「「パフォーマンス・キャプチャー」とへアップデート。圧倒される海上・海中シーン。」アバター ウェイ・オブ・ウォーター 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
「パフォーマンス・キャプチャー」とへアップデート。圧倒される海上・海中シーン。
本作は『アバター』の続編であり、全5作からなるアバターシリーズの2作目にあたります。なぜ続編との間に13年かかったのかというと、キャメロン監督が「続編を手掛けるには「残り4本の脚本を書き終えて全容を把握した上でないとダメだ」と考え、すべての物語を緻密に組んでから撮影に臨んだからです。すでに3作目は撮影済みだそうですが、実は、本当に5部作すべてが公開されるのかは、いまだ正式には決まっていないようです。というのも、本作で映像などをこだわり抜いたため製作費が巨額となり、世界興収歴代3位の「タイタニック」級まで稼げないと赤字となるような状況のためなのです。
物語は、前作から十年以上が経過し、地球からはるか彼方の神秘の星パンドラ。元海兵隊員のジェイク・サリー(サム・ワーシントン)はパンドラの一員となり、先住民ナヴィの女性ネイティリ(ゾーイ・サルダナ)と結ばれました。現在は息子のネテヤム(ジェイミー・フラッターズ)とロアク(ブリテン・ダルトン)、娘のトゥク(トリニティ・ジョリー・ブリス)、グレース・オーガスティンの家で生まれた養女のキリ(シガニー・ウィーバー)、そして人間であり、今は亡きマイルズ・クオリッチ(スティーヴン・ラング)の息子のスパイダー(ジャック・チャンピオン)と平和に暮らしていたのです。一方人類はパンドラでブリッジヘッドシティという名前の新しい主要な作戦基地を建設します。
その中で、RDA社の手によって。かつてジェイクたちによって殺されたマイルズ・クオリッチをはじめとする傭兵部隊Sec-Opsの面々は、自身のDNAとナヴィのDNAを掛け合わせて、コピー人間として復活するのです。生前の記憶はそのままに、さらにナヴィとしての体を手に入れ、ジェイク達への復讐を含め、彼が始めたことを終わらせようとするのです。そしてナビィのリーダーとなっていたジェイクとその一家だけをターゲットに、その行方を求めてナビィの村々を無差別に焼き払っていくのでした。
危険を察知したジェイクは、リーダーの地位を返上し、一家と共に神聖な森を去り、海の部族であるメトケイナ族のもとへ身を寄せることにします。しかし、その美しい海辺の楽園にも侵略の手が迫っていたのでした。
前作から13年もの時を経て流体シミュレーションやレンダリングが大幅に強化され、通常のモーション・キャプチャーから「パフォーマンス・キャプチャー」とへアップデートされました。「パフォーマンス・キャプチャー」とは、体の動きをとらえるモーション・キャプチャーと、顔の動きも同時にとらえる技術。今作では、それを海の中で行うため、俳優陣は水の中で息を止めながら自然な演技をし続ける必要があったのです。それを知った上で海中に潜る長いシーンを見ていると、いかに役者さんたちが、長時間息を止める大変な演技に挑戦しているのかと驚きの連続でした。
また、キャラクターだけでなく、背景の水や炎の挙動まで緻密に描写されるようになりました。本作ではメインの舞台が「森」から「海」へと移ります。この撮影手法は前作の「映像革命」といった表現をも超えていたのです。とにかく海中の描写の美しさは息を呑むほど美しかったです。
特に注目したいのは後半の戦闘シーンです。「海」であるためキャメロン監督ならではの「タイタニック」的な要素や、「ターミネーター2」を超える映像が繰り広げられ、まさに「映画史に残る必見の映像」が繰り広げられたのです!
ところで革新的な映像とは逆に、ストーリーは至ってシンプル。基本は開拓者と原住民の闘いという西部劇以来のハリウッド映画の伝統を引き継ぐものです。前作では膨大な地下資源を狙って、原住民のアバターを作り上げて懐柔を試みるも、効果が出ないとみると武力制圧に出て、原住民に逆襲されるというもの。今回は、原住民のリーダーとなってしまった元アバターを暗殺しようとして、結果的に原住民全体を敵に回しまい、またまた逆襲されるというもの。
圧倒的な武器・装備を誇る開拓者であったとしても、原住民たちの絆の強さと俊敏なゲリラ戦術、そしてパンドラに宿る神聖な力とそれにつながる生き物たちの力には屈するしかなかったです。
特にジェイクとネイティリの間に生まれた子どもたちも加わった家族の力が、本作では大きな威力を発揮します。本作の魅力として、この家族の絆の強さには誰もが感動されることでしょう。
また本作の影の主役は、トゥルクンです。全長91.4 mに達する超巨大な海生生物であり、地球のクジラに似た姿と生態を持ちます。ナヴィに匹敵する高度な知能を持ち、自意識を認識しており、ナヴィとの交流も可能であり、「エイワ」(パンドラの女神)に繋がりその記憶をナヴィに共有する事も可能であるのです。さらに高度な言語能力を持ち、数学や音楽や歌を含む独自の高度な文化を発達させる等並外れた生物種です。その中には、「トゥルクン・ウェイ」と称する殺生を禁ずる、ナヴィの歴史における最古の時代からの古代哲学があり、トゥルクン達とメトケイナ族は共にこの教義を共有していたのでした。
メトケイナ族からは非常に近い存在として扱われ、部族の各メンバーにはそれぞれ「魂の兄妹」と称されるトゥルクン達がいるとされ、この絆は一生続くとされています。
トゥルクンのなかでも、殺生の掟を破ったとして群れを追われたパヤカンという若い雄が、ジェイクの息子ロアクを救い、彼と友情を持ちます。そのことが本作後半のマイルズたち傭兵軍団や捕鯨業者との闘いにおいて、キーポイントになります。パヤカンにとっても、自分を群れから追いやり、深手を負わせた捕鯨業者に対する復讐が始まるのでした。
そして最後に捕鯨船内で繰り広げられるマイルズたちとジェイク一家の壮大なバトルシーンは圧巻。ぜひDVDではなく、なるべく広いスクリーンの3Dでの鑑賞をお勧めします。
それにしても3時間12分の上映時間は一瞬に感じられましたが、ラストの方では強烈な尿意と闘うハメになりました(^^ゞ