デトロイトのレビュー・感想・評価
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観ているのが辛い・・・
50年前、デトロイトのモーテルで起こった実話を元にした作品。キャサリン・ビグロー監督らしく、BGMなしドキュメンタリータッチの演出。これがむしろ退屈なことがあって、この映画の冒頭のモーテルまでのシーンも、眠たい。でも、本題に入ってからの緊迫したシーンは、見ているだけで辛くなるほど。
最も憎たらしい警官クラウス役のウィル・ポールターは「なんちゃって家族」の息子役がドはまりだったが、こういう役以外できるのか?と思ったが、決してサイコではないが狂気じみた警官を演じきっていて見事。出演者で最も有名なジョン・ボイエガは、近隣の店舗の警備員で、制服のおかげで黒人でも暴動当事者とは思われないため、第三者として事件に関わる。そんな彼ですら容疑者にされかかるのだから、すごい人種差別だ。
これは1967年のこと。でも2010年代になってもこれに近い暴力が、超先進国アメリカで起こっているとはどういうことか、と思う。もし自分が当事者だったらどうするか、何ができるかを考えたい。
痛い、怖い、悲しい
1967年、アメリカのミシガン州デトロイトで起きた暴動。
もう50年? まだ50年?
半世紀前に起きた事件は、しかし今もなお過去のものとはなっていない。
Black Lives Matterというキーワードは、人種問題に疎い僕ですら知っている。
本作のメインで描かれる「アルシェ・モーテル事件」は、ただただ恐ろしいの一言に尽きる。
もし自分があの場所にいたら、はたして生き残ることはできただろうか?
仮に命が助かったとしても、自分の魂は回復不能なほどに傷ついてしまったのではないか。
映画と分かって観ているのに、ずっと絶望的な気分でいた。
「ああ、もうこれはダメだ」と。
世界から見放された気分。人としての尊厳が全て奪われた気分。
なぜ、こんなことになったのだろう。
なぜ、こんなことをしなくてはいけないのか。
それが人の性(さが)なのか、運命なのか。
ジョン・ボイエガ演じるディスミュークスは、てっきり警官だと思っていたのだが、実際には警備員だった。
のちに彼が容疑者として扱われる展開にも、かなりの恐怖を感じた。
黒人であるというだけで、ここまで不当な扱いを受け続けることになるのか。
50年経って、アメリカは変わったのだろうか。
白人優先主義が、またしても復活しているのではないだろうか。
どこまで救いのない展開は、本当に容赦がない。
ラストシーンであの人物が見せた表情は、どういう意味だったのだろう。
あまりにも過酷な現実から逃れるために、おそらく原始的な宗教が生まれたのだろう。
僕らが生きている「いま」も、こうした悲劇は続いている。
そのことを決して忘れてはいけない。
考えさせられる。
ここまで難しい題材をはっきりと鮮明に描いていて本当にすごいと思った。 拷問シーンは本当に見てる側にも辛さが伝わってくるようだった。
そして最終的な判決は無罪、人権とは何か、差別とは何かを真剣に考えさせられる映画だった。見終わった後の余韻もなかなか抜けなかった。
そしてウィルポールターの演技も素晴らしかった。あそこまで卑劣な役をうまくやりこなせるのはすごいと思う。なんちゃって家族の時とは大違いだと思った。
劇場で2回観ました!!
2回観ました。1回目は、れっきとした戦争犯罪の映画として大きな衝撃を受けました。一体この映画はいつまで続くのかととても怖かったです。あまりにも強烈な体験だったため再び観る事にし、2回目は警察側、特に眉毛が特徴的な警官隊のリーダー、クラウス視点で観てみました。市警だけではなく、州警察や軍の動きも気になるようになりました。クラウス、そして彼を演じるウィル・ポールター自身も、本作の中で最も冷静な人物であると強く感じました。クラウスは良くも悪くも職務に忠実でした(だから許されるという事では決してありませんが)。差別主義者だとまず黒人が警備員をしている事が許せないはずなので、差別主義者と言うよりは、まさにスタンフォード監獄実験(1971年。映画「es」の題材)のように職務に邁進し過ぎたのだと思います。演じるウィル・ポールターは非常に難しい役だったと思いますが確実にこなし、また眉毛と表情だけで雰囲気あるいは不快感を出す、特徴のある良い俳優だと思いました。表向きには歴史、社会問題ものですが、戦争犯罪ものやモーテルでの一夜のサスペンスもの、法廷もの等様々な要素があるのに、モーテルの描写がハードな事以外に構成も特に複雑ではなく、どなたでも観やすいという非常に良く練られた映画だと思います。男性監督だと「体を綺麗にしてやる!!」とか言って無駄にレイプシーンが入ったと思うので、そうならずにバランスが取れていたと思います。どんなに面白い映画でも、2回目以降は軽く流すシーンも多いのは事実ですが、本作は2回目も集中できて面白かったです。
重くのしかかる
非常に重くのしかかる映画でした。
オープニングから人種差別の歴史と事件の起こるデトロイトの街の様子、そして事件の関係者が語られていく中で、不穏で危険な空気が徐々に観ている者を締め付けていく。
モーテルに舞台を移してからは、密室劇に変わる。
そこで繰り返される罵倒、尋問、暴力…
あまりにも凄惨な展開に怒りや悲しみもこみ上げてくるようで、観ていて心苦しいくらいにも感じるほど
こういう観ていて不快に感じる描写もしっかり描かれているし、これが実際の事件というのだから、あまりにも強烈だ。
モーテルでの1件から解放されても、当事者たちの傷は消えず、本人や関係者の人生を狂わせてしまう。
