「不老長寿の少女」さよならの朝に約束の花をかざろう ケビン・スペイシーさんの映画レビュー(感想・評価)
不老長寿の少女
あらすじ含め一切の予備知識無しで観賞。
ざっくり言うと、若い姿のまま成長する不老長寿の種族イオルフの少女マキアと人間の少年エリアルの絆(母子愛)の物語。
事前情報無しだったから故か想像以上によかった。まず、映像面は、さすが日本のアニメーション技術だと言わざるを得ない。高いアニメーション技術だからこそ、少々ファンタスティックな世界観は活かされ、細かなキャラクターの情動を感じ取ることができ、開始数分後にはすんなり映画の世界に入り込んでいた。
また、内容も、見た目の変わらない少女と人間の少年の家族愛というのは非常に新鮮な設定で興味深かった。
以降は、私の全く個人的な意見であるが、私は、今作には、母子愛というテーマの他に、人間の一生というテーマもあるんじゃないかと感じた。マキアとエリアルだけでなく、ミドとラング、レイリアとメドメルのように、随所で母子の絆が描かれていた。特にマキアとレイリアの対比はよかった。かたや血のつながりは無いが、息子を何よりも大切に思い傍に居ることのできる母親、かたや腹を痛めて産んだ娘を愛しているが、触れるどころか傍にも居ることもできず、顔すら知られていない母親。一緒に過ごした時間、過程、環境や状況も異なる2組の母子。しかし、2組には共通するものがある、母が子を想う気持ち、子が母を想う気持ち、どれだけ状況が違えど、母子の絆だけは普遍なのであると、二人の母親が我が子への決着をつけるラストで明らかになる。また、エリアルが結婚をし、子をもうけ、エリアルの死をマキアが見送る場面まであるのも大きな意味がある。生命
は、母からその生を受け、生を紡ぎ、そして死んでいく。この儚くも尊いサイクルを見届ける役が、不老長寿の種族イオルフもといはマキアなのである。故に、マキアがエリアルを見届けるまでのシーンを入れたことには、家族の絆や、単純にイオルフの宿命というだけでなく、人の一生という大きなテーマがあったのではないかと考えられる。これらのテーマに沿い、それを拾いつつ綺麗にまとめられた脚本・構成は圧巻である。
ただ、あくまで個人的な意見であるが、少し減点するならば、2時間弱という短い尺故か、登場人物、特にエリアルの感情の変化が若干わかりずらかったというところと、タイトルが少し詰め込み過ぎだと感じるところくらいだ。
しかし、ここ最近観たなかでも面白く、心に残る作品だった。
☆4.0とさせていただきます。ここまでご精読頂き、ありがとうございます。