プラハのモーツァルト 誘惑のマスカレードのレビュー・感想・評価
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プラハでのドン・ジョバンニ初演の史実に恋愛要素・三角関係を足して、まあ楽しめた
ジョン・スティーブンソン監督による2016年製作のチェコ・イギリス合作映画。
原題:Interlude in Prague、配給:熱帯美術館。
チェコは田舎の様に錯覚していて、モーツァルトがプラハで「ドン・ジョヴァンニ」を自ら指揮を取り初演した(1787年、31歳) という史実にまず驚き。前年作のオペラ「フィガロの結婚」がプラハで大ヒットし、翌年「3大交響曲」(第39番、第40番、第41番)を作曲するという、35歳で亡くなってしまう天才の才能開花のまさにピーク時が舞台。
モーツァルトと言えば、映画アマデウスの下品な輩の印象が強い。少しハンサムすぎるのは難だが、アナイリン・バーナードによるモーツァルトは普通の単身赴任の青年の様で新鮮に思えた。妻子あるモーツァルトに恋してしまう新進のオペラ歌手スザンナを演じたモーフィッド・クラークも、初々しさ一杯で魅了的。そして、それ以上に猟色家サロカ男爵演じたジェームズ・ピュアフォイが、悪いやつを説得力を持って表現していて関心させられた。
欧州上流階級の仮面舞踏会の描写には、日本には無かっただけに、いつも興味を惹かれる。
モーツァルトも映画の様に本当に舞踏会に参加したのだろうか?
モーツァルトが一夜漬けで、序曲を作曲したのは史実らしく、興味深かった。映像的には、楽器もなく凄い勢いで楽譜が書かれていくのみであったが、頭の中でオーケストラの個々の音楽が鳴っているのだろうか?どうやって作曲がなされたかは、興味深いところだ。歌劇は苦手で避けてきたが、もう少し「ドン・ジョヴァンニ」の音楽及び劇内容を知っていたら、より楽しめたかなとは思った。
製作ヒュー・ペナルット・ジョーンズ、ハンナ・リーダー、製作総指揮サイモン・モーズリー デビッド・ミンコフスキ、 マシュー・スティルマン。
脚本ブライアン・アシュビー 、ヘレン・クレア・クロマーティ 、ジョン・スティーブンソン、撮影マイク・ブルースター、美術ルチャーナ・アリギ、衣装パム・ダウン、音楽Hybrid。
出演は、アナイリン・バーナード(モーツァルト)、モーフィッド・クラーク(スザンナ)
ジェームズ・ピュアフォイ(サロカ男爵)、サマンサ・バークス、デブラ・カーワン。
モーツァルトの史実のスキマを突いた、妄想ストーリー
今日はなんの日? 12月5日はヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの226回目の命日だそうだ。
ということで、モーツァルトの映画である。真っ先に思い浮かぶのは、アカデミー賞8部門を受賞した「アマデウス」(1984)であるが、それ以来33年ぶりの本格的なモーツァルト映画となる。
当時、モーツァルトの「フィガロの結婚」がプラハでの公演をきっかけに高評価を受け、プラハで名作オペラ「ドン・ジョヴァンニ」をモーツァルト自身の指揮で初演した…という史実がある。
本作は、そこから妄想したストーリー。プラハでモーツァルトが「ドン・ジョヴァンニ」を完成させるまでの間に起きる、オペラ歌手スザンナと恋愛、そしてそれに嫉妬するサロカ男爵との三角関係を描いている。
モーツァルト役がイケメンのアナイリン・バーナードなので、音楽的な実力のみならず、外観も兼ね備えた女性に優しい色男になっている。カノジョのスザンナも美しく純情で可憐。そこに割って入る金持ち男爵が、まさに「ドン・ジョヴァンニ」である。
またオペラ歌手であるスザンナは「フィガロの結婚」のケルビーノ役でもあり、モーツァルトに恋い焦がれながら舞台で「恋とはどんなものかしら」を歌う。オペラの人物設定と映画がクロスオーバーしていくという趣向になっている。
モーツァルトの代表作品をつなぎ合わせた面白い構成で、楽曲も有名なのでとても観やすい。全面的にプラハロケを敢行していてチェスキー・クルムロフ城劇場も出てくる。さらに映画音楽を担当しているのは、プラハ市立フィルハーモニー管弦楽団に演奏である。
モーツァルトの史実のスキマを妄想しているので、原題である"プラハの幕間"(「Interlude in Prague」)。は自虐的な意味があるのかもしれない。ところが邦題は、まるで"キダ・タロー"(浪花のモーツァルト)。なんともバカバカしい邦題。
(2017/12/5 /ヒューマントラストシネマ有楽町/シネスコ/字幕:チオキ真理)
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