スリー・ビルボードのレビュー・感想・評価
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圧巻の人物描写
流石の本家アカデミー賞ノミネート作品だった。
娘を殺された母親が3つの巨大な看板を出すことで静かな田舎町で巻き起こる人々の様々なドラマ。その複雑な人間関係の人物描写がほんとに素晴らしいですね。
主人公の母親と息子、警察署の人々、別れた旦那、その他の人々が静かな物語のうねりに密やかに飲み込まれていく様、その見事さは圧巻だった。
フランシスマクドーマンドの感情を昂ぶらせない芝居でビンビンと伝わってくるその芝居の素晴らしさ。
ファーゴ以来久しぶりに観た気がするのだけど、名女優さんなのに映画あんまり出てないのかな?それとも日本に彼女の作品がこないだけ?
掲げられたビルボードとは
マーティン・マクドナー監督作品は今回初。
アカデミー賞ノミネーション速報で、この作品が複数の部門でノミネートしているのを見て「これは早めに観ておかなくては!!」と思い、公開も2月前半なので早速観てきた。
観終わった後、充実した二時間を過ごせたと感じたし、今年のアカデミー賞にノミネートされるのも納得の秀逸な作品だと思った。
予告編を観た時点では、自分の娘がレイプされ殺されると言う残忍な手口の犯罪なので、もっと湿っぽい感じの作品を想像してたんだけれど、主人公のミルドレッドが哀しみよりも犯人への怒り、犯人を捕まえられない警察への怒り(その源は娘を徒歩で行かせてしまった自分の贖罪なんだろうけど)が強く、ミルドレッドが悲しむシーンはあるものの、彼女のタフさが逆に辛さを感じさせて、泣いてる割合はこっちの方が多かった気がする。
ミルドレッドが家にやって来た神父に対して、過去にギャングを縮小させた法律を例に出して、"教会もギャングと対して変わらないのだから、知らぬ存ぜぬでも責任を取らねばならない"と言ったのは『スポットライト』で取り扱われた事件にも関連するのかな?
そのシーンを見た時に未だあの作品を観賞してないことを後悔した。
その時ミルドレッドは教会を例に出したけど、去年のハリウッドの騒動を見ているとハリウッドの事のようにも見える気がする。
中盤のディクソンがエビング広告社に乗り込んでいくワンカットシーンは、技術的に凄い、素晴らしいのは当然として、あの事が起こってしまった後の"ディクソンのやり場のない怒り"を共に体験する、緊張感溢れるシーンだったと思う。
ディクソンは中盤のあるシーンまで耳にイヤホンを着けているけど、それは"人の話に耳を貸さない"って暗喩になっていて、あのシーンをきっかけにイヤホンを外し、変わり始めていく(人の声に耳を貸す)ってのも良い演出だったし、その後のレッドウェルビーとのシーンも"坊主憎けりゃ袈裟まで憎い"ならぬ"坊主憎くも親切を返す"シーンになっていて、昨今SNSの炎上案件を見ていると前者しかいない様な考えにとらわれる中、ウェルビーの行動には思わずウルッと来る、素晴らしいシーンだった。
その全ての演出が上手くいってるのはメインの三人を始め、脇を固める役者陣もノンフィクションかと思うほどの実在性を感じさせてくれる素晴らしい演技もあってこそだし、この作品を観終えると、出て来るキャラクターが人間臭くて好きになってくる最近の作品では珍しい印象の作品だった。
また筋書きだけ聞くとそこまで響かなさそうなストーリーにリアリティや説得力を持たせた脚本や、それをバランス良く配置した監督の手腕も見事だったと思う。
パンフレットの町山さんの評を見て"炎が怒り"であることや、ディクソンが同性愛者だった事に気づいたんだけど、それ以外に通りのビルボードに貼られたメッセージは、今現在観るとSNSの書き込みがバズり、(展開的にも)炎上していく様子にも見えてくる。
