「正しく抗うために」ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス 前世は焼き鳥屋さんの映画レビュー(感想・評価)
正しく抗うために
世界中の図書館員の憧れ、というニューヨーク公共図書館。撮る行程それ自体がリサーチという撮影スタイルのため事前取材は無し。でも決して無秩序ではなく、取材で深まるワイズマンの図書館への興味を追体験するようで長尺も飽きない。(もちろん順撮り編集じゃないだろうからそう感じさせる構成が巧みなのだ)
「世界で最も有名な図書館」、有名な理由は単に蔵書量ではない。例えばある利用者が(公民権運動)について知りたければニーズをヒアリングして多角的に図書を勧めてたり、文学作品に対する討論会を開いたり、黒人の歴史認識が教科書に正しく記載されていない問題を話し合ったり…と「対話による知識の共有の場」を図書館が提供している点にある。言い換えればそこは、誰かの思惑が一方的に決めた概念を疑い、「選ぶための知識」を豊かに提供してくれる場なのだ。ニューヨーク(アメリカ)ってほとんど興味無かったけど、映画からアメリカの「民主主義」への誇りを感じ行ってみたくなった。そこでは個が意見を戦わせ、対話を恐れない。
それにこれがとても印象的だったんだけど、映画に出て来る市井の人たちみんなとても話が上手い。自分の考えを分かってもらえるようにどう話すか、日頃からそういう場があるからなのか。岡本社長とはえらい違いだなぁと思いながら見てた。別に岡本社長が話下手というわけではなくきちんと伝えたい核をもって対話に臨んでたか、その違いなんだろうけど。
奇しくも映画完成の2日後にトランプが大統領になったというこの映画。ワイズマンは「ニューヨーク公共図書館は、多様性、機会均等、教育といったトランプが忌み嫌っているものすべてを象徴する存在だ。」と語る。
この映画は単に有名図書館を紹介する映画ではない。民主主義とは何かを知り、民主主義の世界を生きるための映画だ。
まぁ3時間半と、長い事は長いんですけど…