スリー・ビルボードのレビュー・感想・評価
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よかった。最後違う人を殺しに行くっていうのがなんかも、、うーん。 ...
よかった。最後違う人を殺しに行くっていうのがなんかも、、うーん。
しかし許せない事だから
未開の地に生活する「三枚看板」の人間劇場
怒りや一時の感情で、心にもないことを口走るとか、手が出ると言うのはよくあることで。いや、自分自身ではあまり経験は無いが。物語は、似たもの同志のミルドレッドとディクソンが「憎しみ合う関係」から「Company」になってしまうまでの話。西部劇にして200年ほど時代設定を巻き戻しても、多分成立すると思う。この、ある意味「未開」な物語の顛末は、200年前ならガンファイトなんでしょうが、今は、さすがにね。
意地悪な言い方をすれば、「ショッキングなイベントを並べただけの、古臭くて中途半端なカタルシスで終わる物語」。逆にカッコつけて言うなら、「哀悼と後悔の念が歪んだ復讐心へと変化してしていく様を、犯罪被害者の遺族と挫折した男を主役にして描いた問題作」?ちょっと変。
傑作と言われている理由が見つからず、少しだけ悩んでます。何か足りない気がして、もやもやしながら劇場を後にしました。
イギリス映画なんですね
被害者の母親の行動で未解決事件が解決するかと思いきや、変な方向に向かっていきます
絶妙にスッキリしません、ある意味スッキリするのもかしれませんけど
なんて事するんだーの連続でした
おいおいおい、とツッコミながら観ました
そろそろ終わるかなー
終わったぁ
という感じでした
ウッディ万歳!
中盤で死んでしまいますが、ウッディ・ハレルソンにしか出来ない役、まさにハマり役でした!他の作品でも寛大なナイスガイ役が多々ありますが、本作も中々良かったです。実際にどんな人かは知りませんが、スクリーンの中ではいい役が目立ちますね^_^
作品はアカデミーに相応しい大傑作です!戦争で食ってるアメリカへのメッセージ的なとこもありますね。
私は気付けなかった
この作品は「地位のある白人男性は嘘をつかない」「男に楯突く女は生意気」という先入観がある人程、隠された真実に辿り着けない。まざまざと見せ付けられました。
脚本と完成されたトリック。最後まで見ても、結局犯人は誰なのか分からず、ラストの2人は反社会勢力である第三者に娘をレイプして焼かれた想いを、諦め半分で区切りをつけるのかな〜というぼんやりした予想をして終わりましたが、全くの見当違いにもありました。
まずスリービルボード、三つの広告看板の配置が盛大なミスリードになっている。手前から読む事が肝心。
なぜ?ウィルロビー署長は
まだ逮捕されないの?
殺しながらレイプしたというのに
ストレートに大胆ですね。観た後も気付けず、解説を読んだ後は震えました(笑) 私もミルドレッドを非難する哀れなエビングの市民なんだと。
あの正義感に溢れた、地位のある白人男性がまさかまさかこんな痛ましい事件の主謀者だなんて誰が思うだろうか?奇行を繰り返すディクソン巡査に目が行きがちで、彼の後半の行動に拍子抜けしたり。そうすると、署長が犯人ならあの突然の自殺も遺した手紙も頷ける。
先入観による錯覚とは恐ろしい。
序盤のミルドレッドは三つの看板から始まり、息子のクラスメイトを殴ったり、衝動的に警察署を放火したり復讐の連鎖に捕らわれていたが、署長の自殺により復讐の機会を有耶無耶にされてしまう。
それが後半になるにつれて、署長の(自殺による)贖罪にレッドのオレンジジュースの下りだったりディクソン巡査の行動に、復讐の連鎖が許しの連鎖に変わって行く。
放火を認めたミルドレッドにディクソン巡査の返しもある種の許しである。
ヒルビリーと呼ばれる不器用で偏向した価値観の人間が成長を見せてくれるのは面食らいました。
この作品は、相手の地位や対面で判断してしまう現代人の性質を盛大に皮肉にした痛烈なものでした。
映画ファンなら次に来る手はこうだ、と思う先入観とも悉く真逆を貫いていく。私達はこうも先入観に捕らわれているんだ目を覚ませ。と個々に問いかけているような完成された脚本に感服しました。
これはもう一度見たくなる。
-追記-
犯人が所長と言われても最初は腑に落ちなかったのですが、いきなり押し寄せて来た容疑者と共謀を図ったのではないかと個人的に推測します。
(容疑者の足が掴めなかったのは軍関係者だった為に事実を揉み消された、所長の話を聞いてバーで法螺を吹いていた場合もありかと)
所長は自ら広告料5000ドルを工面しそのあと突然の自殺、そして手紙を残します。あの看板が建てられた後に行動に移したのだからそれなりの贖罪の意識はあったのでしょう。それに癌でこの先長くないのに加え、もし犯人だと世間に知られ妻と子ども達の未来を潰してしまったら?それこそ彼にとって最大の悪夢です。だからあんなにあっさりと自殺してしまったのだと。
容疑者が完全なる悪だとしても真犯人である所長は正義を掲げるが悪であった。というのがこの作品の真髄でもあるのだと思います。
誰にでも正義と悪がある
ミルドレッドにもディクソン巡査にも所長にも
おもしろい!
