劇場公開日 2022年12月16日

「姿を変えた「大草原の小さな家」」アバター ウェイ・オブ・ウォーター アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0姿を変えた「大草原の小さな家」

2022年12月16日
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鑑賞方法:映画館

3D 吹替え版を鑑賞。3D 映画という手法を確立し、全世界で歴代最高収益の 3,700 億円を叩き出した 2009 年公開の前作の続編である。前作から 13 年経っており、登場人物の説明などは一切ないので、前作を鑑賞済みであることが前提である。キャメロン監督は第5作まで想定済みだと言っている。

アルファ・ケンタウリ系惑星ポリフェマス最大の衛星パンドラを舞台に、この惑星の地下に埋蔵されているエネルギー物質の希少鉱物アンオブタニウムの採掘を目的として海兵隊を派遣した RDA 社が、パンドラに住んでいたナヴィという先住民族の許諾が得られなかったために、人間との混血を進めるという陰湿な手段に出て、アバターの操作員だった兄が急死したことにより、RDA 社から兄の仕事を引き継いでほしいとの誘いを受けた元海兵隊員ジェイクが、兄の身代わりとして作戦に参加するところから始まった話である。アバターは操作員各自の DNA に合わせて作られているために新たな操作員を使うとなると高額なアバターをもう一度作り直さねばならないが、ジェイクは一卵性双生児の兄とDNA が一致するため、兄のために作られたアバターを利用することが可能なのだった。

戦傷で下半身不随になっていた身体を治す治療代を得るため、ジェイクは RDA 社の誘いに応じることにし、およそ6年の冷凍睡眠を経てパンドラに辿り着いたジェイクは、ナヴィ研究所操作員としての任務に就くこととなったが、ある日、アバターを使ってのフィールドワークに参加していたジェイクは、不意なアクシデントから仲間とはぐれてしまい、危ういところをネイティリというナヴィの若い娘に助けられ、埋葬した死者の魂が死後も大地に戻って生きてゆくと考えるナヴィの価値観に次第に惹かれて行く。遂には地球人達に背を向け、パンドラのために戦うことを決断したジェイクは、人間社会から見れば完全な裏切り者となる。自分を送り出した世界を裏切るという話は、「タイタニック」のローズと同じであり、キャメロン監督の嗜好なのだと思われる。

今作では、前作で死亡したはずのクオリッチ大佐がディジタル化された本人の記憶をアバターに移植することによってアバターとして蘇るという超ご都合主義的な話が冒頭に出て来るのだが、これだと何回殺しても無駄じゃないかと思われてならなかった。シリーズ化するにあたってラスボスの不在が問題になったためであろうと思われるが、今作での結末といい、本編中で必死で戦ったのは何のためだったのかという思いが消えなかった。やってはいけない手段だったのではないかという思いは見終わった後まで残った。

人間の俳優の演技を撮り終えたのは5年も前だという話で、CG 製作に5年もかかったということであろう。CG のコストは実写を遥かに上回ることが知られているので、前作並みの興行収入がなければ相当ヤバいことになるはずである。良く出来た CG だとは思うが、翼竜の羽ばたきに伴って、胴体は逆向きに振動するはずであるのに、胴体がモスラのように微動だにせず飛行しているのには違和感を覚えた。

様々な目新しい生き物や海中の美しいシーンなど、いろいろな仕掛けは目新しいものの、展開されているのは家族の話が主となっていて、子供世界の騒ぎが大人を巻き込む大事になり、大人が子供を頭ごなしに叱りつけずに丁寧に話し合うところなど、これは姿を変えた「大草原の小さな家」ではないのかと思ったら非常に府に落ちた。

ただ、鯨に似た生物を寄ってたかって殺して特殊な物質を得ようとするだけの船団は、完全に日本の捕鯨船団を描いているとしか思えず、「鯨は頭が良いから殺してはダメ」と牛や豚や羊や鷄を平気で食べながら主張する頭の悪いシーシェパードを彷彿とさせられるシーンが延々と続いたのにはちょっと辟易させられた。

折角海を舞台にしながら、人間の水着美女などが一切出てこないのは残念だった。それぞれのアバターが美女なのかどうかという審美眼までは持ち合わせていないので、顔色が悪くプロポーションもスリムなだけという登場人物を見続けさせられるのもどこかお伽話じみていた。水中で酸欠になって気を失いながら窒息死しないという描写もリアリティを欠いていた。

音楽は見慣れない人だったが、故ジェームズ・ホーナーの作風を偲ばせる見事な音楽を付けており、特にエンドタイトルは大変な聴き物であった。3時間を超す上映時間は、アバター世界に慣れさせて登場人物の区別がつけられるようになるためには必要だったのかも知れないが、トイレが近い人には相当辛いのではないかと思われた。
(映像5+脚本3+役者3+音楽5+演出4)×4= 80 点。

アラ古希
アラ古希さんのコメント
2023年1月27日

コメント有難うございます。仰る通りかと思います。

アラ古希
えーじさんのコメント
2023年1月27日

わたくしの読みでは、大佐は多分最終でナビ側に味方するものと考えています。それにしても今後のエンディングは1の内容をリピートするだけとなってしまいますが…。
捕鯨文化は欧米人には理解出来ないのでしょうね。日本人は鯨のすべてを全く無駄にはしていないのに。その文化をもっとアピールするべき時かもしれません。

えーじ