感想の中には"看板の表の面と裏の面がある"ってものを見かけるけど、個人的には裏まで見ようとはせず、表面を流し見して叩く、炎上させるって言う現在のSNS社会の我々を批判しているようにも見えてくる。
最後のシーンが途中で終わっているのは、ここまで観てきた観客にはあの二人の往く道を全て映さなくても信用して送り出せるだろう、って意図があると思うんだけど、個人的には今までの話が昨今のアメリカやハリウッドの状態のメタファーで、あのシーンが"現時点の状況"、"ここからどうするかは私たち次第"って言うメタファーにも見えた。
重く、深く、じわじわと心に染み渡る名作
CG全盛で現実とはかけ離れた境遇の主人公が冒険し空想の快感を与えるオナニー映画が作られ続ける一方で、どこにでもあるリアルを用いたほろ苦く哲学的でニヒルで静かな名作が毎年1つぐらいは生まれる。
昨年はこの映画かな。
一昨年は「マンチェスター・バイ・ザ・シー」。その前は「フレンチアルプスで起きたこと」
こういう映画こそ、本当に怖く、救いのない境遇を私たちに示し、その中での本当の救いとは何なのか?を教えてくれるものだ。
本作。地味そうだったので、退屈しないかどうか心配したが、めちゃめちゃハマった。
能力や見た目に関係なく、世の中を上手く生きる事ができない人はいる。そんな生きる事が苦痛でしかない人に向けた静かな癒しの映画。
登場人物達のどん底っぷりが、日常的にどこにでもありそうなリアルな(差別を受けているわけでもなく、マイノリティでもなく、障害者でもなく、人に言えない特殊能力があるわけでもなく、凄い貧困なわけでもなく、凄い過ちを過去に起こしたわけでもなく、ごく普通の人間の行き場のない)感じで、見入ってしまった。
この映画の中で、最終的に本当に心を通わせてるのは、あの3人だけなんだよね。
特に、ガンを患っていたあの署長とその奥さんの間の、全然心が通じてない感じが凄く嫌だった。怖いっすねマジで。
でもまぁ人生ってそんなもんなのかもしれない。
主人公はそんな鬱屈した境遇を遂に抜け出すことを決意する。ラストは清々しい。
こういう映画の良さがわからない人は、将来本当に救いようのない困難に直面したと思った時に、この映画を観て欲しい。きっとこの映画は、あなたに癒しと勇気を与えてくれるはずだ。
「褒めないとバカにされる」雰囲気
”怒りは怒りを来す”
なんかいろいろと考えさせられる映画でした。
ストーリーの核でもある看板とそのメッセージによってみんなの心に問いかけるという方法はとても巧みでみんなの心に訴えるのに一番効果のあるものだと思う。でもそのメッセージの内容やウィロビー署長に対する気持ちによって反対する街の住人、対して娘を殺された母親の心の叫び、この葛藤が心を締め付ける。この映画の予告を観たときなぜか知らないけどウィロビー署長は悪人だと勝手に思い込んでた自分がいて、実際観たときに凄く良い人間で街の住人が庇う気持ちが凄く伝わりました。だから一層娘を殺された母親とウィロビー署長を想い反対する街の住人との争いが観てて心が痛かったです。そして家族を想い自殺をするウィロビー署長、死ぬ前にそれぞれに宛てた手紙、その手紙によって救われたミルドレッドとディクソン。ウィロビー署長が居たからこその物語の結末だったと思います。本当にウィロビー署長様様でした。最後の犯人が違ったのがちょっと残念でしたが。。
個人的に「怒りは怒りを来す」ってセリフが凄く印象深くて、実際に映画の中でもそういうシーンがあったりしてとても心に残りました。
良い映画でした!