脚本がおもしろい。
ある事件を解決するために母親が三つの看板を張り出し
それがキッカケで色んな出来事が起きるというお話。
シリアスな話しの中、クスッという笑いもあり
演技が自然でとても良かった。
フレークを息子の顔にかけるところとかで親子の関係性がわかるし、スリッパのうさぎ?で会話するシーンは
辛い時1人で抱えることがある時に
こんなことしたりするなぁと思った。
1人の人間のこの人らしさ。個性や性格をそういったところで表現できていて、見ているこっちも感情移入しやすかったと思う。
オレンジジュースをくれるところが心温まる。
ひどいことをした人にも優しくできる人がいて
その温かみに触れ、変われる人もいる。
憎しみあったり、信用できなくなったり
いろいろある人間関係だけど
なんだかんだでやっぱり人は人から救われることもたくさんあると思う作品だった。
涙腺が爆発した
途中まではなんかトボけた作品だなあ、悪くはないけど、そんな評価するほどかな? くらいだったけど、火事の場面、明かされたあいつの秘密に「えっ」となっている内にあれを持ち出した段階でもうウルッと来てたのにあの人が突入してきて…もう完全に爆発した。
今さらながら、アカデミー作品賞あげたらよかったのに…
確かに「シェイプ・オブ・ウォーター」はいい作品だったと思うけど、ドラマ的には完全にこっち。
風通しのいい終わり方もよかった。
残念です。
許し
ミルドレッドが三つの広告を建てたことによって物語は進行していく。この映画は目的云々ではなく、人間の感情にフォーカスしている。
登場するキャラクターは忠実に描かれていて、個性的な面々が並ぶ。そんな彼らの心境に変化をきたすのだ。
彼女の建てたスリービルボードをきっかけに。
まず始めにミルドレッドは自分の娘がレイプ殺人事件の被害に遭い、一向に解決の糸口を掴めない警察に対しての当てつけとして、三つの広告を建てるよう広告屋のレッドに申し出る。
これが全ての始まりだった。
しかし、責任を押し付けたビル署長は重い病気を患いながらも勤労で、地元の人からも親しまれる人格者であった。そんな彼が突然自殺してしまう。そうなることで、ミルドレッドにとってのある種の復讐は呆気なく完結されてしまい、途方に暮れる。
ビル署長の遺書には、ミルドレッドの攻撃に対しての「許し」が含まれる内容が記載されていた。
ミルドレッドはこれを読み涙する。
娘に対しての仕打ちや彼女に放った一言に対する後悔や自責の念に押しつぶされそうになる姿など、それまでにもミルドレッドの人情が読み取れるシーンはいくつか描かれている。彼女は感情的で怒りっぽい性格だが、まったくの冷酷というわけではないのだ。
だが、ここで新たな復讐が始まる。
ビル署長を慕っていたディクソン巡査が、以前から嫌っていた、尚且つビル署長の死に直結する(実際にはそうではない)原因ともなりうる広告屋のレッドを窓から突き落としてしまうのだ。そうしてディクソン巡査はクビになる。
そんな中、何者かによって広告が燃やされる。
これを署長が自殺した原因が広告にあると(勘違い)した警察や町の人間による仕業だと(勘違い)した(実際は元夫のチャールズ)彼女は、警察署を燃やしてやろうと計画する。これもまた復讐である。
また、観客をあたかもディクソンが放火の犯人であるかのようにみせる演出もうまい。
ビルからの遺書を受け取るために警察署にいたディクソンは恩師からのメッセージを読み、心を打たれる。
そんな中、ミルドレッドによる放火で火傷を負うディクソンであったが、すべての引き金となった事件のファイルを彼は大事に持ち去る。ここで彼に変化が訪れる。
