劇場公開日 2018年2月1日

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「いい映画ではあるけど」スリー・ビルボード キリンさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0いい映画ではあるけど

2018年2月24日
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作品としてはよく練られたいい映画だと思うけど、やるせない気持ちをよりいっそうやるせなくさせてしまう作品でもある。

なにか辛いことがあったとき、誰もが潜在的に持ちうる感情があって、それを乗り越えることができなければ、人はこうやって堕ちてゆくのかな。

いろんな賞を受賞しているので、賛辞を惜しまぬコメントが増えるだろうけど、あくまでも「感情は表現しても構わない風潮」がある欧米ならではの映画賞。なぜならキリスト教が心底ある社会では、露呈された感情は神への懺悔であり、露呈し認めることによって許される、と考えるから。

逆に仏教的に自ら感情を抑えて乗り越えていくことを重んじる日本社会では、この映画を反面教師的に捉えられなければ観ない方がいいんじゃないだろうか。特にこの主人公のように自分の被害と関係あるともわからない人々を復讐のターゲットにするのは日本人的には論外でしょう。

たしかに重い苦しみを得たとき、いろんな人にもっとわかって欲しいと思うものだし、それに関わってる人に責任を追及したくなる。でも、実際には自分が考えている以上にその人たちは深刻に受け止めてくれているし、過剰な期待は逆効果になりがちだ。

もちろんこの主人公が経験したほどの苦しみは経験したことはないけど、彼女と比すれば小さな苦しみであっても、黙って時が過ぎるのを待つしかない時期があるんだろうね。

そういう意味で人の苦しみを理解する上ではいい脚本なのしれない。

キリンさん