「あなたが見える」アバター ウェイ・オブ・ウォーター 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
あなたが見える
13年前、ジェームズ・キャメロンが創造した一つの惑星に、我々は驚嘆した。それはもはや映画を“観る”のではなく、“体感する”。
その映像世界、映画技術…。映画はここまで出来るのか…!
キャメロンは天才や鬼才などありふれた称号を超えた、“神才”。
神は7日で世界を創造したが、キャメロンは10年超。
にしても、あれからもう13年も経つのか…。確か前作公開時、次は10年も空けないで新作を作るなんて言ってた気もするけど、自身のブランクも最長更新。すっかり10年に一本の監督となった。
しかし、それも当然だろう。一作一作、己の全てを入魂。この“アバター”という世界を創り上げるという事。ただの続編一本だけではなく、5作まで想定している壮大なサーガを見据えて。コロナもあった。さらに進歩した映画技術を駆使して。
13年のブランクは必要だった。その甲斐はあった。またしても。
劇場鑑賞をスルーして、いずれレンタルかTVでやった時でいいや…なんて思っている輩に声を張り上げて言ってやりたい。
もし、何だこれ、つまんねぇ!…なんて言ったら、それは作品が悪いんじゃない。テメーが悪いんだ!
劇場大スクリーンで観るべき映画は必ずある。『アバター』はその筆頭。
劇場大スクリーンで体感してこその、『アバター』なのだ。
その醍醐味を堪能させてくれる、幾つもの要素…。
3Dを劇場で観るのはいつ以来だろう。『STAND BY ME ドラえもん』以来か。実に久しい。あれだけブームになった3Dも完全に下火に…。だがそれは、3Dに適した作品が無かったからだ。やはり『アバター』は違う。飛び出す見世物の類いではなく、世界観をより体感する為にある。スクリーンの奥に世界が広がっている。第1作を観た時の興奮と感動がまじまじと甦ってきた。
地元の映画館では2D吹替のみなので、それでは何かせっかく感が無いので、隣町まで足を伸ばして3Dのハイ・フレーム・レート上映で鑑賞。これが凄かった…! 従来の1秒24コマではなく、1秒48コマという高画質。さらにハイクリアな映像、滑らかな動き。いやもう、スクリーンで映像を観ているというより、肉眼でそのものを観ているようなレベル。大袈裟な言い方ではなく、本当にナヴィたちが目の前にいた。
3Dとハイ・フレーム・レートによって躍動するキャラたち。
アクション・シーンの迫力と言ったら…!
彼らと共にイクランに乗って飛ぶ浮遊感と言ったら…!
今回のメイン舞台は海。その雄大な美しさと言ったら…!
そして今回も魅せられる“パンドラ”という星。その壮大なスケール、幻想さと言ったら…!
全てが臨場感たっぷりに展開する。今回も一回の瞬きも厳禁!(←あくまで例えです)
やはり13年の間の映画技術の進歩は凄かった。前作も驚嘆させられたが、キャメロンは新作の度にそれを凌駕する。
もうナヴィ族のクオリティーに何の違和感も無い。実物と見紛うほど。
今回は水中パフォーマンス・キャプチャーに挑戦。それを駆使しての演技やアクション、演者の苦労には本当に頭が下がる。
CGの水の描写の難しさは知られているが、それと同じく驚かされたのは、水に濡れた質感。CGやパフォーマンス・キャプチャーは遂にここまで到達したか…!
キャメロンは常に難題を自ら作り、自らクリアする。見る我々を驚かせ、興奮感動させる為に。
3Dとハイ・フレーム・レート上映による驚異の体験。
さらに進歩した映画技術レベル。
アクション、CG、スケール、映像美…全てのハイクオリティーと満足感。
キャメロンの辞書に不可能はない。全て実現させるのだ。
公開されて日は経ってないが、すでにレビュー数も多い。その中でちらほら目立つのが、ストーリーの指摘。
前作もそうだが、『アバター』はストーリーに関しては突っ付かれる。
確かに映像や技術と比べて、ストーリーそのものは捻ったものではない。
だけど、決して凡庸ではない。それを十二分に魅せきっている。
“スカイ・ピープル”こと人類との闘いから十数年…。ジェイクはナヴィ族として転生し、ネイティリと結ばれ、4人の子を持つ。幸せに暮らしていたが、パンドラに再び人類が…。命を狙われているジェイクは家族を連れて森を出、海の部族の元へ身を隠すが…。
前作は主に森と空が舞台だったが、今回は海。先述もしたが、その蒼く、雄大な美しさ!
海上シーン、水中シーン、全ての美しさに魅せられる。新クリーチャーも必見。
キャメロンの海好きは有名。海で学び戯れ、巨大なクジラのようなトゥルクンと遊泳するシーンなどなど、キャメロンのこだわりと自らの願望が垣間見えた。
前回はジェイクと森の部族の出会い、交流。今回は、家族の物語と、他部族との交流。
それにしてもジェイクの人生は驚きの連続。元海兵隊員だったが、足を負傷し、亡き兄に変わって未知の惑星のプロジェクトに参加。そこで出会いがあって、闘いがあって、生まれ変わる。今や部族の長で、夫で父。前作序盤のジェイクからは考えられない。
ジェイクの父親ぶりは結構厳しい。それは家族を守る為なのは勿論なのだが、ちょっと子供たちを抑え付けているような…。
子供は4人。長男ネテヤム、次男ロアク、末娘トゥク。それと、亡きグレース博士の養女キリ。
勿論父も子供たちも愛し愛されているが、時に年頃の男の子供は父に反発。ネテヤムは優等生タイプだが、ロアクはトラブルメーカー。ちょくちょく父からは叱責を…。
キリはよく亡き母に思いを馳せる。にしても、父親は誰…?(シガニー・ウィーヴァーがパフォーマンス・キャプチャーで“少女”を演じているから驚き!)