ミルドレッドも放火をする直前に、ディクソンの存在を確認し、電話を二回かけるという行動。そしてあの表情。そこには憎しみに満ちた姿は少し薄れていた。
そして、大事に持ち去ったファイルを見たとき、彼女の心境は大きく変わったことだろう。
火傷を負ったディクソンと偶然病室で居合わせたレッド。彼は正体を知らぬまま重症のディクソンを気遣う。
レッドは火傷の相手が自分に暴行し怪我を負わせた張本人であると知り、ひどく動揺するが、そんな彼を「許し」、オレンジジュースを渡す。
ミルドレッドもまた、偶然レストランで元夫のチャールズと居合わせる。そこで広告を燃やした犯人が自分だと打ち明けられ、一度は席を立つがこれまた「許す」のである。
結局真犯人は分からないままだったが、レイプ犯の疑いがある人物を捜索しようと車を出す最後のシーンでも、ミルドレッドは警察署放火の犯人が自分だと告白するが、ディクソンは「アンタ以外に誰がやる?」と言って「許す」のだ。
こうした「許し」の連鎖が「復讐」の連鎖に歯止めをかける。最初の頃は、男のDNAを採取して事件があればそれを照合して一致した犯人を殺せばいいなどと、破天荒なことを言っていたミルドレッドだったが、ラストではレイプ犯を殺すかどうかを問われ、「あんまり」(吹き替えでは決めてない) に続けて「道々決めればいい」と答える。これはディクソンにも通ずる。二人は「許し」を経て「許し」を得た。
それは"怒りは怒りを来す"のではなく、"許しは許しを来す"のだ。
火を連想させる赤が多用されたことの印象効果。
ミルドレッドが神父の汚職を非難したシーンからとれる警察にも通ずる部分。なんの意図もなくあのシーンを加えるのか? それはつまり真犯人はやはり……?
脚本もさることながら、役者陣の演技や音楽も秀逸で、どれをとっても素晴らしい。
ブラックユーモアもあって笑って泣けて、人間の心に可能性を垣間見た心に染みる本当に良い映画でした!
賞云々知らずに観たら
自分としては久々の良作。
娘をレイプされた上に焼き殺されたシングルマザーの怒りから始まっていくのだが、そこから関わっていく人間とその人物の立場、心情をゆっくり見せていってくれる。
そもそもはレイプ殺人の犯人が一番悪いのであるが、行き場のない怒りで警察署長を非難する看板をブッ立てる母親ミルドレッド。
このあまりにも重い非難の看板が署長ウィロビー、部下ディクソン、看板屋ウェルビー…と関わる人物全てに影響を与えていく様はじんわりと進んでいく悪夢のようだ。
犯罪被害者遺族の想いは取り上げられる事が少ない理由も分かるが、悲しみに対してどう折り合いをつけるのかは様々で、ミルドレッドは復讐に燃えて法を越え、息子は忘れたいと苦しむ。
対して署長ウィロビーの苦悩も大きい、責任者として受けて立たねばならず、部下達は人種に差別的、暴力を振るう問題警官が多く、自身も末期ガンで余命少ない状況で事件もガンも解決困難、吉本新喜劇でもない限り都合よく解決しない。
出てくる人々は全くの善人ではないが、著しく悪人でもない普通に市井で暮らしている人たちばかり、ボタンの掛け違いが連続して物語が各々に重苦しい気持ちになっていく様が理解できる。
その結果、物語を追っていく観客として、それぞれの気持ちに共感してしまい、落とし処をどうしたらと悩んでいる内に物語に変化が起こるため、「これからどうするんだ?」と次の展開を追わされてしまう。
ラストは衝撃ではないが、行き場のない怒りの向けようとしては納得出来る。
この展開が嫌いな人には勧められないが見応えはあった。
西部劇版ハンムラビ法典
