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「招かれざる客たち」マザー! 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
招かれざる客たち
監督はダーレン・アロノフスキー、キャストにジェニファー・ローレンス、ハヴィエル・バルデム、エド・ハリス、ミシェル・ファイファーら豪華な面々。
日本では今年1月の公開が決まってたのに、突然の公開中止に。
一体何があった…!?
結構気になる作品だったんだけど…。
さてさて、実際見てみたら…、
確かにこれは噂に違わぬ衝撃作、問題作、怪作。
アメリカでは賛否両論真っ二つ。好き嫌いハッキリ分かれるのも頷ける。
強烈な作風にハマるか、不快感しか感じないか。
郊外の一軒家に住む歳の差夫婦。
ある夜見知らぬ男が訪ねて来て、夫は何の躊躇も無く泊める。その翌日には男の妻が、さらにその翌日には息子二人もやって来て…。
妻の不信感は募っていくばかり…。
もしこれを、自分の身に置き換えたらどうだろう。
他人様の家にズケズケ入り込んで来て、傍若無人な振る舞い。もう、最悪!
最初に訪ねて来たエド・ハリスは少なからず礼儀はわきまえてる。でも病気なのか、心配と面倒をかける。
苛つかせるのは、ミシェル・ファイファー演じるその妻。明らかに悪妻だよね。プライバシーや私生活に土足で踏み込むわ、「洗濯させて」と洗濯機に入ってるこちらの洗濯物を平気でその辺に置くわ、「入らないで」と言った夫の仕事部屋に勝手に入るわ、夫の大事な物を壊しても悪びれないわ、挙げ句の果てにその直後自分の夫とS○X…。
息子も然り。特に長男は、普通は「すみません、父と母がお邪魔してると思いますが…」と訊ねる所を、訪ねて来た第一声が、「誰だ、お前!?」。
ハァ!? こっちの台詞だよ!
って言うか、何なの、コイツら!?
家族で揉め事。ウチでやるな! 自分たちの家でやれや!
とんだ事件が起き、彼らの言動はエスカレート。
日本人には“おもてなし精神”があるけど、神経逆撫でさせられると言うか、おちょくられると言うか、終始不条理極まりない。
夫は良く言えば、来る者拒まずの博愛精神に溢れている(のかな)。
でもスランプの詩人で、ただスポットライトを浴びたいだけ。訪ねて来た見知らぬ他人もファン。
妻の対応はまあ間違ってないと思う。自分の家であんなに好き勝手やられたら、そりゃあ不安定にもなる。
でも、ちょっと神経質過ぎる点もある。
両者、なかなか感情移入し難い所もある意味面白いキャラクター像。
妻が妊娠している事はすぐ分かる。
だからこの一連の出来事は、妊娠からくる精神不安定の被害妄想かなとも思う。
が、そうではなく、どうやら妻が本当に体験している悪夢のような出来事。
一度はまた穏やかな日々を取り戻したかと思いきや、ある事がきっかけで再び、招かれざる客たち&最悪の一夜。
あのどんちゃん騒ぎは特別笑える要素は無いのに、もうブラックに笑うしかなかった。
で、ラストは戦慄…!
我々は何を見せられているのか。
挑発させられているのか、喧嘩を売られているのか。
何を試されているのか。
サイコ・スリラーであり、不条理ドラマであり、ホラーでもあり、根底に“母”や“神”が触れられているけれど、解釈は人それぞれ。
自信を持って人にオススメ出来る代物ではないけど、とにかく鮮烈に強烈に、印象に残る作品である事は間違いない。
一目でアロノフスキー作品と分かる異色の作風。ミヒャエル・ハネケの『ファニーゲーム』を連想させた。
オスカー常連たちの怪演。ラジー賞にノミネートされたようだが、いやいや、一見の価値アリ!
踏んだり蹴ったりの若妻ジェニファー。ここはブチギレて、青いミュータントになって皆ブチ○しても構わない。(…なんてね)