スリー・ビルボードのレビュー・感想・評価
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コーエン兄弟が『火の鳥 鳳凰編』をやってみた in アメリカのド田舎
『スリー・ビルボード』観た! 「これはすげー」っていう感動とお腹が痛くなるほどのヘヴィさのハイブリッドでクラクラしちゃう。
物語の真ん中にあるのは、3つの看板広告、手紙、そして会話。言葉というものの強さゆえの怖さと滑稽さがめちゃくちゃ痛いのよ。それは「伝える/描写する」だけではなくて、時には現実さえも追い越してしまう手のつけられなさだったりする。
〝コーエン兄弟が『火の鳥 鳳凰編』をやってみた in アメリカのド田舎〟的な衝撃。因果応報ですらないのです。ヤバいね!
いい映画ではあるけど
作品としてはよく練られたいい映画だと思うけど、やるせない気持ちをよりいっそうやるせなくさせてしまう作品でもある。
なにか辛いことがあったとき、誰もが潜在的に持ちうる感情があって、それを乗り越えることができなければ、人はこうやって堕ちてゆくのかな。
いろんな賞を受賞しているので、賛辞を惜しまぬコメントが増えるだろうけど、あくまでも「感情は表現しても構わない風潮」がある欧米ならではの映画賞。なぜならキリスト教が心底ある社会では、露呈された感情は神への懺悔であり、露呈し認めることによって許される、と考えるから。
逆に仏教的に自ら感情を抑えて乗り越えていくことを重んじる日本社会では、この映画を反面教師的に捉えられなければ観ない方がいいんじゃないだろうか。特にこの主人公のように自分の被害と関係あるともわからない人々を復讐のターゲットにするのは日本人的には論外でしょう。
たしかに重い苦しみを得たとき、いろんな人にもっとわかって欲しいと思うものだし、それに関わってる人に責任を追及したくなる。でも、実際には自分が考えている以上にその人たちは深刻に受け止めてくれているし、過剰な期待は逆効果になりがちだ。
もちろんこの主人公が経験したほどの苦しみは経験したことはないけど、彼女と比すれば小さな苦しみであっても、黙って時が過ぎるのを待つしかない時期があるんだろうね。
そういう意味で人の苦しみを理解する上ではいい脚本なのしれない。
憎しみ合いの果てに
脚本が良くできてるが
アカデミー好みのストーリー
愛と憎しみは表裏一体
憎しみは憎しみを生む。
雪だるま式にあっという間に巨大化しエスカレートし続けるそれは、それぞれの正義の名のもとに存在している。
この映画にはヒーローもヒロインもいない。
登場人物は良くも悪くも私たちと同じ普通の人間だ。みんな完璧なんかじゃない。
私たちだって、こうしているうちにも愛する人や守るべきものがあるがゆえに、時として狂気に満ちた憎しみを生みだしてしまう可能性がないとは言えない。
愛と憎しみは表裏一体。
にもかかわらず憎しみは憎しみしか生まない。
しかし愛と優しさは凍りついた心を簡単に溶かしてしまうパワーを持っている。
ラストシーンでのミルドレッドとディクソンとのやりとりは、何気ない中にも優しさが溢れていてなんとも言えず温かい気持ちにさせられた。
まだ何も解決はしていないけれど、やっと肩の荷がおりたような2人の安堵の表情とミルドレッドの笑顔がとても印象的で、今後の明るい未来を示唆していると感じた。
人間性を試されました。
自分がどれだけ浅い心の持ち主であるかが露呈された展開でした。
ことごとく物事や人を一時の表面でしか見ていないんだなと。
決めつけや思い込みがどれだけ己の人間性の豊かさを止めてしまっていることか。
自分の感情が最優先で何が悪いのかって情けないやらそれが本音だと開き直るやら。
自分を試された映画でした。
私はてっきりあのオレンジジュースを渾身の憎しみを込めて火傷の体に注ぎ垂らすものだと。
そしてヒリヒリもがき苦しむ姿を想像して観ていました。
もし自分だったらそうしていたかもしれない。怒りの興奮を制御できなくて。
でもそうではなかった。
裏返ってもがいている虫を何事もなくそっと元に戻してあげるミルドレッドの優しさを
私も取り戻さなければと反省したのでした。
不寛容に満ちたアメリカ
アメリカはメイフラワー号での上陸以来、フロンティアスピリッツという名の先住民虐殺を経て建国し、農業のための奴隷をアフリカから大量に輸入した歴史を持つ歪んだ国である。差別と殺人がアメリカの特徴なのだ。その歪んだ国の中でも特に差別の激しい片田舎を舞台にしたのが本作品である。
ムラというのは村八分という言葉に代表されるとおり、共同体の利益や風習に背くものを迫害する。価値観の多様性を認めず、異分子の存在を許さない一元主義なのだ。アメリカは国全体がムラである。しかも銃社会である。銃を使って異端を排除してきた歴史がアメリカの精神性に深く刻み込まれている。
登場人物たちは根っからの悪人という訳ではないが、ムラ全体を覆う差別意識と一元主義に人格をスポイルされていて、他人を許さない人間ばかりだ。しかし物語が進んでいくと、少しずつ互いを認め合う部分が現れてくる。まだまだ希望と呼べるほどの代物ではないが、僅かながらその兆しはある。
自分だけ得すればいい、今さえよければいいという、不寛容に満ち満ちた現代のアメリカにあって、この映画の存在価値はもしかすると大きいかもしれない。
黒と赤の看板
罪と赦し
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