劇場公開日 2018年2月1日

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「人類の「ビルボード」としての普遍的作品」スリー・ビルボード nagiさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0人類の「ビルボード」としての普遍的作品

2018年2月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「業」の連鎖を断ち切る「愛」は「希望」をもたらす。

それは思いやりという言葉にするとあまりにチープだが、我々人間にとって、普遍的に重要なことである。それは、復讐や人種差別をはじめとする排他的思考は何も生まないことをいう。

我々の社会をとりまいているのは唯「業」の連鎖に過ぎないのではないか。その無意味な連鎖が我々の進歩を妨げているのではないだろうか。そんなことは、何百年も昔から知っているというのに。

今更思いやりという言葉を口にしたところで我々の耳には届かない。それは使い古されくたびれてチープになりすぎた。しかしそれは自らの重みを失うにはあまりに重大すぎた。

我々は「赦す」ことによって、新たな「希望」を得る。
この希望は、我々人類の進むべき道を示す「Billboard」だ。

マイノリティに焦点が当てられ、認知されるようになった昨今、それらをさらに包含する作品が『スリー・ビルボード』だ。素晴らしく魅力的なキャストで構成される本作は、間違いなく今年の重要作である。

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(追記)

「赦し」と言う深淵なテーマが宗教と全く繋がらない作品という点も個人的には面白いと思う。確かにこれは宗教という枠組みを超えた、人類普遍の概念であるからだろう。これほど大きな普遍のテーマに挑んだ監督がアカデミーにノミネートされなかったのは疑問でしかない。

この作品を方向付ける3人の「ビルボード」は言うまでもないが、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ(『Get Out』他)やルーカス・ヘッジズなど、徐々に活躍が期待される実力派ぞろいである。

nagi