「零距離戦闘術」RE:BORN リボーン odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
零距離戦闘術
元特殊部隊の猛者、敏郎(坂口拓)、通称ゴーストが上司のファントム(大塚明夫)の子供を使った戦闘兵士育成の洗脳実験に異を唱え、実験番号23の少女さち(近藤結良)を救って脱走、ファントムの追手が迫る中、ゴーストはさちを守ることができるのだろうか、といったアクションが見どころのシンプル・ストーリー。
異常なまでのノンストップ殺戮アクションのオンパレード、まるで時代劇の抜け忍狩りのようなプロットで、銃器は出てくるがアクションのほとんどはアナログな刃物戦、それも美術品のような凝った意匠のナイフから農具のような鎌や小刀での切り合い、素手でのアクションも酔拳ならぬ猫拳のような凝りよう・・。徹底した殺陣のこだわりが随所に見えるのは製作陣のなせるわざ、主演の坂口拓はスピードマスターとして世界でも名の知れたアクション俳優、一時引退したが「TAK∴」と改名して復帰した。「∴」はトリプルクラウンとして坂口拓、下村勇二、稲川義貴の3人の意味が込めてあるそうだ。
監督の下村勇二は、香港のアクション俳優兼監督のドニー・イェンに師事した程のアクションオタクだし、武闘監修の稲川義貴は古武術から編み出した零距離戦闘術(Zero Range Combat)の師で実際の軍や警察学校でも指導を行っているという筋金入りの格闘家、自身は自らを格闘でなく「戦闘者」と名乗っています。
そんなアクションのプロたちが作っているからアクション・オンパレード映画になるのは必然でしょう。ただ、野蛮な暴力映画と見下されるのを避けるため脚本家に女性の感性を使ったのでしょうか、敵味方の大義づけと言った面倒な説明を避け、少女を守る方に義があるとしたシンプルな設定も秀逸ですね。
感想としては主人公を無敵のヒーローにしたいのはわかるが敵の弾は何故か一発もあたらずわざわざナイフでの接近戦になるのは極めて不自然な展開。
「ハンマーを持つ人にはすべてが釘に見える」というアメリカの心理学者、アブラハム・ハロルド・マズロー の言葉があるが零距離戦闘術ありきが表に出すぎた感が否めません・・。