「遠い劇場まで足を運んだ甲斐あり」きらきら眼鏡 terryさんの映画レビュー(感想・評価)
遠い劇場まで足を運んだ甲斐あり
この作品を観たいと思ったきっかけは、
NHKのニュースで市民参加型の映画と紹介されたことと、
「きらきら眼鏡」という作品名に、惹かれたこと。
「船橋発全国行」と言うけど、上映される劇場が少なくて(30館)、
観るためには、遠くまで行かなければならない。
もし、がっかりしたらどうしよう、との不安があり。
結果は、大満足。観る価値は、十分ありました。
だから、一人でも多くの人に、この作品を観てもらいたい。
明るい性格で、日常のなにげないことに感動するあかね。
あかねには、余命宣告を受けた恋人「裕二」がいる。
つらい現実を抱えているあかねは、実は、見たもの全部を輝かせる
「きらきら眼鏡」をかけている。
「きらきら眼鏡」なんて魔法の眼鏡は、ないのだから、
これはあかねの人柄・心の持ち様だよね。
だから、観ている方は、池脇千鶴演じるそんなあかねに惹かれていく。
魅了される。
明海は、恋人をなくして三年。でも、まだ完全には立ち直っていない。
ごく普通の街で、あかねと明海が出会い、静かにストーリーが進んでいく。
一時間以上淡々とした展開だったけど、何で飽きないのかなと感じながら観ていた。
むしろもっとこの状態が続いて欲しい、とも思った。
そこが、この作品の魅力のひとつか。
そして、はっとするシーンがラストにかけて、二ヵ所・・・
一つは、病院での明海と裕二のやりとり。
病室のシーンは、暗くならないように映像的に配慮されている。
もう一つは、浜辺での明海とあかねのやりとり。感動する場面。
裕二は、あかねのことを気遣い別れを告げる。
その選択は、双方に良いことはなかった。
こういう状況に陥ったら、大切な人がいなくなるぎりぎりまで二人で
しっかり生きることが、正解なのかな。
大切な人がいなくなるという重たいテーマの作品を鑑賞して、
見えてくる大切なモノ。
明海やあかねのような状況を経験しなくとも、この作品を観ることで、
今をどう生きたらいいのか、時間の大切さ、が見えてくる。
「きらきら眼鏡」は、そんな作品ではないだろうか。
大泣きはしなかったけれど、後半はずっと涙が少しずつこぼれてくるような作品で、
鑑賞した後、青空を見た時のように、とてもさわやかな気持ちになりました。