「一定レベルはクリアしてるが、もっとより良い描き方があったはず」ナチス第三の男 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
一定レベルはクリアしてるが、もっとより良い描き方があったはず
人間ドラマといい、サスペンスといい、アクションといい、この監督がそれぞれをかなり高い品質で描ける人であることは間違いない。そしてベストセラー小説を基にしているだけであってこのナチスへの抵抗運動をめぐる人間模様も見応えがあり、それぞれ主軸となる人物を演じる俳優陣もささやかなれど、適度な存在感を刻んでいる。
残念なのは、視点をバラけさせることで一人当たりの人間の厚みが削がれてしまったことだろう。一人のビジョンではなく、あくまで視点の集合体として描こうとした試みはよく分かるが、せっかくここまで丁寧に作り込まれていながら、この構成は非常に勿体なく思える。タイトル・ロールのラインハルトに関しても、彼の人間的な部分を接写しながらそれが全体像とは結びつくことはなくチグハグな印象を残す。私がそう感じてしまうのは、昨年『ハイドリヒを撃て!』という全く同じ題材を扱った秀作が公開されたばかりだからだろうか。
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