「怒りは怒りを来す」スリー・ビルボード Movieアパートさんの映画レビュー(感想・評価)
怒りは怒りを来す
見終わった後にこの映画で起こったことを冷静に振り返って見たときに よくこんな話がすんなりと飲み込めたな と驚いた
作品のトーンは割と淡々としているけども起こることはとにかくジェットコースターそのもの
ふと気付くと状況が180度転換していて人間関係から何から何まで大きく変化し続けるし、その度に物語が向かう先も予測がつかなくなる
そんな、普通ならあっと言う間に置いてけぼりにされそうなお話なのに最後まで一本の美しい線で見る側を導いてしまう脚本力はとにかく圧巻だった
タランティーノの影響を多大に受けていると公言しているそうだけど まさしく まずはこの驚異の脚本がこの映画最大の魅力だと思う
また素晴らしいのは、単に映画を面白くするためにジェットコースター化することが目的なのではなく、この脚本のテーマとジェットコースター性がとても密接に関わっているところ
端的に言ってこの映画はとにかく 人間の多面性というものがいかに人間を希望溢れる生き物にしているか というお話だったと思う
人間と付き合うのは誰もが知っている通りかなりめんどくさいし、実際 この人はこういう人 という一面的なレッテルを貼るだけで、人間関係を成立させた気になってしまうというのは誰しも経験があるとことだと思うけど、この映画はそういう安易な決めつけでは無い、相手のことをより深く知って行った先に生じる物を見せるからこそ ジェットコースター性が必然的に生まれるのだ
相手をのことよく知り考えてみる という行為が 遺書やそっと差し出されるオレンジジュース を通して繊細にでも確実に人の心を温めていく様子は見ててとても感動的だった
そして 登場人物はもちろん見る側すら バカ のレッテルを間違いなく貼っていた、ある女の子から語られる 怒りは怒りを来す という言葉で作品に一本の芯を通させて見せる鮮やかさ
アカデミー賞を賑わすのも納得な一本だった