静かなふたりのレビュー・感想・評価
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「この沈黙は嫌いじゃない」 日記 by マヴィ
以前、独りで仕事をしていた頃、
一週間 一言も声を出さず、人と会う約束も無くて、誰とも話さなかったことがあった。電話も使わなかったし、スマホもなかった時代のこと。
人恋しくはないし、人と一緒にいても黙っていることが何の困りごとにもならない僕だ。
語りたいことはペンを執ったし、
歌いたいことは鍵盤に向かった。
その後、僕は人前で喋る形態を生業としたのだが、沈黙を大切にする生き方は否定した訳ではなかった。
だから
「この沈黙は嫌いじゃない」
という早々のマヴィのつぶやきが好きだ。
古書店の老主人と、そこにアルバイトに来た若い娘の映画。
エスプリの効いた短いやり取りと、それぞれのアンニュイな表情がフランス映画的。
自分を語らない老人。そして
語りたい事は自分のノートブックに書き付ける女。
奇妙な二人の同居の話なのだ。
こういうプチ退廃的なドラマって、
あちらで勝手にやってくれているから、
そして観ているこちらに干渉してこないから、
こういう疲れないスクリプトは、
僕の大変好みのものだ。
配役は ―
ともさかりえ似のマヴィ、
二谷英明似の店主ジョルジュ。そして
反原発デモで見かけた好青年ロマン。
( あの青年は非合法組織「赤い旅団」のジョルジュを、その潜伏先に捜査に入った警官かもしれないし、
そうでないかもしれないし) 。
マヴィは、
あの娘は、どうしたかったんだろう。
中学生や高校生のように、自分の居所が分からずに、いまだに自分を探している27歳。
港町からパリに出てきたマヴィは、カモメが空から墜ちる姿に驚くのだけれど、
カモメはたぶんマヴィの心象。
自分で思っているよりも自分って疲れていたりするものだ。
ジョルジュも、マヴィも、「この世の中から隠れて潜伏したい状況にあったこと」は共通だったのかもしれないね。
梱包を解かれない箱の中のマヴィの愛読書、デュラスの「タルキニアの子馬」のことも、覚えておこう。
この本を介して、理由は明かさないけれど二人の二つの人生は、ふと、ニアミスしている。
実はこの本は、マルクス主義の革命について語る部分があるらしい。
つまり「赤い旅団」のネックについてのマヴィとジョルジュの“読書会"が起こっている。
劇中 彼女がふと立ち寄った映画館で観ていた「チャルラータ」もチェックしておこう。
でもパリの六区、カルチェ・ラタンにはこんな小さな本屋があって、店主と店員がこんな風に言葉を交わす。
古書店でのさり気ない日常を切り取った、いい感じのストーリーだった。
いつの間にか現れて、いつの間にかいなくなる。
「日記」と、そして「書き置き」が良い味を出しているから。
「二人でいても、でも、静かである」というこの映画の邦題が良かったのかもしれない。この邦題で、僕は何か心を惹かれてDVDをレンタルしたのです。
レンタル返却の期限が来てしまうまで
ユトリロのようなこの色彩の映像をずっと部屋で流していた。
音楽、色鮮、テンポ、そして俳優たちの表情・・
すべてが好みでした。
星6個 付けたい。
・・・・・・・・・・・・・
追記:
カフェのシーンが度々。
そういえば、
新宿東口を右に出て徒歩で少しのビルの二階、
たくさんのカップがカウンターの背後の壁面に並んでいた喫茶店がありました。
店に入ってきた客の雰囲気に合わせて、マスターがカップを選んで出してくれます。
あのお店、またあるのかな?お店の名前も忘れてしまったけれど。
消息を知ってる方、教えて。
ジョルジュの店の名は「緑の麦畑」でしたっけ。
この年齢差日本では犯罪?フランスでは純愛?静かに考えたい自由な恋愛事情
本作の舞台はおフランスの華のパリですよ!
パリの街並みのカフェにいる男女はみんな、恋を語り合わなくてはパリではありません!
これはちょっと?いやかなりの皮肉で申し訳ないのですが、本作のヒロイン、マヴィは田舎町の出身で、憧れの街パリに単身出て来る。
暫くの間は、友人の家に居候していても、友人である家主は不倫の恋に明け暮れる日々、マヴィは同居生活には困難が生じるので、職を得て住み込みの書店員になる。
そして、ついにはそこの書店の主人ジョルジュと恋に落ちると言う話。
ジョルジュは博学の老紳士と言うタイプの男で、しかも長年パリで書店を構えているのだから、この街のカフェで恋愛話にうつつを抜かしている若者をバカにしているのだった。でもそれは、単に彼が年老いたからなのではないか?と私には思えてならないのだが、兎に角彼は本を読まずに恋に熱ばかり上げるような人間を軽蔑している。そんな人間嫌いで歪んだキャラを好きになるヒロインのキャラもどうよ?と疑問符が付いた。
フランス人が情熱的で、恋愛に寛容なのか? パリと言う街並みが恋の気分を盛り立てるのかは分からないけれど、ちょっとこう言う話がマジで成立してしまうところがフランスと言うお国柄、国民性なのだろうか?ヒロインのマヴィは20代後半で、書店の主人は70歳位だと、孫娘と祖父位の年齢差が有って、互いに歳がもっと近ければ良かったと2人は劇中で連発しているが、もうこれ犯罪レベルと思ってしまう私は、夢が無いのか、頭が堅いのか?人の愛が信じられないのか?日本人では絶対有り得ない!と思いませんか?映画なら、有りって事ですかね?
更に本作は、女性監督が、監督脚本を手掛けていると言うから、もう私にはフランス女性は理解出来ません!
これが年老いた初老の爺さんの妄想と言うなら理解も出来るけれど、こう言う話をエリーズ・ジェラールと言う女流監督が執筆している事がもう、信じられなかった。
本作では音楽の使い方や、カメラワークの感じからも、女性監督が撮った作品だとは思わずに観ていたので、観た後でちょっとしたショック状態に成りましたよ。
でも、この爺さんが只者ではない事が後に判明するのだけれど、だから更に歪な恋愛って盛り上がるのでしょうか?
実際のパリはどんな処か知らない私は、ちょっとパリへ単身行きたい気持ちになりました!
映画発祥の国ですから、1度訪れるのも悪くないのかな?そんな旅行気分だけは誘われる本作でした!
パリの街角に似合うラブ⁈
落ち着いた街の風景の中で静かに流れる時間。そこにたゆたう男と女のラブストーリー。
喚く、叫ぶ、言い募る。そんな騒々しい現代的なラブストーリーを離れ、静かな大人のラブストーリーを感じたい人におすすめ。
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