「希望の別の側面」希望のかなた りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
希望の別の側面
シリア内戦から逃れてフィンランドにやって来たカーリド(シェルワン・ハジ)。
難民申請をするが受け入れられるかどうか。
内戦で唯一生き残った妹も道中ではぐれてしまった。
一方、フィンランド人中年男のヴィクストロム(サカリ・クオスマネン)は妻と別れ、衣料品店もたたみ、あまり流行っていないレストランのオーナーに落ち着いた。
そんな接点などなさそうな二人だったが、強制送還から逃げ出し、行き場を失ったカーリドが一晩求めた寝床は、ヴィクストロムのレストランのゴミ捨て場だった・・・
という物語で、『ル・アーヴルの靴みがき』につづく「難民三部作」の第二作目だそうな。
ならば、前作との関連が強いかと思うとさにあらずで、前々作『街のあかり』との関連がかなり強いように思えました。
ヴィクストロムのレストランで働くふたりの男性を演じているイルッカ・コイヴラ(カラムニウス役)とヤンネ・フーティアイネン(ニュルヒネン役)、それに収容施設の女性役のマリア・ヤンヴェンヘルミの3人は『街のあかり』の主要人物を演じた役者さんだし(他のカウリスマキ作品には出ていない)、カーリドはフィンランド人ではないシリア人(『街のあかり』の主人公は体制崩壊後の旧ソ連領からやって来た)と共通点があり、さらにレストランに拾われる犬の名前コイスティネンは『街のあかり』の主人公の名前。
それに、映画全体を包むタッチが、いつも以上にシリアス。
まぁ、ヴィクストロムのレストランではズンダラなユーモアもあるにはあるのですが、カーリドがフィンランド解放軍を名乗るネオナチ風の一味に狙われ、暴力により傷つけられたりと、かなり殺伐した印象が強いです。
と、本作はこれまでのアキ・カウリスマキ作品と比べると、どこか印象が違ってみえました。
たしかに、音楽や煙草や犬や日本好き描写など、各々のアイテムは揃っているのですが・・・
また、前半、カーリドとヴィクストロムをそれぞれ別に描いたエピソードのタイミングの悪さは、あれれ、どうしちゃったんだろうといった感じでした。
たしかに、カーリドのエピソードだけを詰め込んでやってしまうと、あまりにシリアスで辟易するのかもしれませんが、ヴィクストロム側のズンダラなユーモア、必要だったのかしらん。
なんだか、サーヴィス精神を出して、ユーモアシーンを入れ込んだんじゃあ、とも思ってしまいました。
さて、ラストシーン、傷ついた主人公に寄り添うのは『街のあかり』では女性だったけれども、本作では別。
もう、ひとは助けてあげられないのだよ、とは思いたくはないのですが、なにせ原題(英語タイトル)は「THE OTHER SIDE OF HOPE(希望の別の側面)」。
希望には別の顔があるんだ、っていうのは、うーむ、やっぱりシリアスすぎるかなぁ。