裁判が行われても、真実は明かされることなく、全ては闇の中というのもあまりにも救いが無い。(彼がまた歌っているのは救いかもしれないが)
権力と人種差別の意識が暴走した警察官はモチロン、問題を認識していながら関わらなかった州警察、そしてこの問題を見て見ぬふりをする傍観者たち…
観た者に強烈に重くのしかかる作品だったなと
当事者の証言や裁判記録などを再構築したものなのでどこまでが真実なのかは分からないが、権力や人間の狂気、差別問題に踏み込んだ重いけど素晴らしい作品だった
万人が観る映画ではないだろうが、多くの人に観てもらいたい作品
素晴らしい映画だった
本作は「ハート・ロッカー」、「ゼロ・ダーク・サーティ」の精神を受け継ぐキャスリン・ビグロー監督の社会派作品である。
当時の記録や関係者へのヒアリングを徹底的に行い、セットや状況や俳優の演技等を限りなく本物に近づけた圧倒的なリアリティに感銘を受ける。特に本作はビグロー監督作の中でも特に感情を揺さぶられる映画体験だった。
また、本作はシンガーを夢見た男ラリー・リードの物語としても見れるところが映画的な感動を呼ぶ。誰もいないフォックス劇場で1人歌うラリーと、教会でこじんまりと彼の歌を求める人に囲まれて歌うラリー、そしてラストシーンでこちら(観客)を見つめるラリー。ここがドラマとして良い感じに機能していた。
あの日アメリカが失った"大スターになったかもしれない存在"、ラリーは今回の事件がトラウマとなり大衆音楽から身を引き、教会で人のためゴスペルを歌っている。
そのラリー本人が本作を機に、あの日を語り、ラリー役を演じたアルジー・スミスとデュエットをして再び公に歌声を届け(https://youtu.be/vJ6t7ZLXMic)、ラストのレコーディングシーンにこっそり登場しているのを見て涙が出た。
重いテーマ
黒人たちの不満が爆発して起こった1967年のデトロイト暴動と、その暴動の最中に殺人にまで発展した白人警官による黒人たちへの不当な尋問の様子をリアリティを追求して描いた社会派実録ドラマ。67年、夏のミシガン州デトロイト。権力や社会に対する黒人たちの不満が噴出し、暴動が発生。3日目の夜、若い黒人客たちでにぎわうアルジェ・モーテルの一室から銃声が響く。デトロイト市警やミシガン州警察、ミシガン陸軍州兵、地元の警備隊たちが、ピストルの捜索、押収のためモーテルに押しかけ、数人の白人警官が捜査手順を無視し、宿泊客たちを脅迫。誰彼構わずに自白を強要する不当な強制尋問を展開していく。最後は裁判で警官たちは無罪となる。黒人グループはグループを結成してモータウンでデビューし成功を収めるが、そこにはラリーの姿はない白人のための音楽活動に嫌悪感を持ち、教会の聖歌隊で歌っているのであった。3人の警官はその後復職しなかった。アルジェ・モーテルで何が起こったのかは謎が多く、監督も再現する苦労があったようだ。重いテーマでもありアメリカが抱える根強い人種差別の歴史の汚点とも思われる題材をあえて選んだ監督に是非アカデミー賞を取ってもらいたい。
ストレス
未熟な警官とマヌケな黒人が周囲に多大な迷惑を撒き散らすお話し。
開幕の紙芝居とエピローグは要らない気がする。アフロアメリカンの辛い境遇に興味がない人は観に行かないでしょう。ニューオーダーの脱走兵以外はスターが出ていない地味な作品のうえ余りに殺伐とした内容。
史実に基づいているため「ニュージャックシティー」のように裁判後に天誅を下して溜飲を下げるわけにもいかず、鑑賞後の嫌な気分に寒さがひとしおです。
過酷な尋問
この映画は実写版映画でこの事件の全体の死者数は
43人だそうです。映画のストーリーはその中で起きた
ある一つの事件についての描写なんですがその中の
重要な尋問のシーン、実に40分だそうです。その間
見ていて途中で本当にいやになりました。
実際、尋問をする白人警官役の人が泣き崩れるほど
悲痛なシーンだったそうです。
そこで、疑問に思ったのは、疑いのある容疑者はすでに
死んでいるのに、何故尋問を受けている無実の黒人達は
自分の無実と事実を言わないのか、一言それを言えば
それでみんな開放されたのにと、そういう気持ちで
この長い尋問のシーンをイライラしながら見ていました。
抵抗しないで逃げる人を後ろから襲撃する警察官、
これはまさに戦争で敵を撃つようなもの
この事をを含めてもこの時代背景では色々
理由があったのでしょうか。
タイトルなし(ネタバレ)
違法バーの摘発が引き金となり黒人達による暴動が発生し、市警では混乱が鎮静化出来ないことからミシガン州が州軍を派遣、占領地さながらの緊張感が漂う1967年のデトロイト。レコード契約のチャンスとなるライブが突然休止となった上に暴動のせいで散り散りになった黒人コーラスグループのリードボーカルのラリーと友人のフレッドは、たまたま空き部屋のあったモーテルに逃げ込むが、同じモーテルに宿泊していた男がふざけて放ったトイガンの銃声をきっかけに他の宿泊客とともに地獄絵図に巻き込まれてしまう。
冒頭で当時のデトロイトの状況を詳しく説明した後、ふとした諍いが暴動に発展する様を丁寧に描写、あとは引きの画が殆どない接写でモーテルの中で起こる阿鼻叫喚をつぶさに観せる『ゼロ・ダーク・サーティ』と地続きの戦場サスペンス。派手な戦闘シーンもないのにテンションが張り詰めたスリリングな演出には威風堂々たる風格があり、まだまだ進化を続けるキャスリン・ビグロー監督の手腕に圧倒されました。
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