「茶禅一味」禅と骨 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
茶禅一味
かなり毛色の変わったドキュメンタリー作品。アニメも差し込んであるし、回想ドラマ部分もある。俳優も有名な人が出演されているし、なかなか凝っている。そして音楽もシッカリと作り込んだ作品である。撮影期間も8年という時間を費やしていて濃密なショットを撮っているであろう。
ただ、何故だろう、少しも重みを感じられない。主人公の方は確かに魅力的ではあるだろうし、何より手先が器用だ。だから色々な興味をきちんと形にしている実績はある。しかもその人生は波乱に満ちているし、その出自の複雑さ故、降りかかる災難も半端ではない。でも・・・である。それは、この人の洒脱さという聞こえの良い表面の影にある、『自分勝手』という迷惑が常に纏わり付いていることに起因するのではないだろうか?まぁ家族は確かに死ぬ迄振り回され続け、結局残った遺産はガラクタばかり。その家族の複雑な思いをそのまま観覧している自分も共有してしまう。最後のシーンである、巨大観音像を横浜港に置いているCGに全てが集約されている。別に『赤い靴』にもそこまで思い入れもある訳でもなく、この人のモチベーション、エモーション、そしてマスターベーションでのみで人生を過ごした、特異な人という位置づけから離れられない。だから自分にとってカタルシスも得られないし、付け離したような感覚をずっと保ってしまうのである。共感もないし敬意もない。『おもしろおかしく生きてきてさぞ、よかったろうね』と、嫌みの一つでもかけてやりたくなる程の苛立ちさを感じた鑑賞後であった。もしかしたらもっと時間が経てば観方も変わるのだろうか?・・・
雪月花さん、貴重、尚且つご丁寧なコメント、大変ありがとうございます。
貴殿の当HPのレビューが無かったもので、恥ずかしながら私のページにコメントさせて頂きます。
確かに編集の工夫は必要だったのかなと認識致します。監督の趣旨が『あまり誇張しない、ナチュラル』を信条とされてのことだとは思うのですが、この人自身をフィーチャーする意図を考えあぐねておるのも正直な気持ちです。ソトヅラが良かったのか、周りの知り合いには高評価を得ているのであれば、そこからの映画制作の資金集め等々、容易に想像出来ますがそれが叶えられなかったところをみると、ドキュメントとの乖離が痛々しいと感じました。只、この方は本当に器用だったのだと、この点は敬意に値します。
僭越ながら、貴殿もこちらの素晴らしいコメントが勿体ないので、是非レビューを書かれてみては如何でしょうか?差し出がましい返信、失礼致しました。
横浜最終日に観ました!ヘンリさんの歴史にも触れ、美しいものが大好きであったことも伝わってきました。残念に感じたのは、とても素敵な出演者や音楽があったこと、その反面晩年の深い悲しみの家族のシーンが痛ましすぎて残酷に感じました。ヘンリさんからの深い沈黙のシーンもセリフも理解できる感があります。映画に望んでいた内容とあまりにもかい離を感じます。家族の許可をとっているシーンとは思いますが、編集次第ではもっと感動を呼ぶものになったかも。もっと深い内容と思います。
人の尊厳を考えさせられる内容でした。次回作はより安心して子どもにも見せられる内容のものを期待します。映画とは別にヘンリさんの美の世界についてもっと知りたいと感じました。