「原作者自身が脚色した似て非なる別バージョン」ウィルソン バッハ。さんの映画レビュー(感想・評価)
原作者自身が脚色した似て非なる別バージョン
『ゴーストワールド』の原作者ダニエル・クロウズの傑作グラフィックノベルの映画化だ。原作者のクロウズ自身が脚色も担当している。
興味深いことに、風采の上がらない偏屈な皮肉屋という主人公のキャラは同じでも、ビジュアルは随分変わった。ウディ・ハレルソンがキャスティングされたことで、唯我独尊の不遜さが大きく増しているのだ。
重要キャラである元妻も、ビジュアル的には原作と真逆なローラ・ダーンが演じ、大きく変わった。実際にクロウズは、キャスティングが決まったことで2人に合わせて脚本をリライトしたという。
人生をこじらせた末の諦念を描いていることは同じだが、演出のテイストもあって、映画の方がより希望を感じさせる後味になった。つまり原作のエッセンスを誰よりもよく知る原作者自身が、あえて似て非なる別バージョンを作り上げたのだ。どちらが上か下かではなく、ひとりの創作者から形の異なる結果が生まれたことが面白く、ぜひ比べて楽しんでみることをお勧めします。
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