「キャメロンが驚異の映像技術で描く壮大な22世紀の西部開拓史。」アバター ウェイ・オブ・ウォーター レントさんの映画レビュー(感想・評価)
キャメロンが驚異の映像技術で描く壮大な22世紀の西部開拓史。
本シリーズが西部開拓史をテーマにしているのは明らかだが、今作は前作以上に惑星パンドラ先住民たるナヴィ族にとって深刻な事態に陥る。
前作は単にレアメタル目的のいざこざだったが、今回はパンドラを植民地化しようと人類の開発(侵略)が本格的なものとなり、先住民族の意思を全く無視した植民地計画が現実のものとなる。
瞬時に森を焼き払い植民する冒頭のシーン(インディペンデンスデイのエイリアンが都市を一瞬で焼き尽くすシーンに酷似)は人類がこれまで地球でやってきた蛮行を凝縮して見せる点で見事だし、そこからジェイクたちのゲリラ戦による反撃へと怒涛の展開を見せる。
冒頭から人類による侵略行為という娯楽作としては結構重い展開ながらも中盤、海の部族と生活を共にするあたり、さすがに今回パンドラの海がテーマだけにその海の描写がとにかく素晴らしい。
いつまでもこの海のシーンを見ていても飽き足らないほどで、CG映像に食傷気味の自分でも素直に映像の美しさに浸ることが出来た。
そしてパンドラの自然を余すところなく堪能させた後に続く人類の蛮行。本作はパンドラの自然の美しさと対照的に人類の醜い行いを見せつけることにより、人類の文明社会に対する批判的メッセージを強く感じさせる。
全編にわたりCG映像のすばらしさは言うに及ばず、長尺ながらもストーリーも飽きさせない。ただ、難を言えばクライマックスの展開はジェイクの子供が何度も捕まるといった同じことの繰り返しで少々だれる所は否めない。
一作目鑑賞時、どうやってこの物語をシリーズ化するのか不安だったが、今回二作目で大きく世界が広がった。
パンドラの神たるエイワの存在、そのエイワの子と目されるキリ(キリはキリストからもじった?)、そして人類とナヴィ族の中間的存在であるジェイクとはまた違った生身の人間としてナヴィと共に生きるスパイダーの存在と、本シリーズを牽引してゆく役者は揃った。シリーズ5作まで続くということはジェイクの子供たちが時代を受け継いでゆくのだろう。
そして人類との戦いも熾烈を極める展開が予想される。本来、未開の種族が最先端の科学技術を持つ人類に対抗する術はなく、ネイティブアメリカン同様、虐殺され居留地に追いやられるのが関の山。しかし、キャメロンは恐らくそんな西部開拓史のアンチテーゼとして本シリーズを完結させようというのだろう。
本シリーズはナヴィ族が人類に勝利するかはまだわからないが、人類は自然には勝利できないだろう。パンドラの守護神エイワがこの戦いの鍵を握っている。
現代においても自らの欲望のままに地球環境を破壊してきた人類はいまや温暖化による気候変動の脅威にさらされている。どんなに科学技術が進んでもこの気候変動には勝てないのだ。人類はいまや地球からしっぺ返しを食らっているのだから。
ちなみに本作はあからさまな捕鯨批判も込められていて、「日浦」の文字は少々やりすぎな気もしなくないけど、産業革命の時代、鯨油だけのためにクジラを乱獲した欧米に対してもきっちり批判してるし、そもそもが本シリーズ自体が人類の文明社会へのアンチテーゼなので、日本人だけを批判の的にしてるわけではない。自分たちが批判されたと目くじら立てるのはいかがなものか。
レントさん
深い考察のレビューですね、恐れ入りました。
私の薄いレビューが恥ずかしい。
前作でも環境問題についての提言を感じました。
5作目までの構想も、レントさんのレビューで分かりました。
当然映画館で観るべき映画ですね。
家電や宅配、おまけに家族と今回、特に集中を欠きました。
今晩は。
コメント、ありがとうございます。
キャメロン監督は、微かな記憶ですが海洋生物学者に近いレベルの方であった事も影響していると思います。
該博な知識を持った監督作は、矢張り見応えがありますね。
急なる寒波到来ですが、御身体ご自愛ください(お互いに)では。