花筐 HANAGATAMIのレビュー・感想・評価
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偉大なるオルタナティヴへのご奉公
『ハッピーエンドを創ったのはユダヤ人の叡智』とは、上映後、大林監督御大が病身をおしてわざわざ高崎迄出向かれた際お言葉である。お声は小さかったが、それでもお話しは淀みが無く、貴重な内容であった。
で、今作の内容は、その大林ワールドの集大成と言って良い程の映像作品であった。ここまで来れば、ストーリー的にどうかとかよりも、映像そのものの美術的価値や哲学性そのものに浸るという姿勢で臨むのが、正しい鑑賞方法なのかと思う。キャストの人達も多分、この稀代の天才映像作家の手向けとして、監督の脳内のイマジネーションを再現しようと必死な様をスクリーンを通じて痛いほど伝わっていた。
日本にもこれだけの形而上学的且つトリックスターな映像作家が存在しているのだということを世界に知らしめる作品であると誇らしく思う。尚、決して商業映画ではないのでストレートな感情の発露は生まれないことを断っておく。ちなみに自分如きが説明できる能力は持ち合わせていない。
まだまだ撮り続けて!!
ちょっと今作は、言いたいことをダイレクトに直球勝負でやりすぎたかな、という印象。
もう少し遊びの部分とか有っても良かったかな、とは思うが、内容と原作の関係でこのカタチになったのかな。
3時間弱の上映時間は大丈夫だったけど、いやいや大林監督、お年を重ねてもまだまだ映像のマジック期待してます!
色々な感想があるのは素晴らしい
私は大林監督にバッチリ人生を変えられた幸せな世代です。
大林作品に出会って、映画体験も人生も本当に豊かになった人間です。
そんな私の現時点でのベスト大林映画がこの「花筐」になりました。
個人的に特別な大林作品は他にあります。
だとしても、さらにはこれが「戦争3部作」の最後の1本ということを割り引いても、これが大林監督のフィルモグラフィーの最新作であり最高傑作だと思います。
現役監督として、しかもキャリアが40年以上の大ベテランが撮った最新作がこの映画っていうのは、凄いとしか言いようがないと言いますか、
自分の語彙力のなさなんですが、言葉が浮かばないです。
ここのレビューでは年代や性別等はわかりませんが、本当に色々なレビューが読めて嬉しくなりました。
怖い、美しい、激しい、力強い、生々しい、切ない、純粋、無垢、戦争、平和、生、死、圧倒、強烈、徹底、プロ、アマチュアetc,,,
皆さん、ちゃんと自由に感じている。良いも悪いも。でも大林監督の映画ってそういうことでしょ?大林ワールドを体験するということでしょ?
大林監督、ちゃんと伝わってますよ!
優しく、美しく、淡々と
どこまでも大林スタイルを崩さない凄さ。
大林宣彦は、永遠にプロのアマチュア。
誰にも文句を言わせない、興行的経済合理性は考慮しない、ひたすらに美しさを追求する、その鉄のアマチュアイズムに感動する。
結局、普通の人間は山崎紘菜演じるあきねだけだったという、摩訶不思議なオハナシ。
あれ?尾美としのりは?
この時代の若者の苦悩が〜
第二次大戦前夜の
いずれは戦場で死ななければならない若者たちの苦悩と
その戦場に行けないことも苦しみになってしまう様な
理不尽で不寛容な時代の空気が伝わってくる。
戦争前のその空気がどこか今と似ていると言う監督の言葉が重い。
月に10本程映画館で映画を観る中途半端な映画好き的には
大林監督の映画はここ数年では
「多分日本で1番ブッ飛んでる作品」と言う認識はあったので
少々のアレレ?な内容には驚かないけど、
青春群像と言う本作で、この俳優の年齢差はちょっと見過ごせない。
そういう枝葉を突っ込む様な映画では無い事を重々承知していても
流石にそこは〜〜〜
だってね、女優陣は
矢作穂香(20歳)門脇麦 (25歳)、山崎紘菜 (23歳)と
まだちゃんと高校生に見える年代の女優さんを揃えているのに
彼女らと絡む3歳年上の設定の高校生に
満島真之介(28歳)窪塚 俊介(36歳)長塚圭史(42歳)
いくらなんでも長塚圭史の高校生はないだろ!!〜〜
まるで凶悪犯にしか見えないよ〜〜。
内容的にも、戦前の不穏な空気や
その中で苦悩する若者を表現するには
やっぱり、それなりの若い男優さんの方が
より切実感があったのではないだろうか?
