「100分の映画で作った意味」劇場版 響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ one shotさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0100分の映画で作った意味

2019年5月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

シリーズは全て鑑賞させていただいています

2年生編を劇場版完全新作でやると発表されたとき、続編が見られる喜びと同時に「テレビシリーズじゃないの?」「せいぜい2時間の映画で収まるの?」という疑問と不安が頭をよぎった人は少なからずいたと思います。

結論から言うと、今回の新作映画は「急ぎ足」の印象が強すぎます。

誤解を招かないように先にいい点を挙げますが、京アニにしか出せないアニメーションのクオリティや演奏シーンでの滲み出る細部へのこだわりは今回も健在であり、これらに関しては京アニを褒めるべきだと思いますし、それらを劇場版の音響とスクリーンで味わえるというのは劇場版一二作目と同じように価値あるものだと思います。描こうとしているストーリーや新キャラも興味をそそられるものが多かったです。

しかし、それらのいい要素全てが「映画100分」という枠のせいで台無しになってしまっています。簡単に言えば、「伝えたいストーリーの量に対して時間が圧倒的に足りていない」です。そのせいで、キャラそれぞれの行動が理由もなく突発的に感じられたり、それぞれのキャラや北宇治吹奏楽部全体としての成長にも感情移入しにくくなってしまっています。完全新作を見ているはずなのに、さながら総集編を見ている感覚になります。

視点を変えるならば、映画100分の枠に収める上での大胆なカットが足りなかったとも言えると思います。(が、原作の2年生編はそれまでよりもさらに序盤中盤の伏線が最後に活きてくるストーリーであり、カットがあったとしても映画の枠で表現するのは難しかったとは思います。)

そもそもこのシリーズの最大の売りの一つは、部員同士の人間関係がしっかり濃密に描かれているところであり、それを1年生編を2クールかけて描いたあとに2年生編を100分でやるというのは最初から無謀だとわかっていたはずです。3年生編、できることならテレビシリーズでの2年生編のリメイクを期待します。

one shot