フランシス・マクドーマンドが終始 作業着+野暮ったいポニテにバンダナというまさに現代版カウボーイみたいな格好で、迷い人くらいしか通らないと言われる道の先にある街で起こる復讐劇。これはまさに現代の西部劇。3枚の看板をきっかけに負の連鎖の火蓋が切って落とされ、まるでハンムラビ法典のように、やって、やり返される。陳腐な言い方になるが「辛い目に遭うとはこういう事」と学び負の連鎖を知る。どこで断ち切って人を赦すかが自分次第だ。ケイレブ演じるレッドが悪意も無いのにミルドレッドの助けになったばかりに自己中レイシスト警察のディクソンから暴行を受けたにも関わらず、大火傷を負って病院で再会したディクソンに腹を立てながらも一杯のオレンジジュースを差し出すシーンがこの映画の象徴だと思う。怪我で痛む手でストローの向きをディクソン側に向けるシーン、涙無しにみられなかった。
負の連鎖が間違いだと分かっても立ち止まれない者もいる。ウィロビーが末期癌と知りながら看板を出した時点でミルドレッドの決意の深さは相当なものと分かるけれども、残されたものたちの喪失感や憤りに触れてゆく中で別の道をいつか彼女は見つけるのかも、と思わせるラストが凄くじんわりした。
個人的には間違いなく今年イチの映画だと思う。
思ったよりよかった。腐りきった街、腐りきった警官。。もっと仕事しろ...
思ったよりよかった。腐りきった街、腐りきった警官。。もっと仕事しろよ!から始まり。。何だか共感できる人が出てこないぞ~。。上品のかけらもないバカ親バカ息子、ゲスな人。クレイジー過ぎる。性格も感情も読みにくいキャラクター達(^o^;)そんなに人って何かがあって変わるものなのか、後半は優しくなったりします。間違ってるかも知れませんが私が思うに自殺した所長も黒人の所長も逮捕できない犯人だと知っていたんじゃないかな。軍関係者だというヒントを与えバッジも付けず捜査しろと言ったのは。。。自分たちは逮捕できないって思ったから。。とか。。。妄想しすぎかな。。何せ終わりかたが。。えって
やっと見れた
何が正解なんだろう、、と終わったあとに考えた
人それぞれにストーリーがあり
何を行うことが正解なのか分からなかった
しかし、最終的には3つのビルボードを作ったことで物事が発展していった。子供をレイプで殺された母親の心境、ガンで死んでしまう前に自殺した署長の心境、大切な署長が死んだ部下の心境、とにかくたくさんの人の気持ちが入り混じっていて見てて何人もの人の心に移入しているような気持ちになった。あっという間に見終わってしまった。最優秀主演女優賞を獲得したのも納得の演技だった。ぜひ沢山の人に見てほしい。
自分のこともあなたのことも、まだまだ知らない。
スリービルボードにはやられたのです。はいはいこういう人ね、と思いながら見ていた先入観をぐわんとぶっ飛ばされ衝撃を受けました。
私はまだまだ無知。自分のことも、人のこともまだまだ知らない。そう思いました。
知っていたけど、人は一面ではなく、美しさ、脆さ、強さ、弱さ、醜さなどをまだらに抱える切ないいきものだ、ということを改めて突き付ける物語です。
ほとんど地獄であるこの世界から、生きていくために胸に留めておきたい希望ってやつを、あたしはスクリーンから見つけたいんだ、と改めて思いました。
被害者遺族の見せる傲慢。小者な刑事が人の優しさに震えて良いことをしようとする瞬間。部下思いで家族思いだけど彼が選択したのは自殺。
ミルドレッドにも、署長にも、ディクソンにも、わかるよという気持ちと、それはあかんのじゃない?と思う気持ちとがあって、総合すると愛おしくかんじる。
ディクソンはスリービルボードで出逢わなければ毛嫌いして終わりの人物だけど、こうやって描かれると、彼に寄り添いたい気持ちがする。脚本の妙なんだろうかね。
特に支配的なママとの関係辺りに。
