劇場公開日 2018年9月7日

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「いい映画だった」泣き虫しょったんの奇跡 CBさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0いい映画だった

2018年10月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

いい映画だった。
自分も小さい頃に将棋好きだったから、奨励会という場所は知っていたけれど、映画は想像をはるかに超える厳しい世界だった。
年齢制限がある中で「いつかは四段(イコール、プロ)になれるはず」と皆が思い描くのも当たり前だと思う。そもそも奨励会に入るだけで、小中学生として、多くの競争を勝ち抜いてきているわけだから。そしてそれだけに、年齢のエンドが見えてきたときのプレッシャーは、本人にとって恐るべきものなのだろうな。
同じ将棋映画「3月のライオン」もかなりうまく描いていたと思うが、あちらの主人公は将棋で成功する者に対し、こちらの主人公はプロになれず将棋界を去る立場。敗北感、虚無感は、本作のが痛烈で、劇場中を覆いつくしていた。
そして、本作の3/4は脱落までを描く時間なので、観客が浴び続けるプレッシャーも半端なものではない。
将棋のリズム、対局の緊張をよく表現しているのは、音楽、駒音、駒の動き。特に駒の動きを独特にとらえたカメラワーク。それらが相まって、対局シーンは、退屈どころか小気味よくさえある。
聞けば、監督も奨励会に所属していたとのこと。だからこその見事な演出、撮影だと思う。
ストーリーは、ザ・ドキュメンタリー。35歳でプロ棋士になるということ自体が奇跡のような実話だが、実話だからひとつひとつの出来事の中でびっくりするようなどんでん返しがあるわけではない。それを、松田龍平の抑えた演技がベストマッチ。
そうして抑えた映画であっても、最後は誰しもが涙あふれるであろう。それは実話のすごさであり、それを描くことは映画の価値だ。

CB