「「ご都合主義」という名の自虐的シナリオ講座」伊藤くん A to E kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
「ご都合主義」という名の自虐的シナリオ講座
矢崎莉桜(木村文乃)が講義をしているシナリオスクールでは、都会の街中で好きな人と遭遇するシチュエーションが「ご都合主義」だと生徒たちが発言する。この作品では、まさしく伊藤くん(岡田将生)を中心に繋がっている4人の女性が同じ講座を受けていること自体がご都合主義なわけで、モンスター級の痛い男伊藤くんを面白く描くことによって、その不自然ささえも払拭しようとするプロットかと思う。
A:都合のいい女、島原智美(佐々木希)は5年間も伊藤と付き合っているのに、いまだに最後までの関係までこぎつけない。B:自己防衛女、野瀬修子(志田未来)は、伊藤がストーカーのようにつきまとう同僚。C:愛されたい女、相田聡子(池田エライザ)は親友が好きな伊藤を寝取ってしまう。D:ヘビー級処女、神保美希(夏帆)は伊藤に3年片思いを続けた挙句、処女は重いと振られてしまう。といった4人の女性のエピソードをオムニバスのように展開してストーリーは進む。
矢崎が自身の恋愛講座を開いた際に参加者の恋愛相談を受け付けて、その中の興味深い内容がA、B、C、Dの4人だったのだ。それを次回のドラマの脚本に取り入れようと、元カレでもあるドラマプロデューサー田村伸也(田中圭)に相談する。企画は進展を見せて、採用されそうな雰囲気にもなり、男優を誰にしようかと思い悩む。そして、A~Dの相手の男が同一人物であることが発覚し、その伊藤本人が長編シナリオにチャレンジすると打ち明ける。矢崎の書こうとしていたプロットが伊藤のものと同じになってしまう!そりゃもちろん本人が書く方がリアルに決まっている・・・と思い悩む矢崎。しかも、伊藤の企画書にはA~Eまであるという。
オムニバス風のストーリー展開と、最後には全て繋がっていく笑える痛い話ではあるが、ちょっとだけ尻切れトンボになっている感がある。痛い男と、不幸のどん底にまで突き落とすという嫌ミス的な脚本を考える矢崎が、その実、自分自身も伊藤に突き落とされる展開も面白く、そんな木村文乃が泣き出すシーンがとても印象的。自然に流れる涙にはゾクゾクさせられました。