「硬派で重く,最後まで目が離せない」デトロイト M.Kotaroさんの映画レビュー(感想・評価)
硬派で重く,最後まで目が離せない
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ビグロー監督ならではの作風。黒人差別の極みとも言える過酷なストーリーは,正直観ていて吐き気がするレベル。事実に基づいたフィクションならではの重厚感とピグロー監督らしい冷徹な眼差しが強烈だ。並の作品ならば,無実の黒人たちを拷問した末に3人を殺した事実に良心を苛まれた警官が自白した時点で,差別主義者の白人警官たちは裁判にかけられて罰せられ,黒人に対する理不尽極まりない権力による差別が全世界から糾弾されるという展開になるはずだ。結末はもちろんハッピーエンド。ストレスに晒され続けた観客は,最後の最後で胸をなでおろし,ほっと一息――。しかし,ピグロー監督がそんな凡庸な結末を用意するはずがない。結局,白人警察官たちによる暴行と殺害は無罪とされ,黒人たちは一方的に虐げられたまま本作は終わる。
現実の世界で権力者たちが分断と対立をあおりまくる姿を目の当たりにすると,「歴史は繰り返すのか」と慄然とせざるを得ない。
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