ファイヤー・アンド・アッシュ tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
もうそろそろ、「海」から離れた方が良いのではないだろうか?
3時間を超える長尺ながら、ところどころで、何かのダイジェストであるかのような、バタバタとした編集が行われていたのは気になった。確かに、話のテンポが速くて、飽きることはないのだが、逃げたり、捕まったりの繰り返しのように感じられるところも多くあり、もう少しエピソードを整理したら、映像の美しさやアクションの迫力をじっくりと楽しめたのではないかと思えてならない。
ストーリーとしては、人間のスパイダーが、マスクなしでも呼吸ができるようになるところに進展が感じられたのだが、人間がパンドラで生きて行くための手段は、既に「アバター」という方法で確立されているはずで、人間とナヴィが、スパイダーの争奪戦を繰り広げるという展開には、今一つ説得力が感じられなかった。
ジェイクが、海の部族の中でスパイダーを匿うのが一番安全だと考えていた以上、当然、人間を撃退するための方策があるのだろうと思っていると、あっさりとスパイダーを拉致された上に、自らも無抵抗で投降するなど、余りの無防備さに唖然としてしまう。
単身乗り込んで来た妻のネイティリや、独力で脱出したスパイダーだけでなく、「鯨」の乱獲に反対する海洋学者の活躍によって、ジェイクが人間の基地から脱出するくだりにしても、ご都合主義が感じられるし、そもそも、このシークエンスは必要だったのかという疑問も残った。(「鯨」の乱獲の情報は、他の手段でも手に入っただろう。)
その一方で、スパイダーを助けるために、ジェイクと、その天敵だったクオリッチ大佐とが、互いに協力し合う場面が二度もあり、ナヴィになった大佐が、いずれジェイクの味方になるのではないかとも思われて、今後の展開が楽しみになった。
ストーリーの進展ということでは、ナヴィなのに、人間の側に付いてナヴィと戦う部族が新たに現れるのだが、銃器を入手できるということ以外に、彼らが人間の味方をする理由がよく分からなかった。せっかく、白人の側に付くネイティブ・アメリカンのような部族を登場させるのであれば、独りよがりな欲望と、それに起因する内輪揉めが、本当の敵を利することになるといった展開を、もっと奥深く描けなかったものかと思えてならない。
何よりも、タイトルから察するに、今回は、火山の噴火や山火事が大きな見せ場になるのだろうと予想していたのだが、結局、海での戦いがクライマックスになっていて、前作の「焼き直し」のように感じられたのは、残念としか言いようがない。
1作目で、人間がパンドラに来たのは、鉱物資源の採掘が目的だと説明されていたように思うのだが、それが、2作目と本作では、あたかも「捕鯨」が目的であるかのようになっているところにも、違和感を覚えざるを得ない。
ラストの決戦の様相にしても、キリ達が大地の母(エイワ)と交信できるようになるという新機軸はあるものの、比較的戦闘力の高いパンドラの生物(今回は巨大ヤリイカ?)の群れが加勢することによって、ナビィ側が形勢を逆転するという流れは、1作目から続くワンパターンで、どうにもマンネリ化の感が否めない。
このシリーズが、3D映像を体感するための貴重な機会を提供しているということに、異論の余地はないだろうが、次回作以降も、「驚異の映像体験」を売りにしようとするのであれば、もうそろそろ「海」から離れて、新たな舞台を用意する必要があるのではないかと思えるのである。
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