「家族と一緒だからこそ美しい景色」エターナル とえさんの映画レビュー(感想・評価)
家族と一緒だからこそ美しい景色
映画の冒頭で
「下る時に見えた
上がる時には見えなかった花が」
(うろ覚え)
という詩が紹介される
その詩が、この映画の全てを表していると思った
証券会社の支店長として全財産を注ぎ込んで営業成績を上げていたジェフン(イ・ビョンホン)
妻(コン・ヒョジン)と息子を「語学留学」と称してオーストラリアに送り
自分はトップを目指すことだけを考えて、全財産を注ぎこみ、仕事のために生きていた
しかし、その会社が倒産してしまったため
妻と息子に会いにオーストラリアへ向かうも、二人にはジェフンの知らない生活があった
ポスターには「衝撃のラスト」という言葉が踊っているけれど
正直言って、そのラストはかなり早い段階で読めてしまう
この映画は、そういう「結末にビックリ!」というタイプの映画ではなく、
「家庭を顧みず、猪突猛進で仕事のことしか考えていなかった男の顛末」
を描いている映画だと思った
映画が始まる前には、ビョンホン本人から
「この映画を撮りながら、日本のみなさんに見ていただきたいと思った」
というメッセージが流れたのだけれど、
それは、日本にも仕事中毒の人たちがたくさんいることを思っての言葉だったはず
もちろん、仕事でトップを目指すのも大切だけど、時には立ち止まってふりかえり、綺麗な花が咲いていることに気づくような余裕がなければ、
美しい景色を知らないままトップに登りつめても
そこには何もなく
その時に「あの時に美しい景色を見ておけば良かった」と思っても、もう遅いのだ
ジェフンがタスマニアの美しい景色を息子と一緒に見ることができなかったように
映画の原題は「A Single Rider 」だという
邦題よりも、原題の方がジェフンの孤独感をよく表していたと思う
なぜ「エターナル」にしたのか
残念でならない