成人男性が、力で絶対ねじ伏せられる(やったらあかんけど)老親のいいなりになってしまう程の虐待って、相当だと思う。対決したら勝てるのに、やろうとする地点に立てない程、自分を認められないディクソンが、家の外で悪態を吐く。これは必定。避けられない。
ディクソンが署長の手紙を読んでいるシーンと、入院先で自分が怪我させた広告社の彼(彼かわいい)にオレンジジュースをもらって、あってなったところが、忘れられない。
砂漠で見つけたオアシス?地獄に仏?そんなやつ。
ミルドレッドとディクソンが旅立つラストはきらめきを感じた。向かう先に何があろうとこの旅立ちをえらんだあなた方は多分何かに勝利した。
ミルドレッドのひとりになるとちょっと乙女な感じで、よかった。
皮肉と空回りの連続
娘をレイプされ殺された母親、人種差別する白人警官、ガンで余命少ないけど愛されてる警察署長。
19歳に鞍替えした元旦那、広告屋の兄ちゃん。
わかりやすく威嚇しにきた強面兄ちゃん。
どんどん話が進んで、色んな人が絡み合って空回って、放火したり、窓から突き落としたり、ハイテーブルを星一徹ばりにひっくり返ったり、わちゃわちゃしながら進行する。
署長の自殺も衝撃だったけど、広告費を払ったり、権力には逆らえなかったけど、続けることで何かが変わるんじゃないか、っていう希望なのかなとも思った。
署長の後任の黒人署長が、権威の言いなりでえーーーー?!って思ったけど、結局人間は肌の色や立場は何も関係ないのね、と思わされる作品だった。
最後、始末しに行こうと思ったけど殺すかどうかは追い追い考えよう、というラストに希望を感じた。
小男が、ゲームオブスローンズのティリオンで、ああ、ここでもお前はいいヤツだな、としみじみしたなぁ。
遺書
犯人捕まったら、「犯人捕まったよ。ありがとう署長」とか広告だすのかな〜!?とか観賞後思いました。
金銭的にはワザワザそうするのは難しいでしょうけど。
暴力する心理を考察したくて作品を観たんですが、考察する為の内容はなかったような。
条件反射的に暴力する、それを抑止するのは署長の遺書だったりするわけで。
遺書では、警官を褒めてどう行動を改善していけば良いのか(確か)書かれていました。
「愛」が警官の反射的暴力性を変えた、みたいなところでしょうか。
怒りの捨て場所
ミズーリーの片田舎、妙にリアリティのある住人達が織りなすサスペンス風人間ドラマ。もっともらしい常識、権威に対する主人公の舌鋒が冴えわたる。映画としてよくできているのだがサスペンス手法で考え落ちは卑怯だと思うので辛目の評価。ミズーリーからアイダホまで2500Km、ちょっと出かける距離じゃないし、そこから先が見たいのね、一件落着してくれないと引きずるから・・・、そこが狙いか?
スリー・ビルボードとスリー・レター
アカデミー賞や各映画賞で絶賛されたサスペンス・ドラマ。
それも納得、強烈にインパクト残る力作であった。
ミズーリ州の田舎町。
何者かに娘を殺された母親が、一向に捜査が進展しない警察へ対して、抗議の3つの看板を立てた事から…。
マーティン・マクドノーの巧みな演出と脚本がまず見事!
立てられた3つの看板から始まる人間模様。
怒り、悲しみ、暴力の連鎖と波紋が広がっていく…。
予測不能な話の展開に本当にグイグイ引き込まれた。
唐突なバイオレンスとヘビーなドラマの中に、ついクスッとなってしまうブラック・ユーモア。
と共に差別などの社会の闇も浮かび上がらせ、もう一度言うが、その語り口が本当に見事!
マクドノーが監督賞ノミネートから落選したなんて、嘘でしょ!?
パワフルな言動のパワフルな母親、ミルドレッド。
フランシス・マクドーマンドのパワフルな熱演!
