「追悼上映」フジコ・ヘミングの時間 らららさんの映画レビュー(感想・評価)
追悼上映
追悼上映で観ました。
70歳手前で脚光を浴びたフジコさんが、晩年に世界で演奏し、美しいものに囲まれ、可愛い猫や犬、たくさんの人に慕われ、素敵な家を建てて生活する様が描かれていました
最初の自伝ではピアノと猫に囲まれた素朴な暮らしが描かれてましたが、その後20年間はかなり華やかだったようです。
前半は成功したピアニストの優雅な暮らしを流しただけのものに見え、ちょっと退屈。
映像はよく揺れるしピントの合わせ方も独特で見づらく、ナレーションも「様々な体験を重ねました」とざっくり。映画というより動画配信を思わせるところも。
流れる演奏は素晴らしい。ピアニストの演奏の違いとかあまり意識したことなかったけど、かつてNHKで聴いた演奏に度肝ぬかれ「何この迫力ある演奏。この人すごい」と惹かれたクチです。
が、その後やっと生で聴いた時は映像や音源で聴いた素晴らしい演奏ではなく投げやりな弾き方にも思われました。しかし既に80代での演奏だった訳ですが。
弟のウルフ氏は登場しなくてよかったかな。公演で見かけましたが、客席で声かけするだけでなく、ロビーでは大声でCDやグッズの購入を呼びかけておりあまりいい気持ちになりませんでした。
ロビーで男の子をみつけ「ピアノは本当は男のものなんだよ!女の作曲家なんかいないだろうが!」という発言もなぜわざわざいれたのか。カットしてほしかった。クラシックの時代女性はほとんどの職業から遠ざけられてましたが。「ピアノは白人のもの」という人種差別発言ならカットするか問題とされるだろうに。女性に対してなら軽口、冗談で済んでしまう。
後半で、よく語られる波乱多き人生のエピソードがでてきます。妻子を捨てた父親でも写真を貼っていたり、父方の祖父が獣医で喜んでたり、父の仕事を追いかけたり、慕う気持ちが切ない。
戦後は生活も大変な中、母が必死に娘にピアノを叩き込み、外国人だとして差別され、天才少女と呼ばれながら聴力を失い、国籍がなく難民として留学し、という波乱エピソードは切り離せないものでしょう。
自伝では留学先で食べるにも困り砂糖水で過ごした、風邪ひいても医者にかかれず市販の薬飲んで聴力を失った話もありましたが、
お嬢様ではなく苦労、苦難を経験しているから庶民の心を打つ演奏なんだなという認識ですね。
とはいえ、母の小学校時代の写真をみて「良家の子女だから上品な顔の子が多い」発言だとか、並のお嬢様より苦労したとはいえ青山小学校に通い、仕送りもらっての留学とどう考えても完全な庶民ではないですが…。
ほとんどの音楽家はもっと庶民と程遠く一般人感覚を持ち合わせてないから、演奏も興味持たれないしクラシックに敬遠する人が多いのかもしれない。
最後のラ・カンパネラは迫力満載。フジコさんの発言も最初から追悼映画だったかのようで、結局は涙涙でした。