「昭和風俗時代考証モノ」素敵なダイナマイトスキャンダル いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
昭和風俗時代考証モノ
この鑑賞の前に、川崎市民ミュージアムでみうらじゅんの個展を鑑賞した。自分の青春時代だった昭和というものに、その頃の大人達、しかも特殊なポジションにいた人達のその頃の拗らせ方、馬鹿馬鹿しさ、正直さ、小狡さみたいなものをこの平成も後半になる時にまるで懺悔というか開き直りのような感覚で公表する意味合いを唯、戸惑いを覚えずにはいられなかった。この大人達のおもちゃ、もっと言えば奴隷のような状況に置かれていた学生時代にいた自分は、せっせと此方のためになけなしの小遣いを上納していたのだと思うと・・・
まぁ、恨み節程ではないのだが、そんな自己卑下的なセンチメンタリズム溢れる作品としてまとめている。
しかし、はっきり言って原作者である末井昭氏の心の葛藤や機微がきちんと作品に滲み出ているかと言えば、疑問を持たざるを得ない。なので、軽く昭和を触ってみました的軽薄さが空気として流れてしまっているのは残念である。彼に振り回される前田敦子分する奥さんや、精神的病に陥った愛人、仕事を通じて信頼を得た友人、その他周りの人達の気持ちもそんなに吐露をしてるわけでもなく、起こった出来事を淡々と繋げていく、自分史をみせられている帰来を感じる。そこに、自分の母親のダイナマイト心中を無理に結びつけようとするから、その関連性が自分の中でさっぱり結びつかず、却って邪魔なエピソードを差し込んでくるモノとして捉えてしまう。波乱な人生史を、数々のエピソードを差し込むことで彩りを加えているのだろうが、まるで調和が取れていない。
末井氏本人が自称天才編集者を宣伝しているような何ともエグミの強いシーンの連続で少々キツい面も露呈される。
例えば、ヌード雑誌が発禁になり、その後に不死鳥のように復活したパチンコ雑誌への転身も、あんなサラリとパチンコしているシーンだけで語られると、深みが丸っきり感じ取れない。『ふーん、そんなことがあったんだ・・・』的な、心に引っかからないテイストに少々の落胆を感じたのが正直なところ。小道具やセットの細かい時代考証も大事なのだろうが、それよりももっとこの稀代の編集者が時代とセックスをしたときの感情の発露を表にさらけ出して欲しかったと思うのは自分だけだろうか・・・何とも中途半端に仕上がってしまった感が否めない作品である。