終始しかめっ面で、周囲の批判や権力にも屈しない。まるで、女イーストウッド!(西部劇風の音楽や雰囲気もさらにそれを連想させる)
ふとした瞬間に悲しみも滲ませ、その激しさと繊細さの名演には圧倒されるしかない。
勿論主役は彼女だが、話を動かしたのは次の二人。
人種差別主義者でマザコンで暴力的な地元警察の巡査ディクソン。
最初はこの男が大嫌いだった。本当にクズ野郎。
しかし、ある事をきっかけに、この男が劇的に変化する。クズ男の中の“正義”が目覚め始める。
最後はもう、彼が好きになっていた。
役者冥利に尽き、役柄も旨味たっぷり。
オスカーはウィレム・デフォーを応援していたが、こりゃサム・ロックウェルが獲るわな。
ミルドレッドに名指しで批判された警察署長ウィロビー。
悪人やクセのある役柄が多いウディ・ハレルソンが、愛妻家で良き父親、人望も熱い善人役。
末期癌で余命僅か。
その苦悩、そして彼のスリー・レターに心揺さぶられた…。
本当に本作は、各々の感情、ぶつかり合い、刺激し合い、やがて相乗し合う人間模様が素晴らしかった。
ミルドレッドの怒り、悲しみには同情する。
本来ならそれは憎き犯人へぶつけるものだが、もし自分に同じ事が起こったら、分かってても、何もしてくれない警察へ怒り、悲しみをぶつけてしまうだろう。
全力を尽くすと約束してくれた警察なら、この怒り、悲しみを分かってくれる。
それなのに…。
強行手段。
そのせいで息子は学校で嫌がらせを受ける。
確実に犯罪である暴挙をも犯す。
それほど娘と仲良かった…という訳ではない。最後は喧嘩別れ。
看板は、そんな自分への後悔。
また、警察へ対してただ怒りをぶつけただけでもない。
看板が立てられてすぐ、ウィロビーがミルドレッドに会いに行く。
ウィロビーはミルドレッドに看板を立てた理由を聞くと共に、自分が末期癌で余命僅かである事を告白する。
すると、ミルドレッドは知っているという。
そう、つまり、ミルドレッドはウィロビーを信頼し、期待しているのだ。
彼なら、必ず犯人を逮捕してくれる、と。
それ故の叱咤激励。
無言で訴えたミルドレッド、それを汲み取ったウィロビー。
この時の二人のやり取りが非常に良かった。
が、ウィロビーは死ぬ。
自ら命を絶つ。3通の手紙を残して。
一通は、愛する家族へ。自ら命を絶った理由が語られる。
二通目は、ミルドレッドへ。彼女が看板を立てて自分へ叱咤激励してくれたのなら、自分もこの手紙で。謎の看板の広告料も実は…。負けるな!
三通目は、ディクソンへ。これがね、実に目頭熱くさせるのよ…。
どうしようもないロクデナシのディクソンだが、彼はウィロビーを敬愛していた。
ウィロビーもまた彼の善良な心を信じていた。それは間違いなかった。
燃え盛る警察署内から、ミルドレッドの殺された娘の捜査資料を文字通り身体を張って守り抜く。(火を放ったのはミルドレッドなんだけどね…(^^;)
そして、あるバーで…。間違いなく、彼がロクデナシから本当の警官になった瞬間だ。
大火傷して入院した病院で、同室となった相手は…。出されたオレンジジュースの味はきっとしょっぱかっただろうが、グッと胸を鷲掴みにされた。
ラスト、車の中で、憎しみや確執を乗り越えたミルドレッドとディクソンのやり取りも最高に良かった。
3つの看板が事の始まりなら、それぞれを大きく突き動かした3通の手紙。
スリー・ビルボードと、スリー・レター。
ラストのミルドレッドとディクソンのある決断と行動は間違っているかもしれない。
当人たちの事件には何の関わりもない。
でも、今ここで、何もしないでいるなんて、もう出来ない。
行き場の無い怒りと悲しみの先には…。
正義か否か、希望、当初とは全く正反対の感情が交錯し、ズシンと響きつつ、うっすら感動すらさせられた。
これは非常に良かった!
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