今は若い俳優さんでもみんな演技は達者だからね〜〜。
もしかしたら、監督の体調が悪くてキャスティングに
そこまで時間がかけられなかったのかもしれないけど〜〜
ただ、今、大林監督と同じ時代に生きて、
監督の作品を観ておかないのはやっぱり損失だと思うのよね〜。
黒澤明をリアルタイムで観られなかった年代だから
せめて大林宣彦はリアルタイムで観ておきたい。
★もう一度観るなら?「数年後にリバイバル上映を映画館で」
前衛的なのに古典的な演出に眩暈を覚えて
1941年の佐賀県唐津。
17歳の僕、榊山俊彦(窪塚俊介)は、両親の暮らすアムステルダムからひとり、叔母(常盤貴子)の家に身を寄せることになった。
そこには胸を病んだ同年代の娘・美那(矢作穂香)が居、秘かに思いを寄せていた。
新学期を迎え、大学に進学した僕は、そこでアポロンのような生気溢れる青年・鵜飼(満島真之介)と虚無僧のような青年・吉良(長塚圭史)と出逢った。
お調子者の阿蘇(柄本時生)や美那の友人のあきね(山崎紘菜)や千歳(門脇麦)と青春を謳歌するのだが、そこには常に「死の影」がつきまとっていた・・・
という物語で、それ以上でもそれ以下でもない(はず)の物語。
「死の影」は、具体的には、胸を病んだ美那や幼い時分に病弱で寝たきりだった吉良につきまとうのはいたしかたないが、それが健全な鵜飼や僕にもつきまとってしまうあたりが、戦争前夜の青春物語としての深みを与えている。
ただし、『この空の花 長岡花火物語』 (2012年・未見)、『野のなななのか』(2013年)に続いて「戦争三部作」と監督自身がといってしまっては、物語の深みがかえって減じてしまうのではありますまいか・・・などと思ってしまいました。
いまの時代が時代だけに、時代への警鐘がこの映画の製作モチベーションなのだろうが、その部分が全面にでてしまって、三角関係ならぬ六角関係(いや叔母様もいれての七角関係)の物語のオモシロさが消えてしまいそうな感じがしてしまいました。
とはいえ、饒舌華美過剰のてんこ盛りの映像と音楽とモノローグによる語りにはどんどんハマってしまいます。
特に上手いなぁと感じたのは、前半と後半で使っている映像表現が異なること。
ワイプ中心の前半。
アムステルダムからやって来た僕が出会う奇妙奇天烈なひとたちに魅了されて、心が動いていくさまが、ワイプで表現されています。
これに対して、後半はオーバーラップが中心。
物語が動き出し、三角関係、六角、七角と登場人物の思いが錯綜するにしたがって、シーンシーンがオーバーラップしていきます。
たしかに画面合成やのべつ幕無しの音楽など過剰演出なのですが、この、前半後半で語り口を変えるというのは、意外にも映画演出の基本に忠実な感じもします。
こういった前衛的なのに古典的な演出が大林宣彦映画の魅力なのだなぁ、と改めて感じた次第です。
めくるめく映像美だが長すぎ
美しい映像で、図らずも戦争の渦に巻き込まれていく青年・少女たちを描く。癌に侵されても、どうしても作りたいと大林監督が制作したこの映画。伝えたいことははっきりとわかる。血のシーンや月のシーンなどイメージ画像的なものが多く、めくるめく感じに襲われた。常盤貴子が美しい。
映像美は寺山修司の映画を思い出す。顔を白塗りの兵隊は、時計を抱いて歩く寺山の少年を想起させる。黒沢明の「夢」の兵隊も顔を青黒く塗っていたっけ。
ただ、17歳の青年というのに、窪塚俊介らはともかく、長塚圭史は年取りすぎ。
大林監督の次回作を期待する。
物凄いものを観た…
評する資格などありませんが、肉体的、精神的に戦争へ巻き込まれていく若者達を、怒涛の芸術的感性で描いた傑作だと思いました。
個人的には”SADA”でやや中途半端に感じた演出や映像が、ついに頂点まで昇華したような感じがしました。人工的でコラージュのような映像が、どれも大変美しかったです。
大戦の影が忍び寄る時代。
馴染んできた西洋文化や働けない病人は非国民か。お国に命を捧げることは真の男の証明なのか。
目的を持たずに燃え続ける太陽のような健康美の鵜飼は、外の世界へ解決策を見い出そうとするタイプ。一方、ニヒルで哲学的、死神のような風貌(^_^;)の吉良は、自己の内面を探り続けるタイプ。吉良の自傷行為は”The Da Vinci Code”のSilasと被りました。鵜飼と吉良は対極に位置する存在ですが、二人とも同じ難題を抱えるためか互いに意識し合い、戦争に生命を「消費」させないという同じ答えに辿り着きます。どうせ尽きる命ならと戦死したおば様の夫や、使える物は何でも「消費」して有効活用しようとする阿蘇とは対照的でした。
ただでさえ面倒でこじれやすい青春に、戦争という破滅的な現実がのしかかり、一層退廃的なカオスに飲み込まれていく様子が鮮烈でした。また、生と死と性を表す赤色が効果的に使われていました。
ちなみに出欠の返事は、少なくともアメリカでは”here!”です…。
この映画をつくるパワーはどこから!
