「新参者ならぬ古参者との別れは少々寂しいね」祈りの幕が下りる時 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
新参者ならぬ古参者との別れは少々寂しいね
東野圭吾の小説で数えると1986年の『卒業』から数えて第2作『眠りの森』、第7作『赤い指』、第8作『新参者』、第9作『麒麟の翼』、第10作本作となるのですが、テレビドラマ『新参者』を起点にすると、第2作『赤い指』、第3作『麒麟の翼』、第4作『眠りの森』、第5作本作となっています。
いずれにしても(いまのところ)最新作にして最終作。
さて、落とし前をどうつけるのか。
ある日、東京都葛飾区のアパートの一室で死後20日経過した女性死体が発見される。
被害者は滋賀県彦根に暮らす40歳の女性、アパートの住人は70歳を越えた独身男性。
しかし部屋主はその後姿をくらましている。
一方、女性の死亡日にほど近い日付に、近所の河原でホームレスの死体が発見されている。
両者に接点はあるのか、ないのか・・・
というところから始まる物語で、事件の捜査にははじめ加賀の従弟・松宮(溝端淳平)が当たっていたが、いくつか思う着く節があり、加賀(阿部寛)自身も捜査に加わることとなる。
というのも、加賀が幼い自分に家を出、すでに死亡している加賀の母親(伊藤蘭)が事件との接点があるらしい。
そして、事件は、加賀自身の生い立ちも出奔後の母も絡み、ファミリーヒストリーの様相を呈してくる・・・と展開していきます。
事件そのものに決着もつけなければならないし、加賀自身が「新参者」として日本橋署に赴任した経緯(いきさつ)も明らかにしなければならないということで、最終作としての落としどころはかなり難しい。
結末としては、犯人の親子関係と加賀の親子関係が二重写しになるようなハナシなのだけれど、うまくいったかどうかはちょっと微妙なところ。
あまりにも、犯人側の過去の物語の回想シーンに尺が割かれ、あまりにもウェットすぎて、バランスを欠いたかもしれません。
とはいえ、決着についても無理無理なところもなく、概ね満足できるので、映画を観終わったあとの満足感はかなり高いかもしれません。
特に、エピローグ的に描かれる『新参者』の登場人物がカーテンコールにように登場するのには、胸が熱くなるかもしれません。
これで阿部寛=加賀恭一郎とお別れかと思うと少々寂しい思いもしますが、もうかなりの歳月を日本橋署で過ごしているので、「新参者」ならぬ「古参者」になっていますからね。