「人間の美醜両面を見つめながら」希望のかなた masakingさんの映画レビュー(感想・評価)
人間の美醜両面を見つめながら
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カウリスマキ作品はいつ観ても安定の癒しを得られたのだが、本作は少しばかり薄暗い要素が増えたように感じた。
石炭の山から姿を表す主人公カリードの登場場面や、わさびの使い方を一体どこで学んだんだと吹き出してしまった寿司店への方向転換など、随所にいつものユーモアは感じられた。
だが、最先端の教育制度などで知られるフィンランドにあっても、人種間の諍いや偏見は避けられない問題になっているのだということをまざまざと見せつけられるエピソードの数々に、監督自身が笑うに笑えない状況なんだよ、という秋波を感じた。
それでも人間は基本的に善であると一縷の望みを託したであろう、脇を固める人物たちの無償の優しさは、カウリスマキ作品の根っこに常に根ざしている。
難民収容施設で親しくなったイスラエル人の友人は、いつか裏切るんじゃないかと思いながらハラハラしていたのだが、それこそ自分の偏見を最後に思い知らされて恥じ入った。
絶望的な状況にトドメを刺されたように見えるラストシーンでも、カリードの目は希望に満ちたかなたを見つめていた。彼にとって、そして、祖国を追われ、今も悲惨な生活を余儀なくされている人々にとって、希望とは何か考えさせられる作品だった。
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