尾道三部作など、大林宣彦監督の作品が大好きで鑑賞を楽しみにしていました。映像はまさしく40年前に見た「HOUSE」そのもの。真っ赤に染まる空、油絵の色彩のような人の顔の陰影、「さびしんぼう」のような映画とは全く異なる独特な大林ワールド。演劇や歌舞伎のような舞台転換、絵コンテを忠実に再現したカットの連続に圧倒されます。3時間近いこの映画の脚本、画面構成、CGなど、制作にかけた情熱と労力、時間は計り知れません。まさしくガン余命宣告を受けた大林監督が、命を削って作り上げた映画と言っていいと思います。東京でも有楽町スバル座での単館上映でしたが、もっと多くの人に見てもらいたい映画です。魂の叫びが聴こえる人も多いでしょう。映画館は大林ファンと思われるご年配70歳代の方が多く、お見受けしたところ80歳代の方もいらっしゃいました。ストーリーは理解出来ない部分もあり、再度見直す必要がありますが、圧倒的な画像が脳裏に刷り込まれます。所謂サブリミナル効果というものでしょうか。後からジワジワとくる映画ですが、何度か見直すとまた違ったメッセージが次々と現れそうで、奥深い作品です。但し、人によってハッキリと好き嫌いが分かれると思います。興行収入を気にして、万人受けする映画作りをする風潮にも一石を投じる映画です。1ヶ月余りで公開が終了してしまいますが、この作品の良さは劇場ならではなので、リバイバル上映する映画館が続々と出てくることを期待しています。あとこの映画が好きな方は、「十六夜荘ノート」(古内一絵著、中公文庫)という本をぜひ読んでみてください。大戦前夜の青春群像を描いた傑作です。最近文庫化されました。芸術に生きた若者たちが還らぬ戦争に駆り出されていく…、戦争に人生を翻弄された主人公の大伯母が、守り抜いた十六夜荘に込められた想い。花筐では常盤貴子演じる女主人が、この大伯母を彷彿とさせます。この映画も小説も戦争に翻弄された青春があったことを忘れないで欲しいという、監督や作者の想いが伝わってきます。
大林宣彦作品とはこういう事だったのか⁉️
大林監督作品は『HOUSE』『ねらわれた学園』『時をかける少女』『ふたり』…と時代時代で観て来ましたが、イノセントな少女の描き方が素晴らしいだけに、あの独特なクロマキーの手法をハリウッドのSFXと比べてしまい、常に違和感があったのですが…
今回の作品はそれが吹っ切れており、通常のシーンでさえもクロマキーを超えコラージュにさえ感じられる詩的で独特な世界観は、映画というジャンルを超え、精神に訴えかけてくる何か新しい体験をしている様で、これが大林宣彦なのだと唯一無二の169分の世界観に釘付けとなりました。
能・神楽・無声映画・アニメ(エヴァ)日本のエンターテイメントを全て詰め込んだ、世界に誇れる芸術作品だと感じました。
大林監督を知らない、若い人には理解し難いシーンも多いかもしれませんが、この得体の知れぬエネルギーを感じた人は、是非昔の大林作品を観る事をオススメします。大林宣彦監督 真の天才だった❗️
世界観が難しかったです。
口コミの評価が高かったので観てみましたが、独特の世界観で私にはよくわかりませんでした。映像も合成している感じが強調されているような気がして違和感を感じました。
映画に詳しい方が見たらおもしろいのかもしれません。
筆圧に圧倒される。矢作穂花いい。
もう何がどうのという必要ない大林宣彦でしかあり得ない、それもありか、これもありか、の連続のスペクタクルをそのままぼけーっと眺めて圧倒されて終わる。きっとスケッチブックに絵を描いてるような映画づくりなんだろう。後期フェリーニのような感じもする。なのでその筆圧に圧倒される。
予備知識はまったくなしに観たけれど、でてるんだ、と入口のポスターで知った程度だった満島真之介、門脇麦、名前変わった矢作穂香、素晴らしい。素晴らしい大林映画のアンサンブルぶり。特に矢作穂花は和製ドラキュラ映画キャラ的にも素晴らしかった。
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