「マノロ・ブラニクの人としてのチャーミングさに救われる」マノロ・ブラニク トカゲに靴を作った少年 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
マノロ・ブラニクの人としてのチャーミングさに救われる
ファッション業界のドキュメンタリーでは「メット・ガラ」の裏側を追った作品が記憶に新しいけれど、ファッション系のドキュメンタリーだと、きちんとファッションの技術やその発展を見据えた作品がある一方で、品のない似非セレブが金に物言わせて高価な装飾品を身にまとう事を賛美するような、ファッション業界の嫌なイメージが目につくような作品を見てしまうことも多くて、ちょっと躊躇する部分もあった。率直に言うとこの「マノロ・ブラニク」も最初は躊躇する気持ちの方が強かった。「セックス・アンド・ザ・シティ」で世界的に有名になったデザイナーなだけに(実績は当然のことながらそのまえに確固たるものがあった)、「SATC」にかぶれたセレブ気取り向けの人々向けに作られた映画だったりするのかな?なんて思ってしまったりした。
それでも、やっぱりあのマノロ・ブラニクのドキュメンタリーだと言われて、興味が沸かないはずがなかった。まぁ確かに、ファッション業界ドキュメンタリーにおける嫌な部分もなかったわけではないけれど、それを払拭するくらいにブラニク自身がチャーミングでユニークな人だったので、それが本当に救いだった。ただ、彼が靴づくりに対して何に着想を得てそれをどう具現化しているのか、というような、彼の靴が生まれていく道程などにはさほど興味がないらしく、とにかく「SATC」などで広く知られるようになったマノロ・ブラニクってどんな人?ってことだけを追っているドキュメンタリーに思えたのは少し残念な部分。私の個人的な思いだけで言うと、ブラニク自身にも興味はもちろんあったけれどその一方で彼の技術力やクリエイティビティこそ垣間見たかったという気もするのだけれど、それでもまぁブラニクに人間としてのチャーミングさを感じるにつけ、なんだかこれはこれでいいのではないか?と思える様にもなっていた。作り手ももしかしたら、本当はブラニクの職人としての姿を映そうとしながらも、彼自身のチャームに惹かれて彼の人となりを撮りたくなってしまったのかも?なんて。人となりを見せるドキュメンタリーって簡単なようだけれど、それはつまりブラニク自体によほどのチャームがなければ成立しえないものなのだから。
個人的に、リアーナがファッションアイコンだというのがまったく理解できない。着こなしに個性とスタイルがあるのは分かるけれど、何しろ品がないんだもの。あの笑い声・・・下品だわ。