劇場公開日 2018年2月1日

  • 予告編を見る

「中盤の大仕掛以降は誰にも想像できない!」スリー・ビルボード ヒートこけしさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0中盤の大仕掛以降は誰にも想像できない!

2018年2月4日
iPhoneアプリから投稿

凄まじい脚本!皮肉交じりの言葉を紡ぎながら予想を裏切り続ける展開のツイストが見事!特に中盤のある意味『L.A.大捜査線/狼たちの街』的な大仕掛以降はまるで予想できない!怒りの連鎖が向かう先は愛だった。愛を以って赦し連鎖を断ち切る。怒りの裏には愛があったと気付く

マーティン・マクドナー監督は前作の『セブン・サイコパス』ではよくいるタランティーノフォロワーの一人にしか思えなかったけど本作ではコーエン兄弟の域に達しているとすら感じた。そういえば前作でもクリストファー・ウォーケンが怒りの連鎖を断ち切るベトナム人サイコパスの話をしていた!

実にキリスト教的な物語ではあるけど普遍的に響くものがあると思う。今年公開の作品でいうと『パディントン2』『デトロイト』も「大切なのは愛だ」と説く物語だったけどこれは偶然じゃないよな。忌野清志郎が今も生きていたら「愛し合ってるかい?」と歌い続けていることだろう。知らんけど

俳優陣も素晴らしい。フランシス・マクドーマンド演じる過激派クソババア(ババアはいらない)もサム・ロックウェル演じる「その男、凶暴につき」も複雑な心の変化を表現していたと思う。ウディ・ハレルソンも『ムーンライト』におけるマハーシャラ・アリのように「ある展開」の後も存在感を示し続けた

ほとんどの登場人物が初めに見せる顔とは違う顔を見せるあたり彼らが本当に生きていると感じられた。個人的にはピーター・ディンクレイジ演じる小男が突如見せる苛立ちが印象的だった。現実の社会には書き割り然としたキャラクターなんておらんもんな

『スリー・ビルボード』は全体的にコーエン兄弟のようなトーンでありながら中盤の『サイコ』『L.A.大捜査線/狼たちの街』を彷彿とさせる大仕掛以降は『許されざる者』よろしく登場人物が違う顔を見せはじめて最終的には予想もつかないところに着地する。それこそ『ノーカントリー』とは真逆の

そういえば『スリー・ビルボード』には多分北野武の『アウトレイジ』オマージュと思われる歯医者での暴力シーンがあって嬉しかった。マーティン・マクドナー監督は『セブン・サイコパス』でも『その男、凶暴につき』を劇中で見せたりほんまに北野武が好きなんやな

ヒートこけし