劇場公開日 2019年5月18日

ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリスのレビュー・感想・評価

全42件中、41~42件目を表示

5.0米国と日本の違い

2019年5月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

知的

難しい

「図書館」の運営を通して、民主主義、資本主義、イノベーションも
理解できる良い映画です。

「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」は、映画を表した
良いタイトルです。

「ニューヨーク」は、米国ニューヨーク州ニューヨーク市という
意味です。

「公共」は、独立法人が市民の税金と民間の寄付で運営しているという
意味です。
自由に使用できる民間の寄付で図書館の価値を高め、価値の高い図書館に
市民の税金が投入されるという好循環があるということです。

「図書館」は、ウィキペディアで紹介されている「出版物を中心に収集、
保管し、利用者への提供等を行う施設」だけではなく、全世代の人々が
知識、情報や教育を得るために集い、イノベーションが生まれる場所と
いう意味です。

「エクス・リブリス」は、「~の蔵書より」という意味です。

「ニューヨーク公共図書館」は、「The New York Public Library:NYPL」
と呼ばれています。

「ニューヨーク公共図書館」は、ニューヨークを文化的な都市にする
ためには、市民一人ひとりが自由に学ぶことを通して自らを高めること
が必要だと考えた篤志家が、アスター図書館とレノックス図書館を設立し、
鉄鋼王で篤志家のアンドリュー・カーネギーが大口の寄付をして、大きな
図書館にしました。

「ニューヨーク公共図書館」の本館は、マンハッタン区ミッドタウンにある
5番街と42丁目の交差点にあり、正面玄関前には、アスターとレノックスと
名図けられた2つのライオン像があり、4つの研究図書館と地域に密着した
88の分館で構成されています。

「ニューヨーク公共図書館」のスタッフが、税金の金額を決める市長、市議
会議員という政治家や寄付をしてくれる民間人の意向を尊重することで、
「ニューヨーク公共図書館」の存在価値を高めていることが分かりました。

「ニューヨーク公共図書館」は、過去も、現在も、未来においても重要な施設
であり続けます。

登場人物は、「ニューヨーク公共図書館」のスタッフ、クリエイター、
利用者です。
登場人物は多く、知らない人ばかりで、説明はなく、話通しで、字幕を
追うのも大変なうえに、途中休憩がありますが上映時間は3時間25分と
長いです。
物語を通して、何かを理解するという通常の映画ではありません。
登場人物を通して、「ニューヨーク公共図書館」は社会に貢献し、税金と寄付
を集めて、どのように運営しているのかを理解するという映画です。

登場人物が語るドキュメンタリー映画で、ドラマ性も、エンターテイメント性
も全くありません。

日本には、「国立図書館」、「公立図書館」と「私立図書館」は
ありますが、「公共図書館」はありません。
国立図書館は、国が設立し、税金で運営する図書館です。
公立図書館は、地方自治体が設立し、税金で運営する図書館です。
私立図書館は、民間団体あるいは個人が設立し、運営する図書館です。

税金で運営している日本の図書館には、図書館のスタッフが努力しようと、
努力しなくても、毎年一定額の税金が入るということです。
努力をしないスタッフにより日本の図書館は、少子高齢化、インターネット、
アマゾン、グーグル、スマートフォンにより、存在意義を失い、税金も
入らなくなり、閉館し始めています。
日本でイノベーションが生まれない理由は、日本の図書館の運営にもある
ということです。

日本にも成功した人々はいますが、日本の図書館のおかげで成功したのでは
ないので、日本の図書館に寄付が集まらないということです。

決定は密室で行われるので、日本の「会議」は経費を浪費するだけです。
米国の「ミーティング」は、議論を行い、決定し、実行し、検証し、
資金を得る手段として機能し、生産性があります。

「一億総活躍社会」に関する、有識者から意見を聴く「会議」が行われて
いますが、決定は密室で行われ、「会議」の意味は無いことが分かります。

パンフレットは、よくできているので、映画を理解したい人には
お勧めできます。

「ニューヨーク公共図書館」についてもっとよく知りたいという人には
「未来をつくる図書館ーニューヨークからの報告ー」(菅谷明子著、
岩波新書)をお勧めします。

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ノリック007

5.0知の泉

2019年5月23日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

難しい

ナレーションやテッロプ満載で多くの人が容易に理解できるドキュメンタリーを欲している人は見る前に気をつけてほしい、これはフレデリック・ワイズマンの作品だということを。かく言う自分も200分超のワイズマンを覚悟して臨んだ。決して眠るまいと決意して。果たして…
予想外のカットの多さとそのテンポの良さに戸惑うと同時に、うまく乗れた気がする。しかも映し出される出来事や主張が非常に興味深くて、まさに知の源泉たる図書館を表現し尽くした作品だった。
その上、図書館は時とともに変化しつつあるというのがよく分かる(まぁこの巨大図書館が特別なのかもしれないが…)。そこはもはや書庫とか本を借りるだけの場所だけではない。教育の場、コミュニティーの場、ネットを提供する場、そして時に講演があり演奏会がある。
コープランドやバルトークの生演奏があったり、パティー・スミスやエルビス・コステロがゲストで来たり、朗読会やガルシア・マルケスの本についてディベートしたり、演劇における手話についての講演とか点字の教育とか、興味が尽きることなく長い時間が流れていった。
途中5分の休憩、個人的には集中力が切れてしまって余計なものだったが…
内容は興味深かったとはいえ、説明的なものはほとんど無いので、あらかじめニューヨーク公共図書館の構成やマップなどを見ておいた方がいい気がした。そうすれば一層豊かな作品に見えるように思う。
ラストもワイズマンらしくなくて…、それでもなんだか良かった。

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SH