劇場公開日 2017年12月16日

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「今年初泣きの映画」花筐 HANAGATAMI fuhgetsuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0今年初泣きの映画

2018年8月12日
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鑑賞方法:映画館

今年の初映画は、数年ぶりのシネマスコーレで大林宣彦監督の「花筐 HANAGATAMI」となった。
尾道三部作世代として、実に数十年ぶりの大林作品。
これが戦争三部作の三作目ということで、最近まで新作を作り続けていたことすら知らなかったのを後悔するほど、素晴らしい作品でした。
癌となってクランクインしたことで話題となってから知り、ぜひとも観たいと思ったのだが、巨匠の域の80近い監督が安定した手法の完成形で作り上げるのではなく、こちらが圧倒されるほどの映像センス際立つ、キャリアも年齢も関係ない現役である現在の監督のそのままのリアリティが映し出されていた。
この時代を批判するわけでもなく、そう生きるしかなかった若者たちの、運命の中で懸命に生きる姿。
その背景にはしっかりと戦争があり、それを口にするでもなく、もがきながらも生きていく姿が今の時代とオーバーラップする。
そのリアリティが、観る側にとって強烈に戦争を批判するエネルギーに転換される。
原作の「花かたみ」の持つ力もすごかったんだろうけど、大林マジックというか、全面協力したという唐津くんちの壮大な迫力と、伝統の祭りの持つ縦軸のエネルギーに支えられ、病や時代のせいとせず、生と死を極限まで受けとめようとする物悲しさ。
それを伝えなければならないという使命感のようなものがあったのでしょう。
脚本から数十年の時を経てこの時代に完成させた監督の心意気とメッセージに、今年初泣きです。

fuhgetsu