ジェイクも人間からナヴィに転生したが、子供たちも“混血”。それが時々コンプレックスや差別偏見の対象に…。
海の部族の子供たちと度々衝突。あちらは純血、こちらはハリポタ的に言えば“穢れた血”。取っ組み合いの喧嘩も…。
それでも堪えねばならない。喧嘩の原因は何にせよ、謝らなければならない。こちらは助けを求めてきた身。トラブルを起こすなんてもってのほか。
だけど、思春期真っ盛りの子供たちは…。そうやって築き上げていく子供たちの友情もある。
子供たちのメインキャラは、ロアクだろう。父から“家族の恥さらし”とも言われる。やろうとする事全てが裏目に出てしまう。何だか、見てて最も共感させられる。
ある時騙され、海で孤立。巨大肉食魚に襲われそうになった所を助けられたのが、一頭のトゥルクン。何でも訳ありのはぐれトゥルクン。種族を超えての孤独な者同士の友情が心を優しくしてくれる。
別種族との間に何か生じるのは致し方ない。それぞれ生き方、価値観が違うのだから。
タフな海の部族たちだが、部族長はジェイクたちを受け入れてくれる寛大さ。
そんな彼らを、自分の過去の経緯で争いに巻き込んでしまうかもしれないジェイクの心苦しさ。
やはりそれは避けられなかった。争いと因縁が確実に近付いてくる…。
前作で死んだ筈の大佐。スティーヴン・ラングのインパクトも相まって、前作で死なせたのは惜しいと思ったのか、掟破りの生き返り! しかも、アバター・プログラムで忌み嫌っていたナヴィとして!
ブルーな気分だが、奴らと同等の力を得た事は武器になる。
これで堂々と果たせる。ジェイクへの復讐を。
ジェイクは家族を守る。大佐は復讐。シンプルだが、しっかりとした地盤が出来た。
その地盤の上にたっぷりと描かれるドラマ。
人間の愚かさ、エゴ。繰り返す争い事…。“今”だからこそ、響くメッセージ性がある。
他の種族との交流も、グローバルと多様化の今だからこそ。
普遍的な家族の物語。ジェイクらだけと思ったら、まさかの大佐も!
大佐には遺児がいた。(って言うか、いつの間に…!?) 大佐は存在を知らず、子の方も父を最低な奴としか思っていなかったが…。
名はスパイダー。野生児のようで、ジェイクの子供たちとは兄弟分。
ある時大佐一味に連れ去られてしまう…。大佐とスパイダー。大佐はナヴィに転生し、正確には“親子”ではないのだが…。
微妙な距離感、腐ってもやはり親子…? スパイダーはひょっとしたらあっちに寝返るのでは?…とも思わせ、ラストのあの行動など、こちらの“親子”ドラマも魅せるものがあった。
本筋であるジェイクたち家族のドラマは熱く、ドラマチックで、感動的。
終盤、家族を襲った悲劇…。闘いの渦中にいるという事は、どうしても犠牲が出てしまう。
悲しく、辛い。が、この悲しみと怒りを断ち切るには、心を強く持って闘わなければならない。
危機にも見舞われる。その中で…。父と息子、母と娘。立ち向かう。
乗り越えた先に…。再び深めた家族の絆。サリー家は一つ。
家族や多種族。ボリューミーなドラマ。
守る為、復讐…。大迫力のアクションとスケール。
CG、3D、映画技術…最新最高の粋を駆使した映像体験。
そして、キャメロンのオール・エッセンス。
ただの『アバター』前作の続編ではなく、
『ターミネーター』『2』等しく、オリジナルの構築した世界観の拡がり。
『エイリアン2』のような未来&アーミー感。
『アビス』のような海の世界。
『タイタニック』のような沈没パニック・シーン。『タイタニック』からはケイト・ウィンスレットも参加。
さらには、自他共に認める失敗デビュー作『殺人魚フライング・キラー』を思わせるフライング・フィッシュまで!
現時点でのキャメロンの集大成と言って過言ではない。
(…アレ? 『トゥルーライズ』だけ抜けちゃった…)
時期的に今年最後の劇場鑑賞。
今年の締めを飾ってくれた見応え、満足度。
あのラストからも分かる通り、本作はこれから拡がる壮大なサーガの始まりに過ぎない。
これからずっとキャメロンがパンドラの住人になってしまうのはちょっとアレだが(前作の後に予定されていたものの諸事情で消滅した二重被曝者の映画が観たかった!)、例え食傷気味になっても、その何倍もの充実感で満たしてくれるだろう。
次はどんな次元を魅せてくれるのか…?
キャメロンの飽くなき果てしなき創造世界。
ジェームズ・キャメロン。作品を通して、あなたが見える。
明けましておめでとうございます。
本年も宜しくお願いします。
こちらのサイトに登録した昨年2月直後には、
こちらのサイトに無知な私からの問い合わせに、
丁寧に回答して頂き、ありがとうございます。
なお、フォロー、フォロアー登録していない共感者探しについては、
事務局に改善依頼した結果、現在のような共感者名が分かるシステムに変更してくれたようです。他のレビュアーさんからも改善依頼があったとは思いますが。
本年も、共感作での交流をお願いします。
-以上-
おっしゃる通り、本作は映画館で観ないと意味ないですよね。私は交通費を余分にかけてまで遠方の映画館でIMAXレーザーGT3Dで観ました。
結果はもちろん大満足でした。