これぞアメリカ映画
なんと言ったらいいのか…
滑らかな脚本にほれぼれ
何度観ても後を引く
人間くさい魅力が凝縮の一本。
俳優たちの名演に彩られ
珠玉の脚本が輝いている。
あと一度くらいは劇場へ足を運びたい。
脚本賞もいけると思ったんだけどな
おめでとうサム・ロックウェル
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2018.2.27 TOHOシネマズ日本橋にて2回目
サム・ロックウェルに
心の底からからアカデミー賞を
とってもらいたい。
こんなに複雑で見せ所の多い役って
そうそう出会わないのではないか。
重そうなお腹抱えて
大仰に見えるのに
実は外連味なく演じてる姿には
笑わされうるっとさせられ
個人的に拍手喝采してました。
この群像劇
半端なくいとおしい。
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2018.2.13 TOHOシネマズ日本橋にて1回目
冒頭からラストシーンまで
画面に目が釘付けだった。
怒りにかられた人々の
表も裏も生き生きと描かれ
善悪の尺度がその都度ぶれていく。
俳優たちひとりひとりの怪演が
心に焼きついて離れない。
マクドーマンドの潔さ
ロックウェルの小物さ
ケイレブの胡散臭さ
…また観たくなってきた
さすがトロント観客賞だわ。
世界のどこかで
傑作
娘をレイプされ燃やされ殺されたミルドレッドとイラクやシリアの女性達が重なりました。粗暴なディクソンとトランプを支持するラストベルトの男性達が重なりました。この作品の登場人物はアメリカ、そして世界中の『今』を象徴するかの様に怒りに突き動かされています。
劇中「怒りは怒りを来たす」という台詞がでてきますが、ミルドレッドとディクソンの怒りは根本的に異なると思いました。それは、怒りを向ける相手です。ミルドレッドの怒りは、娘を殺され解決しようとしない警察という権力に向けられていますが、ディクソンの怒りはそもそも劣等感であり、自分より弱い者に向けられています。
だけどディクソンが変わったきっかけになったウィロビーからの手紙とオレンジジュースは、こんな自分でも他者から認められたと心から感じたからだと思います。逆を返せば、トランプを選んだアメリカは他者から認められていないと思っている人が多いのではないでしょうか。
レイプ犯の元に向かおうとするラストシーンは、イラク戦争を起こした国家権力に対する強烈な怒りを表している様に感じました。レイプ犯の司令塔は軍隊、つまり強大なアメリカ国家です。ミルドレッドとディクソンに怒りを与えていた根本は身近な人間などではなく、実は強大なアメリカ国家ということなのかも知れません。
この作品を鑑賞して思ったのは、「怒ってはいけない」ということではなく、怒りを向ける先を間違えるなということです。ミルドレッドとディクソンの顔が憎しみから笑顔に変わった時に、「スリー・ビルボード」は間違いなく映画史に残る作品だと確信しました。
リアリティーは高いが映画としてはどうか
不思議と魅力的な作品。
アカデミー受賞間違いなしの傑作!
レビュー
怒りが怒りに来す
『RAPED WHILE DYING』 殺されてからなのか、殺されながらなのか、とにかく今作品、社会状況や裏メッセージ的な知識が無いとストーリーの内容が100%理解出来ない構成になっているのである。多分、作品のパンフを読まないと把握できないシーンが大事だったりするのである。例えば、警察署長と部下との関係性に同性愛的な匂いがするところは、シーンでは全然匂わない。しかし、ABBAのチキチータを聴いてるシーンからそれを嗅ぎ取る事とか、相当難解な解釈を要求される作品なのである。
そういう自分だって、上記はネットで知識を得た位で、実際の鑑賞後の感想は、とにかくアメリカ女は怒ってばかり、カルシウム足りないんじゃないかって位、アングリ-なのだってイメージだけ植え付けられたことのみである。まぁただ、きちんと相手を赦す度量の深さや、相手を尊重する事も又、アメリカ人ならではある。今作品、それのメーターが吹っ切っているところがドラマ的なのではあるが・・・
ラスト、母親と部下の元警官が二人でアイダホへレイプ魔を殺しに旅に行く展開での、道中で殺すかどうか考えようとの結論は、或る意味、ハッピーエンドなのかもしれない。なにせそこまではカッとなったら直ぐ行動に移すダイナマイトな連中ばかりだしね・・・
息子や、小人症のメキシコ人の冷静さや優しさの部分を、ラストベルトの連中共は忘れてしまってるんだろうねぇ・・・
アメリカへの皮肉満載
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