劇場公開日 2018年11月16日

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「右へ左へ揺れながらも力強く前に進んでいく家族の肖像」鈴木家の嘘 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0右へ左へ揺れながらも力強く前に進んでいく家族の肖像

2018年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

冒頭は怖いくらい深刻だ。なぜこんなことになったのか。何が原因なのか。どうしてこんな情け容赦のない事態が人生に起こり得るのか。あらゆる意味で観る者に動揺をもたらす場面だ。そこで見せる部分と、見せない部分とが、のちの構成に大きく反映されるとは思いもしなかった。かと思えば、冒頭の深刻さを抜けると今度は岸部一徳の飄々とした佇まいと、長男の不在にまつわる「嘘」をめぐって、映画はスラップスティックにも近いコメディの様相へと振り切れる瞬間がある。誰もが”答え”を求めて、すがるようにして右へ左へと振り子を揺らす。時にその演出が煩わしく、もどかしく感じられたのも事実だが、本作を観終わって感じるのは、その余白を経て大きな蛇行を描くように心の旅路を見つめたからこそ、この映画は他にはない深遠なものを、逃げることなく、ごまかすことなく、掴み取ったのではないかということだ。本作でデビューした野尻監督の今後が楽しみだ。

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牛津厚信