「ピアノマン」二十六夜待ち いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
ピアノマン
第30回東京国際映画祭出品作品
小説が原作ということなので、ちょいググったら、『光の闇』佐伯一麦著の短編小説とのこと。欠損感覚というテーマで色々な障碍でのノンフィクションということである。今作品はそのアンソロジーの中の一篇。家族を亡くした女、記憶を無くした男が自分達の居場所を求めて時間を紡ぐ作品である。演出手法としてセックスシーンを多用しているのだが、ヒロイン役の黒川のバストトップは無し。その代わり井浦新のケツの露出が多し。小説との変更点はロケ地で、宮城から福島県いわき市が舞台となっている。『さんさ時雨』とかのガジェットを持ち出しているのだが、あまりそこに固執しているわけでもない。
さて、感想だが、観終わって、少し寝かせないと今作品の良さを感じ取れないのではないだろうか。それ程、ストーリーとしては余り奇を衒っていない。ひねくれてもいないし、ストレートだ。作中に男が、山の中で助けを求めて麓まで下りるのだが、そのシーンが映像的に暗いのではっきり認識できず、ミスリードではないけど、この物語、狼男の話なのかなと勘違いしてしまった。二十六夜や、三日月なので、題名も『イクリプス』なんてしたらもっと女性客が増えるかも知れないがw
ピュアなラブストーリーであり、東北震災後のモラトリアムも要素として載せているのだが、これからの未来を無理矢理作るように、ひたすら身体を求め合う。至極自然の成り行きだし、しかしその行為でさえも欠落した部分を呼び覚ますようでトラウマにかかってしまっているもどかしさを丁寧に描いている。井浦の板前役の演技にプロフェッショナルを感じた。なかなかフグを裁くシーンってないからね。お互い、好き同士だし、社会的にも独り身なんだから、どんどんお互いの身体を求めてもいいのだから、本能に従ってセックスすればいい。そういうフラワーチルドレン的ナチュラル志向を思い起こさせる作品である。