「生への渇望とウンガッツの同居」ラッキー(2017) きょうそさんの映画レビュー(感想・評価)
生への渇望とウンガッツの同居
クリックして本文を読む
とてもいい映画だった。
アメリカの片田舎に住む90歳の爺さんは
結婚せず、子供もおらず
朝起きて、タバコを吸い、喫茶店に行き、
クロスワードパズルをしてミルクを買い、
バーに行く。そんな代わり映えしない
日々を過ごす。
側から見れば、今更
生に執着する理由もなかろうと
老成していて当然と決めつける。
が、爺さんは生きることを何一つ
諦めていない。
「リアリズム」という
言葉の意味を突き詰める知的好奇心を持ち、
気に食わないことがあれば
素手で殴り合いをしようとする。
だからこそであるが、立ちくらみで
倒れたことに心底、ショックを受ける。
「死期が近づいている」と。
そんな爺さんが言うからこそ
考えさせられる「死んだら何も残らんのさ」
という死生観。
前のめりで死ぬ、ということは
決して何かを成しているかどうかに関わらない。
それは死への恐怖に対峙し続ける
気概を持っているかどうかなのだ。
若いうちは生命力に溢れ、やるべきことが
山積しているから、死への恐怖なんて
時々、顔を覗かせるだけなのだ。
直視せずに済む。
でもこの爺さんはきっと死ぬまで
ウンガッツ(無)からは目をそらさないのだ。
あとね、タバコが効果的に使われている
映画ってだいたい外さないんだよな。
なんでだろう。
そうそう。追記ばっかだけど
この映画のアジア版は
「胡同(フートン)の理髪師」
という映画だと感じました。
この映画が好きならオススメ。
お爺ちゃん萌え間違いなし。
コメントする